🔄 更新日:2026/02/04(公開日:2026/01/30)

フードコネクションベトナムディレクターの親盛です。現在、ベトナムのホーチミンを拠点に、日系飲食店様の海外進出支援やマーケティング業務に携わっています。日々、多くの経営者様と打ち合わせをさせていただく中で、
「急成長中のベトナムも魅力的だが、市場規模の大きいタイも捨てがたい」
「タイは競合が多いと聞くが、今から参入して勝てるのか?」
といったご相談を頻繁にいただきます。
実際、タイは東南アジア随一の日本食激戦区であり、世界有数の観光大国です。バンコクを中心に日本食はすでに市民権を得ており、市場は成熟しています。その一方で、出資規制・コスト構造・競争環境は、成長期にあるベトナムとは大きく異なり、「勢いだけで出店すると失敗しやすい国」でもあります。
そこで本記事では、
「タイで飲食店を開業することは本当に可能なのか」
「どのような条件を満たせば勝ち目があるのか」
といった経営者視点の疑問に対し、 単なる手続き解説にとどまらず、 費用感・開業ステップ・成功と失敗の分かれ目を含めて徹底解説します。
▼ もし今、こんなことで迷っているなら
- ✔タイとベトナム、どちらを検討すべきか判断がつかない
- ✔自社の業態・価格帯がタイ市場で通用するのか知りたい
- ✔進出するなら、失敗リスクをできるだけ下げたい
記事を読み進める前に、「自社はどちらを検討すべきか」だけでも整理したい方は、まずはお気軽にご相談ください。
これから東南アジアでの飲食店展開を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
まずは、なぜ今でもタイ市場が日本の飲食店にとって魅力的なのか、その全体像から整理していきましょう。
目次
1. タイ市場の現状とビジネスチャンス
タイは人口約7,000万人を擁し、1人当たりGDPでも東南アジア上位に位置する、非常に魅力的な市場です。日系企業にとって追い風となる、現在のタイ市場の3つの大きな特徴をご紹介します。
成熟した日本食文化
現在、 タイ国内の日本食レストラン数は約6,000店舗(JETRO調査等参考)に達し、 バンコクだけでなく地方都市へも拡大を続けています。特筆すべきは消費者の「日本食リテラシー」の高さです。寿司やラーメンだけでなく、おまかせコースや専門料理への理解も深く、 現地の消費者の舌は非常に肥えています。
高い購買力と消費意欲
バンコクの富裕層・中間層の購買力は非常に高く、日本国内と同等、あるいはそれ以上の消費意欲があります。客単価3,000円〜5,000円(約600〜1,000バーツ)あるいはそれ以上の高価格帯であっても、品質とサービスが伴えば十分に成立する市場です。
インフラの充実
ビジネスを展開する環境も極めて整っています。食材のコールドチェーン(低温流通網)や厨房機器の調達が容易であることに加え、 Grab、LINE MANといったデリバリープラットフォームが生活に浸透しており、 販路の多角化がしやすい環境にあります。
このように市場としての魅力がある一方で、タイ進出には日本とは大きく異なる制度やルールが存在します。次に、 実際に開業するまでの具体的なステップを確認していきます。
2. タイ飲食店進出の実務ステップ
タイで飲食店を開業するには、日本とは異なる法人制度・出資規制・就労ルールを前提に、段階的に準備を進める必要があります。ここでは、開業までの全体像を実務ベースの流れで整理します。
STEP1:事業形態の決定とパートナー探し
最初に決めるべきは、「誰とやるか(資本構成)」です。 これは、後続の法人設立・ビザ・ライセンス取得すべてに影響するためです。タイの外国人事業法(FBA)により、飲食業は原則として外国人の出資比率が49%以下に制限されています。
そのため、日本人オーナーが単独で100%出資することはできず、タイ人株主(名義・実質)との共同出資が必要になります。
