なぜ今、ベトナムなのか?|東南アジア7か国データ比較でわかる市場の現在地と飲食トレンド – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.07.10
なぜ今、ベトナムなのか?|東南アジア7か国データ比較でわかる市場の現在地と飲食トレンド
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
海外への出店を考え始めたとき、多くの飲食店オーナーが最初にぶつかるのが「そもそも、どの国を選べばいいのか」という問いです。タイ、インドネシア、シンガポール——選択肢が多いほど、決め手が見えにくくなります。そんな中で、ここ数年とりわけ名前が挙がるのがベトナムです。ただ「勢いがあるらしい」という空気だけで判断するのは危険です。大切なのは、数字で他国と比べたときに、ベトナムがどんな位置にいるのかを冷静に見ることです。
はじめまして。フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
この記事では、「なぜ今ベトナムなのか」を、人口・平均年齢・GDP成長率・一人当たりGDPという4つの指標で東南アジア6か国+日本と比較しながら整理します。あわせて、進出先を選ぶうえで欠かせない「飲食トレンドの現在地」と、見落とすと危ないリスクも、現地の肌感覚を交えてお伝えします。
先にお断りしておくと、この記事は「ベトナムが最適」と結論づけるものではありません。国全体の成長率だけで店の成否は決まらないからです。実際に効くのは、都市・立地・賃料・ターゲット・業態別の採算・人材・許認可です。そのうえで、どんな飲食企業にベトナムが向くのかを、フラットに見ていきます。
目次
1. なぜ今、ベトナムなのか?(結論を先に)
先に結論からお伝えします。今ベトナムが注目される理由は、大きく3つに整理できます。
● ① 1億人市場でありながら「若い」
ベトナムの人口は約1億230万人。日本とほぼ同規模のマーケットでありながら、平均年齢(中央値)は約34歳と、日本(約50歳)より16歳ほど若い社会です。市場が大きいだけでなく、これから消費が伸びていく「余地」を持っているのが特徴です。
● ② 成長スピードが主要国で突出している
2025年のベトナムの実質GDP成長率は8.0%(統計局確報8.02%)。これは2011〜2025年で2022年に次ぐ高い伸びで、同じ東南アジアのタイ(2.4%)やフィリピン(4.4%)、インドネシア(5.1%)と比べても頭ひとつ抜けています。経済のパイそのものが、毎年はっきりと大きくなっている段階です。
● ③ 外食への「お金の使い方」が変わり始めた
一人当たりGDPは約5,000ドル(2025年)。まだ先進国には遠い水準ですが、都市部では所得が伸び、外食への支出も、屋台やローカル食堂といった低単価中心から、チェーン店・カフェ・デリバリー・中高単価の業態へと、少しずつ移りつつあります。「外食が新しく始まった」のではなく、「外食の中身がアップグレードし始めた」というのが正確です。
ポイントは、この「若い」「速い」「消費がアップグレードし始めた」の3つが同時に起きている国は意外と多くないということです。若い国は所得がまだ低く、豊かな国はすでに成熟して成長が鈍い——そうした中で、ベトナムは飲食ビジネスの選択肢が広がっていく局面にあります。ただし後半で述べるとおり、これは「誰でも儲かる」という意味ではありません。
以下では、この3つを1つずつデータで確認していきます。
2. データで見る東南アジア6か国+日本の主要指標
まず、全体像を一覧で見てみましょう。ベトナムを含む東南アジア6か国と、比較対象としての日本を並べたものです。
| 国 | 人口(2025年) | 平均年齢(中央値) | 実質GDP成長率(2025年通年) | 一人当たりGDP(名目) |
|---|---|---|---|---|
| ベトナム | 約1億230万人 | 約34歳 | 8.0% | 約5,000ドル |
| インドネシア | 約2.8億人 | 約31歳 | 5.1% | 約4,900ドル |
| フィリピン | 約1億1,750万人 | 約27歳 | 4.4% | 約4,200ドル |
| マレーシア | 約3,600万人 | 約32歳 | 5.2% | 約1万2,000ドル |
| タイ | 約7,160万人 | 約41歳 | 2.4% | 約8,000ドル |
| シンガポール | 約600万人 | 約37歳 | 約5.0%※ | 約9万ドル |
| 日本 | 約1億2,300万人 | 約50歳 | 1.2% | 約3.6万ドル |
※出典:各国統計局・政府発表およびIMF等の推計に基づく(2025年通年。速報から確定へ改定されるため、時点により数値が動きます)。シンガポールの成長率は速報4.8%→確定5.0%で、AI・電子部品などの輸出が主導したもの。内需(消費市場)の勢いとは分けて見る必要があります。一人当たりGDPはいずれも名目値で、購買力平価や可処分所得とは異なります。平均年齢は国連等の推計に基づく概算です。
