フードコネクションベトナムディレクターの親盛です。現在、ベトナムのホーチミンを拠点に、日系飲食店様の海外進出支援やマーケティング業務に携わっています。

日々、多くの経営者様と打ち合わせをさせていただく中で、
「シンガポールはコストが高すぎるが、ベトナムだと単価が安すぎる」
「親日国で、英語が通じるマレーシアがバランスが良いのではないか?」
といったご相談をよくいただきます。

確かにマレーシアは、シンガポールに次ぐ高い所得水準と、整備されたインフラを持つ魅力的な市場です。しかしその一方で、「資本金約3,400万円(100万リンギット)の壁」「ハラル(宗教性配慮)による市場の分断」など、独自の参入障壁が存在することはあまり知られていません。

そこで本記事では、
「マレーシアで飲食店を開業するためのリアルな条件」
「ハラル対応はどこまで必要なのか」
といった経営判断に直結するポイントを、具体的な費用感や失敗事例とあわせて徹底解説します。

▼ もし今、こんなことで迷っているなら

  • マレーシア進出に必要な「リアルな資金」を知りたい
  • 「ハラル対応」するか「ノンハラル(豚・酒あり)」で行くか迷っている
  • ベトナムとマレーシア、どちらが自社に合っているか整理したい

記事を読み進める前に、「検討すべき国はどこか」だけでも整理したい方は、まずはお気軽にご相談ください。

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1. マレーシア市場の魅力と特性

マレーシアは、人口約3,400万人。「ルックイースト政策(日本に学べ)」の影響もあり、世界でも有数の親日国として知られています。日系飲食店にとって追い風となる3つの特徴を見ていきましょう。

高い購買力と「1万円」の壁のなさ

クアラルンプールを中心とする都市部では、中間層・富裕層の厚みが増しています。客単価3,000円〜1万円以上の高価格帯レストランであっても、品質が伴えば十分に日常使いされる市場です。シンガポールほどコストが高騰しておらず、ベトナムよりも高く売れる、バランスの良い市場と言えます。

圧倒的な親日度と日本食ブランド

日本の文化やサービスに対する信頼が絶大です。「日本食=高品質・安心・美味しい」というブランドイメージが定着しており、寿司、ラーメン、焼肉などはすでに国民食に近い人気を誇ります。

英語圏の利便性

ビジネスや行政手続き、スタッフとのコミュニケーションが基本的に英語で完結します。タイやベトナムのように現地語(タイ語・ベトナム語)の壁に苦しむことが少なく、日本人駐在員にとって非常に働きやすい環境です。

このように市場としての環境は整っていますが、いざ「会社を作って店を出す」となると、独特の高いハードルが現れます。次に、具体的な開業ステップと規制を見ていきます。

2. マレーシア飲食店進出のステップと重要ライセンス

マレーシアでの法人設立において、最も注意すべきなのが「資本金」の要件と、「多岐にわたるライセンス」です。

① 法人設立(SSM)と銀行口座の壁

マレーシア会社法に基づき、SSM(マレーシア会社登記所)で法人を設立します。
ここで最初の難関となるのが「銀行口座開設」です。近年、マネーロンダリング対策の強化により、法人口座の開設審査が非常に厳しくなっています。「会社はできたが口座が開かず、資本金が送金できない」という事態を避けるため、事前の銀行交渉が必須です。

② 飲食店ライセンスと就労ビザ(EP)

外資(外国資本51%以上)が飲食店を経営する場合、原則としてWRTライセンス(卸売・小売・貿易業許可)の取得が必要です。

  • WRTライセンス: 管轄はKPDN(国内取引物価省)です。外資100%の場合、取得条件として最低払込資本金100万リンギット(約3,400万円) が求められます。
  • 就労ビザ(Employment Pass): 日本人駐在員がEPを取得するためには、月額給与5,000リンギット(約17万円)以上の設定が一般的です。 実務フローとしては、職位・業務内容・資本金などが総合的に審査されますが、「WRTライセンス取得(=資本金100万リンギット)」がビザ発給の前提条件となるケースも多いため、資金計画は余裕を持って立てる必要があります。

※「合弁(JV)」による緩和措置: マレーシア資本が51%以上入る合弁会社であれば、上記の資本金要件が35万リンギット(約1,200万円)程度まで緩和されます。コストを抑える有効な手段ですが、経営権のリスク管理が必要です。

③ 営業許可と衛生管理(チフス予防接種)

