出店するならどこがいい?! エリア特性の見極め方と失敗しない店舗物件の探し方 – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.07.29
出店するならどこがいい?! エリア特性の見極め方と失敗しない店舗物件の探し方
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
ベトナムでの飲食店経営、成否を分ける最大の要因は「物件選び」だと断言できます。どれだけ良いメニューやコンセプトを用意しても、立地や物件そのものに問題があれば、集客もオペレーションも許認可すらもつまずいてしまうからです。しかも厄介なことに、日本の不動産取引の「常識」がそのまま通用しない場面が数多くあります。
この記事では、出店エリアごとの特性から、物件探しの具体的な方法、契約時に必ず確認すべきポイント、そして絶対に踏んではいけない地雷まで、出店前に押さえておくべき鉄則を一気に解説します。
目次
1. なぜ「物件選び」がベトナム進出の成否を分けるのか
日本で店舗を借りる場合、不動産会社を通せば重要事項説明や契約書の様式がある程度標準化されており、大きなトラブルは起きにくい仕組みになっています。一方でベトナムは、物件の「所有権」「用途」「建築の適法性」が曖昧なまま流通しているケースが少なくありません。
まず整理しておきたいのが、IRC(投資登録証明書)・ERC(企業登録証明書)は「会社・投資プロジェクトを登録するための証明書」であり、それ自体が飲食店の営業許可ではないという点です。実際の飲食店営業には、これとは別に食品安全条件証明書・消防(防火)に関する要件・酒類を提供する場合の許可など、複数の条件を個別にクリアする必要があります。物件の権利関係・用途・建築の適法性に問題があると、投資プロジェクトの所在地としての登録や、その後の各種許認可の取得全般に支障が出る可能性があります。内装工事にお金をかけたあとでこうした問題が発覚すれば、投資額をまるごと失うことにもなりかねません。
一般的なレストラン営業には、これとは別に食品安全条件証明書の取得も必要になります(小規模事業者など、一部法令上の免除類型もあります)。加えて、2025年の地方行政改革(いわゆる「二層制」への移行)により、これまで区(郡)レベルで受け付けていた各種登録・届出の窓口が変更された地域もあります。制度の過渡期は情報が錯綜しやすいため、最新の窓口情報は必ず現地の専門家に確認するようにしてください。
つまり「物件を選ぶ」という工程は、単なる立地選定ではなく、法務・許認可・設備の適合性を同時にチェックする作業だと捉える必要があります。逆にいえば、ここさえ丁寧に進めれば、ベトナム特有のリスクの大半は事前に回避できるということでもあります。
そもそも、なぜベトナムでは日本の不動産取引の常識が通用しないのでしょうか。背景の一つに、土地制度の違いがあります。ベトナムでは土地は「全人民所有」とされ、国家が所有者を代表して統一的に管理する仕組みになっています。個人や企業が保有できるのはあくまで「土地使用権」です。この使用権の範囲・期限・用途が物件によって異なるため、「誰が」「どこまで」使用を認められているのかを、契約前に一つずつ確認する必要があるのです。日本のように「所有者=自由に貸せる人」という単純な図式が成り立たない場面があることを、まず理解しておきましょう。
2. 出店エリアの特性を掴む
「どのエリアに出店するか」は、ターゲット顧客層とビジネスモデルによって最適解が大きく変わります。ホーチミンを例に、代表的なエリアの特性を整理してみましょう。
● 1区(中心部・レタントン周辺)
ビジネス街・観光地としての性格が強く、日本食レストラン街として知られる「レタントン通り」周辺には日本語対応の飲食店・美容室が集まっています。駐在員・出張者・観光客など人通りは圧倒的に多い一方、家賃水準・競合密度も市内で最も高いエリアです。短期滞在者や富裕層をターゲットにした高単価業態、あるいは知名度を活かした旗艦店に向いています。
● トゥードゥック市・タオディエン(旧2区)