飲食店の目線でこの4指標を読むと、それぞれ意味があります。人口は市場の大きさ、平均年齢は「これから伸びるか、すでに成熟したか」、GDP成長率は市場が広がる勢い、一人当たりGDPは「外食にお金を回せる段階か」を大まかに示します。この4つが“ちょうどいい”バランスにある国ほど、飲食ビジネスの選択肢を広げやすい——という視点で見ると、各国の違いが立体的に見えてきます。
この表を「若さ(=平均年齢)」と「成長スピード(=GDP成長率)」の2軸で図にすると、各国の位置関係がよりはっきりします。

図で見ると、ベトナムは「まだ若く、かつ2025年の成長がもっとも速い」右上のゾーンに位置しています。ただし、これは「ベトナムが万能」という意味ではありません。人口規模ではインドネシア、若さではフィリピン、所得水準ではマレーシアやシンガポールが上です。ベトナムの強みは、あくまで「中所得化の前半」「高成長」「都市の消費拡大」という組み合わせを一度に持っているという点にあります。各国を具体的に見てみましょう。
- フィリピン:平均年齢27歳とさらに若く、英語が通じ、モール文化やチェーン外食が成熟しているのが強み。一方、一人当たり所得は約4,200ドルと低く、2025年の成長率も4.4%にとどまりました。
- タイ:一人当たり所得ではベトナムを上回り、観光需要・外食文化・サプライチェーン・FC展開の成熟度で優れます。平均年齢41歳・成長率2.4%と“成熟局面”ですが、これは「伸びない」ではなく「競争は激しいが読みやすい(予測可能性が高い)」と捉えるのが正確です。
- シンガポール:圧倒的に豊かで、富裕層向け・ブランド戦略に向きます。ただし人口は約600万人と小さく、家賃・人件費も高い成熟市場です。
- 日本:市場規模こそ大きいものの、平均年齢50歳・成長率1.2%と、縮小と高齢化が同時に進んでいます。
つまり、どの国が「優れているか」ではなく、自社の狙い(客層・単価・スピード)にどの国が合うかという問題です。そのうえで、若さ・成長・都市消費の伸びをまとめて狙いたい企業にとって、ベトナムが有力候補に挙がるのには、データ上の裏付けがあります。
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3. 強み①:人口の「若さ」——1億人市場×平均年齢34歳の意味
まず「若さ」から見ていきます。
ベトナムの人口は約1億230万人で、これは日本(約1億2,300万人)に迫る規模です。そのうえで、平均年齢(中央値)は約34歳。これは「国民の半分が34歳より若い」という意味で、街を歩けば実感として若い人の多さに気づきます。生産年齢人口(15〜64歳)は全体の約67%を占め、働き手と消費者の“主役世代”が分厚いのが特徴です。
ただし注意したいのは、「1億人市場」という言葉が、全国どこでも均質な商圏があるかのように響いてしまう点です。実際には、外資系飲食店の初期の商圏は、ホーチミン、ハノイ、ダナン、そしてビンズオンやドンナイといった都市・工業エリアに大きく偏ります。「1億人」ではなく「まず狙うのはどの都市の、どの層か」で考えるのが現実的です。
その前提のうえで、若さは飲食ビジネスにとって重要です。若い世代は、新しい業態やサービスへの反応が速いからです。スマホでのデリバリー注文、SNSで話題の店に足を運ぶ習慣、海外の食文化への好奇心——こうした行動は、若い消費者ほど自然に取り入れます。
私自身、2014年からホーチミンに住んでいますが、この10年余りで街の景色は大きく変わりました。かつては屋台と個人店が中心だった通りに、洗練されたカフェやチェーン店が増え、休日には若い家族連れやカップルが外食を楽しむ姿が当たり前になりました(※あくまで長年の生活を通じた個人的な観察です)。
一方で、若さは永遠ではありません。ベトナムの平均年齢は10年でおよそ4歳のペースで上昇しています(国連推計)。ただ、ここで本当に効いてくる論点は「若さが終わる」という抽象論よりも、労働力の獲得競争・賃金上昇・若手の離職といった、日々の店舗運営に直結する現実です。若い市場であるうちに、人材と顧客の両方との関係を築けるかどうかが、中長期の分かれ目になります。
※平均年齢は推計機関によって33〜34歳と幅があるため、本記事ではおおよその値として扱っています。
4. 強み②:成長スピードと所得の伸び——GDP8%成長と中間層の拡大
次に「速さ」と「所得の伸び」です。
2025年、ベトナムの実質GDP成長率は8.0%(統計局確報8.02%)を記録しました。2011〜2025年で2022年に次ぐ高い伸びで、ベトナム政府は今後も年10%成長という強気の目標を掲げています。数字だけを見ても、経済のパイが毎年はっきり大きくなっていることがわかります。
ただ、飲食ビジネスにとってより大事なのは、その成長が個人の財布にどう届いているかです。ここで注目したいのが所得の伸びです。