また、契約や申請書類はすべてタイ語となるため、実務面・法務面の両方をカバーできる現地のしっかりした専門家と組み、飲食店を開業するのが一般的です。
この出資構成は、法人設立、飲食店ライセンス、銀行口座開設のすべてに影響するため、最初の設計ミスが後工程で大きなトラブルになるポイントです。
※100%外資で行うには、BOI(タイ投資委員会)の認可やFBL(外国人事業ライセンス)が必要ですが、一般的な飲食店ではハードルが非常に高いため、信頼できるタイ人パートナーとの合弁が主流です。
STEP2:法人設立と資本金の設定
パートナーが決まったら、商務省(DBD)へ法人登記を行います。 タイで飲食店を営業する場合、原則としてタイ法人(Company Limited)の設立が必要です。個人名義や日本法人の支店として飲食店を営業することは、認可やビザの観点から一般的ではありません。
この段階で登記住所、取締役構成を決定しますが、駐在員のビザ取得条件に直結するため、特に重要なのが「資本金」と「雇用計画」です。
【重要】「誰が現地で働くか」で必要な資本金が変わる
資本金の額は、タイ現地でワークパーミット(WP・労働許可証)を取得する日本人の人数から逆算して設定します。
・オーナーがタイに駐在する場合: 店舗管理や経営判断を行うため、WP取得が必須です。
・オーナーが日本在住の場合: たまの視察や大枠の指示出し程度であれば、実務上はWPを取得しない(=オーナー分の資本金要件は不要)ケースもあります。
- 資本金の額: WPを取得する日本人1名につき、最低200万バーツ(約1,000万円)の資本金を登記上で設定する必要があります。
※この資本金は書類上の名目金額であり、登記時やWP申請時に同額を銀行口座へ入金する必要はありません。 - タイ人雇用義務: 外国人が1人働くごとに、4名のタイ人スタッフの雇用が義務付けられています。
「誰を現地に常駐させるか」を明確にし、必要な資本金(書類上)と雇用人数を設立前に確定させましょう。
STEP3:就労ビザ(Non-B)と労働許可証(WP)の取得
会社設立と駐在員のVISA取得の手続きは同時に進行します。なお、現在は観光ビザ・ビジネスビザ共にオンラインでの申請が可能です。
手続きの内容は、オーナーや駐在員の「タイでの関わり方(居住地)」によって異なります。
パターンA:タイに居住し、店舗管理・経営を行う場合
この場合は「Non-Bビザ(ビジネスビザ)」と「ワークパーミット(WP・労働許可証)」の両方が必須です。
「オーナーだから」という特例はなく、現地に住んでスタッフ指導や経営判断を行うことは就労とみなされます。WP取得前に店舗で作業(接客や皿洗い等)をすることは違法就労となるため、厳重な注意が必要です。
パターンB:日本に居住し、出張ベースで関わる場合
日本を拠点にし、時折タイへ渡航して方向性の指示を出す程度であれば、WP取得までは行わないケースが一般的です。
- 短期視察: 数日程度の確認や指示出しであれば、実情としてノービザ(観光扱い)で入国するケースも多く見られます。
- 中期出張: 実務的な指示出しなどで一定期間滞在する場合は、Non-Bビザ(ビジネスビザ)のみを取得して対応するケースがほとんどです。
※上記は実務上の一般的な傾向ですが、滞在頻度や業務内容によっては法的解釈が分かれる場合があります。詳細は専門家へご相談ください。
STEP4:物件選定と賃貸契約
物件を探す際は、 タイ特有の「酒類販売規制エリア」に注意が必要です。
物件選定: スクンビット・ サイアム・ トンローといったバンコクの一等地は集客力が高い一方で、家賃が高騰しているエリアでもあります。立地のイメージだけで判断せず、 時間帯別の通行量調査や周辺競合の確認を行ったうえで慎重に検討することが重要です。
酒類販売NGエリア: 学校・寺院の周辺(基本的には200m以内)では、お酒の販売許可が原則として降りません。ただし、単なる直線距離だけでなく、周辺環境との整合性など管轄当局による複合的な判断がなされます。一律の基準ではないため、契約前に認可実務に精通した専門家へ確認することをお勧めします。