欧米人駐在員や日本人ファミリーに人気の高級住宅エリアで、インターナショナルスクールやカフェ文化が発達しています。緑が多く落ち着いた雰囲気で、客単価の高いカフェ・ブランチ業態・ファミリー向けレストランと相性が良い一方、中心部からのアクセスは渋滞の影響を受けやすい点に注意が必要です。
● 7区(フーミーフン)
台湾資本による区画整理で発展したエリアで、日本人学校・日本人向け幼稚園があることから家族帯同の日本人に人気があります。医療・教育インフラが整い、生活者としての日本人コミュニティが根付いているため、ファミリー層・住民の日常使いを狙う業態と相性が良いエリアです。
● ビンタイン区
1区に隣接しながら家賃水準は比較的抑えられており、都市機能と生活のしやすさのバランスが良いエリアとして評価されています。中心部への交通アクセスを保ちながらコストを抑えたい場合の選択肢になります。近年は大型コンドミニアムの建設が進み、外国人居住者も増加傾向にあります。特にファンビッチャン通り周辺は「第二の日本人街」とも呼ばれ、日本食レストランの出店が相次いでいるエリアとして知られています。1区のレタントン周辺ほどの規模・知名度はまだないものの、家賃を抑えつつ日本食業態で出店したい場合の候補として注目されています。
| エリア | 主な客層 | 特徴 | 向いている業態 |
|---|---|---|---|
| 1区(中心部) | 駐在員・出張者・観光客 | 人通り・知名度・競合密度ともに最大 | 高単価業態、旗艦店、認知獲得重視の店舗 |
| タオディエン(旧2区) | 欧米人駐在員・日本人ファミリー | 落ち着いた住環境、カフェ文化が発達 | カフェ、ブランチ、ファミリー向けレストラン |
| 7区(フーミーフン) | 日本人ファミリー・住民 | 日本人学校あり、生活インフラが充実 | 日常使いの飲食店、ファミリー向け業態 |
| ビンタイン区 | 中間層・住民(ファンビッチャン通り周辺は日本人も) | 中心部近接でコストバランスが良く、ファンビッチャン通りは「第二の日本人街」 | コストを抑えた出店、日本食業態、地域密着型業態 |
エリアの流行り廃りは数年単位で変化するため、「今どのエリアが伸びているか」は必ず最新の現地情報で確認してください。たとえば近年は、1区や旧2区(タオディエン)の家賃高騰を受けて、ビンタイン区のように「中心部へのアクセスを保ちながらコストを抑えられるエリア」に注目が集まる動きも見られます。数年前の情報のまま「このエリアは高い/安い」と判断してしまうと、実態とズレた出店計画になりかねません。
エリア選びの正解は、家賃の安さではなく「自店のターゲット顧客が実際に生活・来訪しているかどうか」にあります。ターゲットが日本人ファミリーなのか、現地の若年層なのか、観光客なのかによって、最適なエリアはまったく異なります。エリア単体の評判だけでなく、「その物件が面している通りに、実際に自店のターゲットが歩いているか」を必ず自分の目で確認しましょう。
3. 物件を探す3つのチャネルと使い分け
エリアの方向性が固まったら、次はチャネルを組み合わせて実際の物件情報を集めていきます。ベトナムでの物件探しは、単一の方法に頼らず複数のチャネルを併用するのが一般的です。
● 日系不動産エージェントを利用する
日系企業向けの契約実務に慣れており、トラブル時の仲介や重要事項の確認を日本語で行えるという安心感があります。物件のオーナー情報や過去のトラブル履歴についても、ある程度スクリーニングされた状態で紹介を受けられることが多く、初めてのベトナム出店では最初の相談先として適しています。ただし、不動産エージェントによる紹介・仲介と、弁護士や投資コンサルタントによる法的デューデリジェンス(所有権・用途・建築適法性の確認)は別物です。エージェントを利用する場合でも、契約前の法的確認は別途専門家に依頼することをおすすめします。
● ローカルの不動産サイト・SNS(Facebook)を活用する
ベトナムでは、Facebookの物件情報グループやローカル不動産サイトでの直接取引が非常に活発です。情報量は圧倒的に多く、掘り出し物件に出会える可能性もありますが、その分、詐欺やトラブルのリスクも高まります。ここで見つけた物件を契約する際は、専門家(弁護士や日系エージェント)を通して確認するのが無難です。