- 一人当たりGDPは約5,000ドル(2025年)まで到達しました(名目値)。
- 統計局の家計調査系データでは、一人当たり平均月収は前年比で約9%増。都市部に限ると、報告によっては約10%の伸びとされています。
- 中間層は拡大が続き、2026年には人口の約26%(およそ4分の1)に達するとの見方もあります(※中間層の定義は調査会社によって異なります)。
一般に、所得がこの水準に入ってくると、人々は「安く空腹を満たす食事」だけでなく、「体験や質にお金を払う外食」にも手を伸ばし始めると言われます。ベトナムでも、低単価のローカル外食に加えて、カフェ・チェーン・デリバリー・中高単価の業態への支出が伸びており、外食の“中身”が厚みを増しています。
さらに、海外からの直接投資(FDI)も好調で、製造業を中心に世界中の企業がベトナムに拠点を移しています。ただし、製造業FDIの多くは郊外の工業団地に集中するため、それがそのまま都心の飲食需要になるわけではありません。駐在員・技術者の増加、周辺の住宅開発、商業施設の出店——こうした連鎖を通じて、都市の消費に少しずつ波及していくと捉えるのが正確です。
もちろん、8%という数字がこの先ずっと続く保証はありません。ただ、少なくとも今は、市場が広がる勢いを実感しながら事業を立ち上げられる、数少ない環境であることは間違いありません。
5. ベトナムの飲食トレンドの現在地
ここからは、マクロの数字から一歩踏み込んで、「今、ベトナムの外食で何が起きているか」を見ていきます。なお、以下の市場データは主に市場調査会社(Mordor Intelligence 等)の推計に基づくもので、調査会社によって市場範囲・通貨・定義が異なり、数値には幅がある点にご留意ください。
ベトナムの外食(フードサービス)市場は、調査会社の推計でおおむね年10%前後の成長が見込まれる、東南アジアでも活気のある市場のひとつです(例:Mordor Intelligenceは2025年約248億ドル、2026〜2031年の年平均成長率を約10.5%と推計)。中身を分解すると、いくつかの流れが見えてきます。
● 主役はまだ「フルサービス店」、しかしチェーン化が進む
ある調査(Mordor Intelligence, 2025年)では、市場規模の約68%を、着席してサービスを受けるフルサービス業態が占めています。これは宴会・ファミリー利用・ローカル食堂から中高級店まで幅広く含む「サービス形式の分類」で、ベトナムでは外食が「社交の場」でもある文化を反映しています。一方、市場規模の8割近く(約77%)は今も個人経営の独立系が占めますが、もっとも速く伸びているのはチェーン店です。「中心がチェーンに移った」わけではなく、「独立系が大半のなかで、チェーン化が着実に進んでいる」というのが現状です。
● デリバリーは「Grab」と「Shopee」の2強
コロナ禍を経て定着したのがデリバリーです。現在の主要プラットフォームはGrabFood(グラブフード)とShopeeFood(ショッピーフード)の2強で、この分野は今後も年10%超の成長が見込まれています。加えて、店舗を持たずデリバリー専門で調理する「クラウドキッチン(ゴーストキッチン)」は、2031年まで年平均約19%の成長が見込まれる(Mordor推計)注目の形態です。ただし、ここには重要な但し書きがあります。
● カフェ文化が都市の生活様式に
ベトナムはもともとコーヒー大国で、Highlands Coffee、The Coffee House、Starbucksといったチェーンが都市の風景に溶け込んでいます。カフェは「打ち合わせ」「勉強」「友人との時間」の場として日常化しており、飲食×滞在×コミュニティという業態のヒントが詰まっています。
● 日本食は「認知はあるが、競争もある」カテゴリー
消費者の食の好みは多様化し、日本・韓国・中華といった外国料理への関心が高まっています。日本食はホーチミンやハノイの都市部で定番カテゴリーとして根づいており、“ゼロから認知を作る”負担が少ないのは有利な点です。ただし、認知がある分だけ競合も多く、消費者の価格イメージも固まっています。寿司・ラーメン・焼肉・居酒屋・定食・カフェ系では、飽和度も価格帯も現地化の必要性も、食材調達や料理人の確保のしやすさも異なります。「日本食だから有利」ではなく、カテゴリー単位で勝ち筋を見極めることが欠かせません。
● 観光の回復(ただし立地次第)
国際観光客数は2025年に過去最高水準まで回復し、都市部の飲食店やカフェの集客を後押ししています。ただし、その恩恵は立地によって大きく変わります。観光客向けの立地と在住者向けの立地では、メニュー・価格・言語対応・レビュー対策が別物です。「観光回復=すべての飲食店に追い風」と一括りにはできません。
こうしたトレンドを動かしているのは、便利さと体験を重視するミレニアル世代・Z世代です。「若い人口構成」という土台が、飲食トレンドの現在地にそのまま表れているのです。