店舗の営業許可(Business Premise License)を取得するには、以下の衛生要件を満たす必要があります。

  • 食品取扱講習: 全スタッフ(外国人含む)の受講が必須。
  • チフス予防接種: 食品に触れる全スタッフへの接種が義務付けられています。

④ ハラル認証(JAKIM)とターゲット戦略

イスラム教徒(ムスリム)が人口の約6〜7割を占めるマレーシアでは、「ハラル対応」が極めて重要です。

  • ハラル認証取得: 全人口をターゲットにできますが、取得には1年以上かかることも珍しくなく、更新手続きも煩雑です。
  • ポークフリー(豚肉なし): 多くの日系飲食店が採用している現実的な手法です。JAKIM認証は取得せず、「豚肉・ラード不使用」を掲げて運営します。厳格なムスリムは呼べませんが、ライト層の集客は見込めます。
  • ノンハラル: 豚肉・アルコールを全面的に出し、中華系(約2割)と外国人にターゲットを絞る戦略です。

この「どのスタンスを取るか」を最初に決めておかないと、物件選びもメニュー開発も進みません。

3. 進出にかかる費用目安

マレーシア進出は、ベトナムやタイに比べて「初期の資本金」が重くのしかかります。 (1リンギット=34円で計算)

項目 目安費用(日本円) 備考
最低払込資本金 約1,200万〜3,400万円 外資100%なら約3,400万円、合弁なら約1,200万円がビザ取得の目安
法人設立・ライセンス費 約100万〜200万円 弁護士・カンパニーセクレタリー(秘書役)費用含む
店舗家賃(月額) 約30万〜120万円 クアラルンプール中心部や人気モールの場合
内装・設備工事 約1,500万〜4,500万円 モール指定の業者を使うと高額化する傾向あり
人件費(店長クラス) 約20万〜35万円/人 熟練したローカルマネージャーの確保

各項目の補足

最低払込資本金(Paid-up Capital)
これは会社設立後に銀行口座へ入金し、事業資金として使用できるお金です。しかし、会社設立直後の「現金の用意」として非常に大きな負担となります。外資100%にこだわるか、パートナーを探すかで金額が大きく変わります。
ライセンス取得の「時間的コスト」
会社設立自体は数週間で終わりますが、銀行口座開設、就労ビザ、店舗の営業許可がすべて揃うまでに半年以上かかることも珍しくありません。この期間の空家賃リスクを考慮する必要があります。
人件費と労働力不足
マレーシアは慢性的な人手不足です。飲食店スタッフの多くは近隣諸国(ネパール、バングラデシュ等)からの出稼ぎ労働者に依存していますが、政府の外国人労働者受入制限(クォータ)が頻繁に変更されるため、採用リスクを常に見込む必要があります。

コスト構造を理解したうえで重要になるのが、「誰に何を売るか」という戦略です。

4. マレーシアで勝つための戦略

多様な民族・宗教が混在するマレーシアでは、「全方位」を狙うと失敗します。ターゲットを明確に絞る戦略が必要です。

① 「ハラル」か「ノンハラル」かの明確な決断
マレー系(人口の多数派)を狙うなら: 完全なハラル対応、あるいは「ポークフリー&アルコールなし」で、ファストフードやカフェ業態を展開する。
高単価・居酒屋を狙うなら: 割り切って「ノンハラル(豚・酒あり)」にし、経済力のある中華系マレーシア人と在住外国人をターゲットにする。
② ショッピングモール出店の検討
マレーシアは車社会であり、かつ高温多湿な気候のため、人の流れは「エアコンの効いた巨大ショッピングモール」に集中します。 路面店よりもモール内の方が集客力は圧倒的に高いですが、家賃が高く、前述のWRTライセンスの提示を厳しく求められる傾向にあります。
③ デジタルマーケティングの活用
FacebookとInstagram、TikTokの利用率が非常に高く、お店探しはSNSが中心です。インフルエンサー(KOL)を活用したマーケティングは、オープン時の垂直立ち上げに必須の施策となっています。

ここまで見てきたように、マレーシア市場は「資本力」と「宗教対応」が鍵となります。そこで次章では、比較検討されることの多いベトナムと対比して整理します。

5. 【徹底比較】ベトナム進出 vs マレーシア進出

貴社が検討されている「ベトナム」と「マレーシア」。 並べて比較すると、求められるリソースとリスクの種類が異なります。

比較項目 ベトナム進出 🇻🇳 マレーシア進出 🇲🇾
初期投資(資本金) 規制が緩く、少額からでも開始可能。 100万リンギット(3,400万円)の壁が高い。
ターゲット層 若年層。勢いがあるが移り気。 多民族(マレー、中華、インド系)。
ハラル対応 ほぼ不要。自由度が高い。 極めて重要。マレー系を狙うなら必須。
アルコール提供 容易で、利益の源泉になりやすい。 ライセンス取得がエリアにより困難。高関税。
労働力 自国民で確保しやすいが、教育が必要。 深刻な人手不足。外国人労働者に依存。

プロの視点:この違いをどう読み解くか

ベトナムは、外資規制が緩く、食文化も日本に近いため(豚肉・酒OK)、「日本の居酒屋やレストランの強みをそのまま持ち込みやすい」市場です。
一方、マレーシアは、資本金やハラル対応といった入り口のハードルが高い分、競合の参入も制限されます。そのため、一度ブランドを確立できれば、「高い客単価で安定的に収益を上げる」ことが可能です。