● 「足」で探す(現地リサーチ)
空き物件の窓や外壁に「Nhà Cho Thuê(貸家)」や「Cho Thuê Mặt Bằng(スペース貸し)」という看板と電話番号が掲示されていることがあります。これを見つけて直接オーナーに電話し、交渉するという方法です。仲介手数料がかからず、大家と直接コミュニケーションを取れるメリットがありますが、ベトナム語でのやり取りが前提になるため、現地スタッフや信頼できる通訳の同行が実質的に必須です。
| チャネル | メリット | デメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 日系不動産エージェント | 日本語対応・契約実務に精通・トラブル時の仲介あり | 掲載物件数はローカルより少なめ | 初めての出店で安全性を最優先したい方 |
| ローカルサイト・SNS | 情報量が圧倒的に多い・掘り出し物件に出会える | 詐欺・トラブルのリスク・ベトナム語が前提 | 現地スタッフや専門家によるチェック体制がある方 |
| 現地リサーチ(看板・直接交渉) | 仲介手数料なし・大家と直接交渉できる | ベトナム語必須・情報の裏取りが自己責任 | 現地在住歴が長い、または信頼できる通訳がいる方 |
実務上は「エージェントで候補を絞りつつ、SNSで相場感を把握し、気になるエリアは実際に歩いて看板もチェックする」という併用スタイルが、もっとも精度の高い物件選びにつながります。
\ 物件選びやエリア選定を無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
4. 現地で必ず確認すべきチェックポイント
候補物件が見つかったら、資料や写真だけで判断せず、必ず自分の目と足で現地確認を行いましょう。特に以下の点は見落としがちですが、開業後の売上とオペレーションに直結します。
● 「時間帯」と「曜日」を変えて何度も見る
朝・昼・夜、そして平日と週末では、人通りや客層、交通渋滞の状況が劇的に変わります。昼は静かでも夜は賑わうエリア、逆に週末だけ人が集まるエリアなど、パターンは物件によって様々です。特にスコール(豪雨)が降ったタイミングで、店舗前の道路が冠水しないかどうかは必ずチェックしてください。冠水が常態化しているエリアだと、雨季には来店客が激減するだけでなく、店舗設備そのものへの浸水リスクも抱えることになります。
● 「車横付け」「バイク駐車場」の有無
車やGrabを横付けでき、雨に濡れずに入店できる動線があるかどうかは、売上に直結する死活問題です。ベトナムでは中高所得層ほど雨の日は車で移動する傾向があるため、車でのアクセス性は客単価にも影響します。あわせて、バイク客が気軽に停められるスペースが確保できるかも確認しましょう。周辺の路上駐輪スペースが常に埋まっているような立地は、来店機会そのものを逃している可能性があります。
● デリバリー(GrabFood等)の動線を確保できるか
ベトナムの飲食店にとって、デリバリー経由の売上はもはや無視できない収益の柱です。配達員がバイクを一時停車しやすいスペースがあるか、店頭での受け渡しがスムーズに行える構造かどうかは、開業前に必ず確認しておくべきポイントです。ピークタイムに配達員が同時に何台も待機できるかどうかも、実際に現場を見なければ分かりません。
● 電気容量の確認
ローカル向けの一般物件は、日本の飲食店が使うような大型冷蔵庫・製氷機・厨房機器を動かすための電気容量が不足しているケースが多々あります。契約前に現在の契約アンペア(または対応可能な電力容量)を確認し、増設が必要であれば工事費用と期間も見積もりに含めておきましょう。特に一戸建て物件は、そもそも住居用の電気配線しか通っていないことがあり、増設工事に想定以上の時間がかかることもあります。
● 排水設備(グリストラップ)の確認
厨房排水に油分が多く含まれる飲食店では、グリストラップ(油水分離槽)を設置できる排水構造かどうかも重要な確認事項です。後付け工事が困難な建物構造だと、開業後に環境衛生上の指摘を受けたり、近隣とのトラブルに発展したりするリスクがあります。
● 周辺の競合・親和店舗の状況