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6. 「若くて速い」の裏側——リスクとトレードオフをフラットに見る
ここまで魅力を中心にお伝えしてきましたが、進出を検討するなら、同じ熱量で“影”の部分も見ておく必要があります。成長が速い市場は、失敗も速いからです。
● 競争の「中身」を分けて見る
市場が有望なら、当然ながら競合も集まります。しかも競合は一様ではありません。ローカルの低価格店、韓国系・中国系ブランド、日系の既存店、モール内のチェーン、デリバリー専業、カフェチェーン、SNS映え業態——それぞれ戦い方が違います。自分がどの土俵で戦うのかを決めずに「良い立地」を取り合うと、コンセプトが埋もれてしまいます。ホーチミン中心部やタオディエンのような人気エリアでは、固定費が先に上がり、利益が残りにくいこともあります。
● コストは「分解」して見積もる
経済成長の裏側で、都市部の家賃・保証金・内装・食材・人件費・社会保険・デリバリー手数料・広告費・各種税は着実に上がっています。「安く始められる」というベトナムのイメージは今も一定程度正しいものの、一等地では想像より初期投資がかさみます。「コスト上昇」と一言で片づけず、これらを項目ごとに見積もることが、採算判断の出発点です。
● 人材は“採る”より“定着させる”が難しい
若い労働力は豊富ですが、都市部では良い人材の獲得競争が起きており、採用できても定着させる工夫が欠かせません。教育やオペレーションの標準化に時間と手間がかかる前提で、無理のない体制を組んでおくことが、長く続く店づくりの鍵になります。
● 制度と実務のギャップは「物件選び」から始まる
外資規制の面では、飲食サービスは外資の持分制限が基本的になく、100%外資での参入も可能な、比較的開かれた業種です(いわゆるENTは主に小売拠点の追加設置に関する論点で、飲食サービスそのものには直接かかりません)。ただし、これは「手続きが簡単」という意味ではありません。外国企業の場合、内資企業には不要な投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)の取得が必須で、数か月の期間と資本金の妥当性審査を伴います。
● “タイの先行例”という視点
最後に、先に紹介したタイを思い出してください。タイもかつては東南アジアの成長株でしたが、今は平均年齢41歳・成長率2.4%と成熟局面に入りました。裏を返せば、ベトナムの「若くて速い」状態にも、いつか変化が訪れるということです。だからこそ、勢いがあるうちに現地で学び、顧客と人材との関係を築いておく意味があります。今の数字は「永久保証」ではなく「今しかない窓」だと捉えるのが、フラットな見方だと思います。
リスクを並べましたが、これは「やめておいた方がいい」という話ではありません。機会とトレードオフの両方を理解したうえで、自社の体力と戦略に合うかを判断する——それが、後悔しない進出の第一歩です。
7. 結局、ベトナムはどんな企業に向いているのか?
これまでのデータを踏まえると、ベトナムは「万能の正解」ではなく、向き・不向きがはっきりしている市場です。特に向いているのは、次のような企業だと考えます。
- 都市の中間層・若年層を、中価格帯でねらいたい
- デリバリーやカフェ、日本食といった伸びるカテゴリーで勝負したい
- 短期の刈り取りより、伸びていく市場と一緒に育っていく中長期の視点を持てる
- 小さくテスト展開し、手応えを見てから広げたい
ここで一点、誤解されがちな「低資本」について補足します。ベトナムで自社の外資法人を設立して始める場合、法人設立・ライセンス・会計税務・内装・保証金・開業前の赤字など、一定の固定費は避けられません。「気軽に低資本で」という感覚は、現地の個人オーナーの話であって、外資には最低限のコストがかかります。一方で、現地パートナーの仕組み(お試し進出のような形)を活用すれば、自前で法人を立てる前に、低コストで市場の反応を試すことも可能です。「どの器で試すか」で、必要な資金は大きく変わります。
進出先は「どの国が優れているか」ではなく「自社にどの国が合うか」で決まります。参考までに、他国の“勝ち筋”を一言でまとめると次の通りです。
- シンガポール:市場は小さいが富裕層が厚い。高単価・ブランド戦略向き。
- タイ:観光需要と外食文化、FC展開が成熟。競争は激しいが予測しやすい。
- インドネシア:人口約2.8億人の超大型市場。スケール狙い向きだが、ハラール対応・食材制限・島嶼国ゆえの物流・ジャカルタ偏重などの論点がある。
- フィリピン:英語が通じ、若く、モール・チェーン外食文化が強い。政治・インフラの変動要因には留意。
こうして並べると、ベトナムは「最初の一歩を踏み出しやすい万能の国」というより、中価格帯・都市の中間層・テスト展開を狙う中長期型の飲食企業に向く国、と表現するのが正確です。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 飲食業は外国企業でも参入できますか?