STEP5:内装工事と各種ライセンス取得
物件の引き渡し後、内装工事を行いながら、営業に必要なライセンスを申請します。
飲食店営業許可: 内装完成後の検査が必要です。
酒類・タバコ販売免許: 酒類の販売時間は、従来「11:00〜14:00」と「17:00〜24:00」に制限されていましたが、2026年現在は観光振興のため「14:00〜17:00」の販売規制が試験的に撤廃されています。 ただし、一部のエリアを除き、午前0時〜午前11時は引き続き販売禁止となっており、違反時の罰則も厳しいため、営業時間の設計には十分な注意が必要です。
STEP6:開業準備と価格設定(++の決定)〜オープン
ライセンス取得と並行して、厨房設備の導入、メニュー開発、スタッフ採用・教育、メニュー設計を経て、正式オープンとなります。
ここで重要なのが、タイ独特の価格表記「++(プラスプラス)」への対応です。これは、メニュー価格とは別にサービス料(10%)とVAT(7%)を会計時に加算する方式のことです。
この段階で、自店が「++」を採用するか、すべて込みの「NET表示」にするかを決めておかないと、後の利益計算やメニュー作成で大きな手戻りが発生します。
(※「++」か「NET」かの戦略判断については、 第4章で詳しく解説します)
ここまでの全工程を完了するには、 最短でも3〜4ヶ月、 余裕をもって半年程度の期間を見込んでおくとよいでしょう。
※弊社のパートナー企業の実績では、スムーズに進めば2〜4ヶ月以内で完了するケースも多いです
3. 進出にかかる費用目安
タイ(主にバンコク)で飲食店を開業する場合、初期投資の総額は立地・規模・業態・内装クオリティによって大きく変動しますが、近年はコストが上昇傾向にあります。
目安として、中規模程度の店舗であれば約2,000万円以内に収まる場合がほとんどですが、バンコク中心部の路面店や、内装をすべて日系業者に依頼する場合は約2,500万〜5,000万円程度かかることもあります。
一方で、居抜き物件の活用やローカル業者の使い分けにより、1,000万円前後での出店も可能です。(1バーツ=約5円で計算)
| 項目 | 目安費用(日本円) | 備考 |
|---|---|---|
| 法人設立・ライセンス | 約100万〜180万円 | 弁護士・コンサル費用含む |
| 最低資本金 (WP取得1名あたり) |
名目上の設定が必要 (約1,000万円〜) |
※資本金は書類上の設定であり、登記時・WP申請時に銀行への実入金は不要 |
| 店舗家賃(月額) | 約50万〜180万円 | バンコク人気エリアの場合 |
| 内装・設備工事 | 約500万〜1,000万円 | 工夫次第でコスト圧縮が可能。 ※すべて日系・スケルトン等の条件次第で1,500万円以上かかる場合も |
| スタッフ給与 | 約10万〜20万円/人 | 店長・シェフクラスはさらに高額 |
各項目の補足
● 法人設立・資本金
現地で就労する日本人が労働許可証(ワークパーミット)を取得するためには、日本人1名につき最低200万バーツ(約1,000万円)の資本金を書類上で設定する必要があります。
この資本金は、実際に同額を準備して銀行口座へ入金する必要はなく、あくまで登記上の名目金額です。
※ただし、内装工事費や食材仕入れ、家賃支払いなどの実務上の支出が発生するため、事業運営に必要な資金は別途会社口座に準備しておく必要があります。
● 店舗家賃
スクンビットなどの人気エリアでは賃料が高騰しています。契約時には通常、賃料の3〜4ヶ月分のデポジット(保証金)が必要となります。
● 内装・設備工事
スケルトンから全て日系業者に依頼すると1,500万円以上かかることもありますが、ローカル業者との使い分けや居抜き物件を活用することで、500万〜1,000万円程度に抑えることも十分に可能です。
内装工事費の事例