近隣にどのような業態の店舗が並んでいるかも重要な判断材料です。同業態の競合が密集しているエリアは価格競争に巻き込まれやすい一方、飲食店が集まる「食のストリート」化しているエリアは、それ自体が集客装置として機能することもあります。単に「競合がいるかどうか」ではなく、「その競合と共存できる立ち位置を取れるか」という視点で見極めましょう。
● 騒音・営業時間まわりのルール
住宅地に近い物件の場合、夜間の音楽・スピーカー使用や営業時間について、近隣住民との兼ね合いで制約を受けることがあります。特にライブ演奏やカラオケを伴う業態を検討している場合は、周辺が住宅密集地かどうか、近隣にすでに同様の営業をしている店舗があるかどうかを事前に確認しておくと安心です。
5. 賃貸契約で失敗しないための重要確認事項
物件そのものが気に入っても、契約条件の詰めが甘いと後々大きなトラブルに発展します。特に以下の項目は、契約書に明記されているかを必ず確認しましょう。
● 営業ライセンスの取得可否と物件用途の確認
借りようとしている物件(特に一戸建て)が、外国籍企業の投資プロジェクト所在地として登録でき、かつ予定する飲食営業に必要な土地・建築・消防・食品安全等の条件を満たせるかどうかを、契約前に必ず確認してください。物件の権利関係(土地使用権者・建物所有権者が誰か、契約相手に貸す権限があるか)、用途区分、建築の適法性に問題があると、各種登録・許認可の取得に支障が出る可能性があります。この確認を怠ると、内装費と保証金を投じたあとに営業できないという最悪の事態にもなりかねません。
また、事前のデューデリジェンスをどれだけ丁寧に行っても、行政判断を100%保証することはできません。そのため契約書には「一定期限までに投資登録・建築・消防等、当該営業に必要な行政手続きを完了できない場合、借主は違約金なく契約を解除でき、保証金も返還される」といった停止条件・解除条項を盛り込んでおくことを強くおすすめします。
なお、複数店舗を展開する場合、IRC(投資登録証明書)の対象は「店舗」ではなく「投資プロジェクト」です。新店舗の追加が既存プロジェクトの所在地変更・追加として処理されるのか、別の投資プロジェクトとして新たなIRCが必要になるのかは、事業の進め方によって変わります。「1店舗=必ず1IRC」と一律に決まっているわけではないため、多店舗展開を見据える場合は専門家と個別に設計しておくことをおすすめします。
● 保証金(デポジット)の条件
商業用(店舗)の保証金は、居住用物件(一般的に家賃1〜2ヶ月分が相場とされる)よりも高めに設定される傾向があり、目安として家賃の2〜3ヶ月分程度が一つの基準になります。ただし物件によっては大家側から3〜6ヶ月分を提示されるケースもあり、これはあくまで市場慣行であって法定の相場ではないため、金額は交渉の出発点と捉えてください。
中途解約時に保証金が「どのような条件なら返還されるか/没収されるか」も必ず契約書に明記させましょう。特に、借主都合の中途解約なのか、貸主側の契約違反や物件の法的瑕疵による解除なのか、許認可が取得できなかったことによる解除なのかで、扱いが変わってくるのが一般的です。「全額返還される条件」だけを確認するのではなく、それぞれのケースごとの取り扱いを整理しておくことが重要です。
● 家賃の「値上げ幅」の上限設定
ベトナムでは、開業後に店が繁盛し始めると、大家から契約更新時に大幅な賃料改定を提示される可能性があります。契約書に「更新時の値上げ幅は最大◯%まで」と明記させることが鉄則です。なお、口頭の合意が常に無効というわけではありませんが、後日の立証が極めて難しくなるため、家賃改定・更新・中途解約・原状回復・保証金返還など重要事項は必ず書面に落とし込みましょう。
● フリーレント(内装工事期間)の交渉
内装工事期間中は家賃を無料にする「フリーレント期間」を交渉するのが一般的です。店舗規模に応じて2週間〜1ヶ月程度を設定するケースが多く、この交渉を行うかどうかで開業前コストが大きく変わります。工事期間が長引きそうな場合は、あらかじめ余裕を持った期間を交渉しておくことをおすすめします。
● 原状回復(スケルトン戻し)の範囲明確化