参入は可能です。飲食サービスは外資の持分制限が基本的になく、100%外資での開業も認められています。ただし、外国企業は投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)の取得が必須で、数か月の期間と資本金の妥当性審査を伴います。また、店内でコーヒー豆やグッズなどを販売する場合は「小売(物販)」とみなされ、別のライセンスや小売関連規制の確認が必要になることがあります。「入りやすい業種」ではありますが、「手続きが簡単」とは別だと考えてください。
Q2. どのくらいの資金から始められますか?
業態・立地・そして「どの器で始めるか」で大きく変わります。自社で外資法人を設立する場合は、資本金の払込に加え、内装・保証金・ライセンス・会計税務・開業前の運転資金など、最低限の固定費が発生します。一方、クラウドキッチンや現地パートナーの仕組みを使えば、初期費用を抑えて検証することも可能です。実店舗・クラウドキッチン・ポップアップ・FC加盟などで初期費用のレンジは大きく異なるため、「資本金」と「実際の投資額」を分けて資金計画を立てることをおすすめします。
Q3. デリバリー中心でも成り立ちますか?
条件が揃えば成り立ちます。GrabFoodとShopeeFoodを中心にデリバリーは定着しており、クラウドキッチン形態も伸びています。ただし「成り立つ」かどうかは、プラットフォーム手数料・値引き依存・配送品質・レビュー管理・ピーク時のオペレーション・税務対応などを差し引いた採算(ユニットエコノミクス)が合うかにかかっています。高粗利・配送に強いメニュー・リピート設計・広告費込みで黒字化できる設計が前提になります。
Q4. 日本語や英語は通じますか?
都市部やビジネスの現場では英語が一定程度通じますが、現場スタッフや行政手続きではベトナム語が基本です。飲食運営では、雇用契約・就業規則・社会保険・税務申告・食品安全研修・行政検査対応・大家との交渉まで、ベトナム語が必要な場面が続きます。現地に通じたパートナーと組むことで負担は大きく下げられますが、「丸投げ」ではなく、外資側が最終責任を負う領域と外注できる領域を分けて考えることが大切です。
まとめ
改めて、この記事の要点を整理します。
- 若さ:人口約1億人・平均年齢約34歳。1億人市場でありながら消費が伸びる余地が大きい(ただし初期商圏は都市に偏在)。
- 速さ:2025年の実質GDP成長率は8.0%と主要国で突出。市場のパイが毎年はっきり広がっている。
- 消費のアップグレード:一人当たりGDP約5,000ドル、都市の所得は年9〜10%増。外食が低単価ローカルから、チェーン・カフェ・デリバリー・中高単価へと厚みを増している。
- 飲食トレンド:市場は年10%前後の成長見込み(調査会社により幅あり)。デリバリー(GrabFood+ShopeeFood)、カフェ、日本食など日本企業に追い風の潮流がある一方、消耗戦や競争も激しい。
- リスク:外資の最低固定費・許認可(IRC/ERC/消防PCCC/食品安全/酒類)・物件の適法性・人材・デリバリー採算——ここを読み違えると、成長市場でも撤退はあり得る。
「なぜ今ベトナムなのか」の答えは、勢いという空気ではなく、データ上の“位置”にあります。若さと成長スピードを両立できる窓は、そう長くは開いていません。ただし結論は「ベトナムが最適」ではなく、中価格帯・都市の中間層・若年層・デリバリー/カフェ/日本食カテゴリーを狙う中長期型の飲食企業に向く。その代わり、外資の固定費・許認可・物件・人材・デリバリー採算を読み違えれば、成長市場でも撤退はある——というのが、フラットな現在地です。
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
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