① 店舗A(Bar業態 / 約40席 / 日本人1名)
- 条件: 水回りなど基本的設備は設置済みの物件。
- 工夫: カウンターなどの造作や補修は、ローカル業者と日系業者を使い分け。
- 費用: 内装工事費用は約500万円で完了。
② 店舗B(スナック業態 / 4階建てタウンハウス / 日本人1名)
- 条件: スケルトン物件。1-2階を客席、3階未使用、4階事務所として利用。
- 工夫: スケルトンからの造作だが、ローカルと日系業者を適材適所で使い分け。
- 費用: 内装工事費用は約950万円で完了。
● 人件費
タイの最低賃金は上昇傾向にあります。特に日本語が話せるスタッフや経験豊富なマネージャークラスの人件費は高騰しています。
4. タイで勝つためのキーワード
タイ市場での成功の鍵を握る、3つの重要な視点について解説します。
「本物」か「現地化」か
かつては「タイ人の口に合わせた味付け(甘く、 濃くする)」が定石とされていましたが、現在は市場が二極化しています。
本物志向(ハイエンド・富裕層向け): 訪日経験豊富な層は、日本と全く変わらない「本物の味と体験」を求めています。ここでは妥協のない日本品質(Japan Quality)が高く評価されます。
現地化(マス・中間層向け): より幅広い層を取り込むには、一定のローカライズは依然として有効です。サーモンなど人気食材の活用や、現地の嗜好を踏まえた味の調整が受け入れられやすい一方で、近年は過度なフュージョンや大幅な味の改変よりも、日本のオリジナルを尊重した上でのアレンジにとどめる方が支持される傾向にあります。
SNS映え(Cafe Hopping)
タイは世界有数のSNS大国です。Facebook・Instagram・ TikTokはお店探しの主要ツールであり、「SNS映え」は単なる流行ではなく、集客の絶対条件です。
Cafe Hopping文化: 週末にカフェやレストランを巡り、写真を撮ってSNSにアップする文化が深く根付いています。
視覚的インパクト: 料理の味がおいしいのは大前提として、思わず写真を撮りたくなる「内装デザイン」「照明」「盛り付け」がなければ、情報が拡散されず集客に苦戦することになります。
「++(プラスプラス)」と価格戦略
タイの飲食ビジネスにおける独特の会計慣習を理解し、適切な価格設定を行う必要があります。
サービス料とVAT: 中級以上のレストランでは、メニュー表示価格にサービス料10%を加算し、その合計金額にVAT(付加価値税)7%が課税されるスタイルが一般的で、通称「++(プラスプラス)」と呼ばれます。
戦略としての使い分け: 高級店ではサービス料を徴収する代わりに質の高い接客やサービス品質が求められます。一方、カジュアル業態やファストフードでは「VAT・サ込み(NET価格)」を打ち出すことで、消費者にとっての分かりやすさやお得感を訴求する戦略も有効です。
5. 【徹底比較】ベトナム進出 vs タイ進出
隣国でありながら、市場の成熟度・外資規制・コスト構造が大きく異なるベトナムとタイ。飲食店の海外展開においては、「どちらが良いか」ではなく、自社の戦略や成長フェーズにどちらが合うかを見極めることが重要です。
| 比較項目 | ベトナム進出 🇻🇳 | タイ進出 🇹🇭 |
|---|---|---|
| 市場フェーズ | 成長期。 競合が少なく、先行者利益を狙える。 |
成熟期。 競合が非常に多く、差別化が困難。 |
| 外資規制 | 飲食店は100%外資での進出が可能。 | 原則としてタイ人パートナー(51%)が必要。 |
| コスト構造 | 人件費・家賃ともにタイより安価. | 東南アジアの中ではコスト高。利益率の確保が課題。 |
| 日本食への理解 | これから深まる段階。 ポテンシャル大。 |
既に熟知されている。 目新しさがないと埋もれる。 |
| 運営の自由度 | 自社100%のため、意思決定が迅速. | パートナーとの合意形成が必要な場合がある。 |