理論上の比較だけでなく、実際の失敗事例から学ぶことも重要です。次章では、マレーシアで起こりがちな撤退パターンを具体的に見ていきます。

6. 【失敗事例から学ぶ】マレーシア撤退のリアル

マレーシア特有の事情による失敗事例を紹介します。

事例①:ハラルを無視した「中華系特化型」の限界
内容: 「日本の味をそのままに」と、豚肉・酒メインの居酒屋をオープン。初期は中華系住民で賑わったが、すぐに近隣に類似の競合店が出現。
失敗の要因: マレー系(人口の7割)が顧客になれないため、市場のパイが小さく、競合との奪い合いで疲弊してしまった。
教訓: マレーシアで大きく店舗展開(スケール)するには、「ノーポーク(豚肉なし)」やハラル認証を考慮した戦略が不可欠です。
事例②:外国人労働者の「クォータ(割当)」問題
内容: ローカルスタッフが集まらず、ネパール人などの外国人スタッフを雇って運営していたが、政府の方針で外国人労働者のビザ発給が突然停止された。
教訓: マレーシアは自国民の雇用保護政策が強く、外国人労働者への依存度が高い店舗は、政策変更一つで営業不能になるリスクがあります。

7. 【よくある質問】マレーシア進出のQ&A

Q1. 日本食はマレー系の人にも人気ですか?
A. 人気ですが、ハラル対応が壁になります。寿司やラーメン、和牛などは大人気です。ただし、醤油やみりんに含まれるアルコール成分や、豚由来の食材を気にするため、これらを排除した「ハラル対応日本食」でないと、彼らを顧客にするのは難しいです。

Q2. 資本金100万リンギットがないと絶対に進出できませんか?
A. 「現地パートナー」と組めば可能です。マレーシア資本が51%以上入る合弁会社であれば、WRTライセンスの要件(100万リンギット)は適用されず、ビザ取得のための資本金要件も35万リンギット(約1,200万円)程度まで下がります。ただし、経営権を握られるリスクやパートナーとのトラブルリスクと隣り合わせになります。

Q3. お酒を出す店は作れますか?
A. 可能ですが、場所を選びます。中華系が多く住むエリアや、外国人が多いエリアであれば可能です。しかし、酒税が高いため提供価格が高くなりやすく、ターゲットは富裕層に限られます。また、酒類ライセンスの取得難易度は年々上がっています。

Q4. マレーシア法人設立にかかる期間は?
A. 設立自体は早いですが、ライセンスに時間がかかります。会社登記(SSM)自体は数週間で完了しますが、その後の銀行口座開設、WRTライセンス、就労ビザ、店舗の営業許可の取得に数ヶ月〜半年以上かかるケースが一般的です。テレビ番組などで見る「簡単移住・簡単起業」というイメージとは異なり、実際の手続きは煩雑です。

ここまで、マレーシア進出に関してよくある疑問や不安を整理してきました。 これらを踏まえたうえで、最後に「それでもマレーシア進出が向いているのは、どんな経営者・業態なのか」を整理します。

8. 【結論】それでもマレーシア進出が向いている企業

  • 「資本金3,400万円以上」を用意できる資金力がある
  • ハラル対応(豚・酒なし)の業態開発ができる
  • 中華系富裕層に特化した高単価ビジネスで勝負したい
  • 英語圏でのビジネス展開を足がかりにしたい

逆に、ベトナムを検討すべきケース

  • 「初期投資を抑えて、まずは1店舗目を成功させたい」
  • 「日本の居酒屋文化(酒・豚肉あり)をそのまま展開したい」
  • 「スピード感を持って、多店舗展開を仕掛けたい」

最後に:プロのアドバイス

マレーシアは「英語が通じる」「インフラが整っている」という点で非常に魅力的に見えますが、中小規模の飲食店にとって「初期資本金3,400万円」と「ハラルの壁」は想像以上に重いです。
一方、ベトナムは「100%自社資本で、資本金の縛りも緩く、かつアルコール市場へのアクセスも自由」です。
自由度の高い経営と、成長市場ならではの爆発的なスピード感を求めるなら、現時点ではベトナムの方が、経営者としての選択肢は広いと言えます。
「自社の業態なら、どちらの国が勝率が高いか」客観的なデータをもとに整理したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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9. 他国の進出も比較したい方へ

海外飲食店進出は, 国ごとに「初期投資」「規制」「勝ちやすい業態」が大きく異なります。マレーシアは有力な選択肢の一つですが, ベトナム以外の国も含めて整理することで, 判断のブレを防ぐことができます。

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(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア)

上記記事では、 各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを 1ページで整理しています。

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ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
タイでの飲食店開業・出店ガイド(観光×多店舗展開)
インドネシアでの飲食店開業・出店ガイド(人口ボーナス市場)
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