6. 【失敗事例から学ぶ】タイ・ベトナム進出のリスクと対策
海外進出を成功させるために最も重要なのは、「成功事例を真似ること」ではなく、「よくある失敗パターンを避けること」です。隣国同士であるタイとベトナムですが、市場の成熟度・コスト構造が異なるため、陥りやすい「落とし穴」の性質も全く異なります。
タイ進出の失敗事例:成熟市場の「レッドオーシャン」の罠
タイ、特にバンコクの市場はすでに成熟しきっており、外食産業の二極化が急速に進んでいます。「日本食というだけで集客できる」時代は終わり、明確な強みのない店は淘汰される運命にあります。加えて、タイ特有の「外資規制」も大きな障壁です。
事例①:大手天丼チェーン「てんや」のタイ撤退(2025年8月)
10年にわたりタイで展開していた大手チェーン「てんや」は、2025年8月をもって全店閉店しました。財閥系企業によるフランチャイズ運営という強力な基盤がありながらも、契約終了に伴う撤退という結果となりました。
失敗の要因:誤解されがちですが、タイ市場において天ぷらは、他の日本食と比較すると、そもそもの需要が限定的です。加えて、撤退直前には在住日本人からも「日本の味・クオリティとの差」を指摘する声が増え、レビュー評価が大きく悪化していた点も無視できません。
教訓: てんやの事例は、「日本ブランドだから」「大手だから」では乗り切れない現実を示しています。
成熟市場では、料理ジャンルそのものの市場適性と、クオリティを継続的に維持できる体制が揃わなければ、長期展開は難しいという教訓を残しました。
本来取るべき対策: いきなり本出店に踏み切るのではなく、ポップアップ出店や期間限定業態、既存店内でのテスト提供などを通じて、「その料理ジャンルが本当に受け入れられるのか」を事前に検証することが不可欠です。ジャンル適性の見極めこそが、最優先事項となります。
当社パートナーの支援について(参考)
当社パートナーでも、こうした考え方に基づき、本格出店の前にタイ市場との相性を検証できる形での運営支援を行っています。
事例②:大手うどんチェーン「丸亀製麺」のタイ事業縮小・撤退
「大手でも撤退する」代表例としては、丸亀製麺の方がより象徴的です。
失敗の要因: タイ進出当初は、セルフ形式で具材を選べる体験や価格帯のわかりやすさから一定の支持を獲得しました。しかし、店舗拡大とともにクオリティ管理が追いつかず、年々レビュー評価が悪化。結果として、現地競合店との競争に敗れ、事業縮小・撤退に至りました。
教訓: 丸亀製麺のケースは、「初期の成功」と「長期的な勝ち残り」は別物であることを示しています。特にタイのような成熟市場では、スピード出店よりも、品質維持と現地競争力の確保が不可欠です。
本来取るべき対策: 出店スピードを抑えつつ、教育・評価制度・品質チェック体制を先に整備し、「何店舗までなら品質を保てるのか」を見極める段階的展開が不可欠です。また、現地競合との差別化ポイント(価格以外の価値)を明確にし、ブランドの“強み”を再定義した上で拡大すべきでした。
事例③:パートナーシップの崩壊(「専門家不在」のリスク)
タイでは外資規制により、タイ人パートナーとの合弁(49%対51%)が一般的です。この「49/51構造」自体がリスクだと思われがちですが、実際の失敗原因の多くは、適切な現地サポーター(専門家)を介さずに進めてしまったことにあります。
失敗の要因: 「日本語が通じるから」「知り合いの紹介だから」といった理由でパートナーや仲介者を選んでしまい、専門的な法務チェックを経ずに進めたケースでトラブルが多発しています。 特にタイでは、日本以上に書類の「サイン権(署名権)」が厳格です。プロが介入していれば、「重要書類には日本人オーナーの署名も必須とする(単独署名不可)」といった条件設定でリスクを回避できますが、自己流や経験の浅い仲介者に頼った結果、知らぬ間に経営権を握られてしまうケースがあります。
教訓: しっかりとした現地サポーターがついていれば、身元の確かなパートナーが紹介されるため、決裂することは稀です。トラブルの多くは「コストを惜しんで専門家を入れなかった」または「不確かな情報源に頼った」ことから始まっています。
本来取るべき対策: パートナー選びで迷う前に、まずは「実績のある現地サポート企業」を見つけることが最優先です。法務・会計の専門家を介することで、サイン権の適切な設定や、役割分担を明確にした契約が可能となり、経営のコントロール権を維持することができます。
当社パートナーの支援について(参考)
当社パートナーでは、飲食店進出に特化した形で、パートナー選定の整理や、実務に即した契約設計(サイン権の設定含む)のサポートを行っています。
事例④:物件オーナーとの契約更新トラブル(隠れた最大のリスク)
実務の現場で、パートナーとの揉め事以上に撤退の原因となりやすいのが、「物件オーナー(大家)」とのトラブルです。
失敗の要因: タイでは物件オーナーの権限が非常に強く、契約更新のタイミングで「家賃の2倍~3倍の値上げ」を要求されたり、「退去勧告」を一方的に突きつけられたりするケースが後を絶ちません。どんなに店が繁盛していても、場所を失えば事業は継続できなくなります。
教訓: 「立地と家賃」だけで物件を決めてはいけません。「誰がオーナーなのか」「契約書に更新時の規定(値上げ幅の上限など)はあるか」を確認する必要があります。ここでもやはり、交渉力のある現地専門家のサポートが不可欠です。
本来取るべき対策: 物件契約時に「更新時の家賃値上げ幅の上限(例:最大15%まで等)」を契約書に盛り込む交渉が必須です。また、個人交渉では足元を見られるため、
現地の商習慣を知るプロを介して契約を結ぶことが最大の防御策になります。
当社パートナーの支援について(参考)
当社パートナーでは、単なる物件紹介にとどまらず、契約更新時のトラブルを見越した「契約書のリーガルチェック・条項交渉」も代行しています。
\ タイ進出で失敗しないための「事前設計・専門家活用」について相談する /
ベトナム進出の失敗事例:「トレンドの速さ」と「運営の甘さ」
ベトナムは「成長市場」ならではのスピード感が仇となるケースが目立ちます。また、参入障壁が低い分「足元の運営体制」を軽視してしまいがちです。
事例①:人気カフェブランドの相次ぐ閉鎖(2025年上半期)
2025年上半期だけで、ベトナム全土で約5万件もの飲食店が閉店しました。10年以上続いた有名カフェ「Monkey in Black」の閉鎖は業界に衝撃を与えました。
失敗の要因: 若年層の「ブランドロイヤリティ(忠誠心)」が低く、新しい映えスポットができると客が瞬時に移動してしまうこと。
教訓: 「一度当たれば安泰」という考えは通用しません。常にメニューや体験をアップデートし続ける必要があります。
本来取るべき対策(開業後を見据えた運営設計): 開業前からSNSやプロモーションを運営フローの一部として組み込み、「育て続ける前提」で進出する企業が増えています。
当社パートナーの支援について(参考)
当社パートナーでは、日本人・現地スタッフ混合の体制で、ベトナム市場に即した集客・情報発信の支援を行っています。
事例②:法規制・衛生管理の軽視による営業停止リスク
失敗の要因: 現地のコネを過信し、正式なライセンス取得を後回しにした結果、当局の抜き打ち検査で営業停止・高額罰金に追い込まれる日本企業が後を絶ちません。
教訓: 成長市場であっても、「グレーな運営」は長く続かないという前提に立つ必要があります。
本来取るべき対策(最初から“クリーン”な運営を前提にする): 必要な許認可を開業前に整理し、非公式ルートや口約束に依存しない、長期運営を前提とした設計が重要です。
当社パートナーの支援について(参考)
当社パートナーでは、最新の法規制に基づいた正規ルートでのライセンス取得・更新を前提とした支援を行っています。
\ ベトナム進出に必要な許認可を事前に整理・確認する /
次に、これら両国のリスクの質と、経営者が取るべき対策の違いを整理していきます。
【プロの視点】タイとベトナム、ビジネス環境とリスク特性の違い
両国の市場環境を比較すると、「直面する課題の質」と「解決のアプローチ」に大きな違いがあります。
| 比較項目 | ベトナム(運営・ソフト面の特性) | タイ(構造・契約面の特性) |
|---|---|---|
| 市場環境 | 成長途上。 競合が急増、「未開拓のニーズ」の見極めが重要。 |
飽和状態。 競合が強すぎて、後発が割って入る隙間が少ない。 |
| 資本の自由度 | 完全自立。 100%外資が可能。自分の意思で全て決定できる。 |
パートナー連携。 タイ人パートナーが必要だが、専門家を介した適切な契約で経営権の維持は可能。 |
| 撤退の難易度 | 比較的容易。 100%自社資産のため、売却や整理がスムーズ. |
比較的スムーズ(需要あり)。 居抜き需要が高いため、事業売却(M&A)で資産回収して完了できるケースが多い。 |
| 主な敗因 | 「ローカル価格とのGAP」「管理がズサン」 | 「競合に負ける」「大家との契約更新トラブル」 |
2025年、タイで出店した主な飲食店は、「銀のさら」「焼肉ジャンボ」「名代宇奈とと」「極味や」「とんかつ捿」など錚々たる顔ぶれです。市場が成熟しているからこそ「ブランド力」のある企業の進出が続いています。
このようにリスクの質も、求められる覚悟も異なる両国。「結局、うちの場合はどちらを選ぶべきなのか?」と迷われる方も多いはずです。そこで次は、実際によくいただく質問をもとに、判断のヒントをQ&A形式で整理します。
7. 【よくある質問】タイ・ベトナム進出でよく聞かれる疑問
Q1. タイとベトナム、どちらが初心者向きですか?
A. 一般的にはベトナムの方が初心者向きです。
ベトナムは外資100%出資が可能で、比較的シンプルな資本構成・意思決定ができます。
一方、タイは市場が成熟している分、ブランド力、商品力に自信がある店舗が向いています。
Q2. タイとベトナム、どちらの市場が将来性がありますか?
A. 将来性の“質”が異なります。
タイ: 市場は成熟。爆発的成長は難しいが、勝ち筋が明確。
ベトナム: 中間層拡大中。成長余地が大きく、長期投資向き。
「短期で黒字化したいか」「中長期でブランドを育てたいか」によって、最適解は変わります。
Q3. タイ進出に必要な初期費用はどれくらいですか?
A. 小規模〜標準規模であれば1,000万〜2,000万円、 バンコク中心部や内装にこだわる場合は2,500万〜5,000万円が目安です。
物件取得費・内装費・法人設立費・ワークパーミット関連費用などが主な内訳です。
Q4. 100%外資(日本独資)での出店は可能ですか?現地パートナーは必須ですか?
A.法律上は例外的に可能ですが、一般的な飲食店では現地パートナーが必要です。
タイの外国人事業法(FBA)により、飲食業は原則として外資100%での経営が認められていません。
BOI(投資委員会)認可やFBL(外国人事業ライセンス)を取得すれば100%外資も可能ですが、
飲食業では要件・審査ともにハードルが高く、現実的ではないケースがほとんどです。
そのため実務上は、信頼できる現地パートナーと合弁会社を設立し、
専門家を介した契約によって経営権・意思決定権を担保する 形が主流となっています。
Q5. 日本在住で経営する場合でも、ビザやワークパーミットは必要ですか?
A.オーナーの関与度合いによって異なります。
日本に在住し、現地には短期間の視察のみで訪れる場合や、経営方針の確認・報告を受ける程度であれば、
必ずしもワークパーミットが必要とされないケースもあります。
一方で、定期的にタイに滞在し、現場への具体的な指示や管理を行う場合は、Non-Bビザおよびワークパーミットの取得が必要になります。
実務上は、オーナーの関与範囲を明確にしたうえで、専門家に確認しながら進めることが重要です。
Q6. タイの飲食店開業に必要なライセンスは何ですか?
A: 1. 企業登録証明書、2. 飲食店営業許可、3. 酒類販売免許、4. 建物使用許可。
<ライセンスではないが、実務上必須となるもの>
・看板税(地方税)
看板税はライセンスではなく、看板設置に伴い地方自治体へ納付する税金です。
ただし実務上は非常に分かりづらく、看板デザインや表記方法によって税額が変わる点に注意が必要です。
例えば、
・タイ語表記があるかどうか
・タイ語が日本語より上部に配置されているか
といった条件によって税額が異なります。
また、関連する公式書類はすべてタイ語で作成されるため、現地専門家の関与が事実上必須となり、
ここが進出全体のスムーズさを左右するポイントの一つです。
※店内でBGMを流す場合は著作権契約が必要ですが、通常は音源業者(カラオケ機器等)が手続きを行うため、店舗側での対応はほぼ不要です。
※たばこ販売免許は、店内で販売する場合のみ必要ですが、現在の飲食店では稀です。
ここまで、タイ・ベトナム進出に関してよくある疑問や不安を整理してきました。
これらを踏まえたうえで、最後に「それでもタイ進出が向いているのは、どんな経営者・業態なのか」を整理します。
8. 【結論】タイ進出が向いているのは、こんな経営者・業態
タイ進出が向いている経営者・業態
- 日本国内での成功モデルを、再現性高く展開できる事業者
- ブランド力・コンセプトで勝負できる店舗
- 現地パートナーやスタッフマネジメントに向き合える経営者
逆に、慎重に検討した方がいいケース
- まだ国内での勝ちパターンが固まっていない
- 初めての海外進出で、できるだけ初期リスクを抑えたい
- 市場拡大そのものを成長ドライバーにしたい
→ こうした場合は、ベトナムなど他国も含めて検討する価値があります。特にベトナムは「100%自社資本」でコントロールが可能であり、「自分たちのブランドを大きく育てたい」と考える経営者様には投資対効果が高いと言えるでしょう。
タイ進出は、成熟しているからこそ、自社の強み・再現性・ブランド力を正しく活かせれば、東京での出店以上に成功確率を高められる可能性もあります。重要なのは、「どの国が良いか」を議論することではなく、「自社が、どの市場で、どの勝ち方ができるのか」を冷静に整理することです。
私たちは、タイ・ベトナム両国において、市場調査・物件選定・法人設立・ライセンス取得までをワンストップで支援しています。
タイの激戦区で勝負すべきか
それとも、ベトナムの成長市場を取りに行くべきか
進出ありきではなく、貴社の業態・規模・フェーズに合った国と戦略を客観的に整理したい方は、まずはお気軽にご相談ください。「自社の場合、どちらが現実的か」を一緒に見極めるところからお手伝いします。
\ タイ進出・ベトナム比較の方向性を無料で整理する /
9. 他国の進出も比較したい方へ
海外飲食店進出は、国ごとに「初期投資」「規制」「勝ちやすい業態」が大きく異なります。タイは有力な選択肢の一つですが、ベトナム以外の国も含めて整理することで、判断のブレを防ぐことができます。
▶ まずは5か国を横断比較したい方へ
【2026年最新版】東南アジア飲食店進出・5か国比較ハブガイド
(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア)
上記記事では、 各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを 1ページで整理しています。
▶ 個別国の詳細を知りたい方はこちら
・ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
・シンガポールでの飲食店開業・出店ガイド(富裕層・ブランド戦略)
・インドネシアでの飲食店開業・出店ガイド(人口ボーナス市場)
・マレーシアでの飲食店開業・出店(高単価・英語圏)
複数国を横断的に比較することで、 「自社にとって最も勝率の高い国」が見えてきます。
自社の業態・資金規模・展開スピードを踏まえて、 「どの国が最適か」を整理したい方は、お気軽に無料相談をご活用ください。





