退去時の原状回復について、「入居時の状態(スケルトン)に戻す」のか、「内装をそのまま残して退去してよい(居抜き状態)」のかを、契約書で範囲を明確に定義しておきましょう。この取り決めが曖昧だと、退去時に想定外の原状回復費用を請求されるケースがあります。
● 契約期間・中途解約条項の確認
長期契約を結ぶ場合、中途解約の条件(何ヶ月前の予告が必要か、違約金の有無)も必ず確認してください。事業が軌道に乗らなかった場合の撤退シナリオまで想定しておくことは、リスク管理の観点から非常に重要です。
● マンション(集合住宅)の用途制限
住宅法上、マンション・コンドミニアムの居住用として指定された住戸を、店舗やオフィスなど居住以外の目的で使用すること自体が禁止されています。これは「あとから用途変更手続きをすれば解決する」という性質のものではありません。一方、複合用途の建物には、当初から商業・サービス区画として承認された部分が存在することもあります。つまり確認すべきは「その建物がマンションかどうか」ではなく、「借りようとしている区画自体が、商業用途として承認されているか」です。タオディエンなどで「店舗として使えそうな住宅」を見つけた場合でも、この区画の承認用途を契約前に必ず書面で確認しましょう。
\ 契約書のチェックポイントを無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
6. 絶対に避けるべき禁忌と、大家の信頼性という視点
物件選びと契約の場面では、「良さそうだから」「急いでいるから」という理由で、以下のような行動に出てしまう方が後を絶ちません。いずれも取り返しのつかない損失につながるため、必ず避けてください。
● 大家の「口約束」を信じて、契約前に内装工事を始める
「許可は後で取ってあげるから、先に工事を始めていいよ」という大家の言葉を信じて投資したものの、後から「やっぱりダメになった」と言われ、内装費用をまるごと損してしまうケースが実際に発生しています。書面で正式に交わされるまでは、いかなる投資も始めてはいけません。
● 「手付金(デポジット)」の領収書をもらわずに支払う
良い物件は早い者勝ちのため、焦って手付金を支払ってしまいたくなる場面があります。しかし、契約書や領収書なしにお金を渡すと、そのまま大家や仲介業者と連絡が取れなくなるという詐欺の手口が存在します。どんなに急いでいても、金銭のやり取りには必ず書面の記録を残してください。
● 現地の消防署や公安のルールを無視する
2026年7月からの暫定措置により、公安による「PCCC完工検査」という行政手続き自体は簡素化されましたが、消防に関する技術基準そのものが緩和されたわけではなく、むしろ事業者側の自己確認責任と開業後の事後監督の重要性が増しています。ローカルの施工業者に任せきりにして基準を満たさない内装を進めてしまうと、開業後の検査で是正指導を受け、営業停止や内装のやり直しを迫られるリスクがあります。内装設計の段階から、消防・防火要件を満たせる業者・専門家を関与させることが重要です。
● 立地よりも大家の信頼性を優先する
ここまで挙げてきたトラブルの多くは、実は「物件」そのものではなく「大家」の姿勢に起因しています。契約内容を後からごまかそうとする、高圧的な態度が目立つ、権利関係や書類の提示を求めても曖昧にはぐらかす——こうした懸念がある場合は、どれほど好立地であっても契約を見送る勇気を持ちましょう。
7. まとめ:出店前チェックリスト
● よくある質問
Q. 一戸建てとモール・複合施設内のテナント、どちらが出店しやすいですか?
一戸建ては家賃を抑えやすく内装の自由度も高い一方、電気容量・排水設備・消防対応などをすべて自分で整える必要があります。モール・複合施設のテナントは、こうした設備がすでに商業利用を前提に整備されていることが多いというメリットがあります。ただし「モールだから安全」とは限りません。ビル全体の消防関係書類が適切に整備されているか、過去の改修・用途変更に伴う手続きを経ているか、現行の消防安全基準を満たしているかによって、テナント側の許認可にも影響が及ぶ可能性があります。契約前に、ビル管理側からこれらの状況を確認することをおすすめします。
Q. 契約は個人名義と法人名義のどちらで結ぶべきですか?
飲食店営業に必要な各種登録・許認可は、最終的には法人名義で進めることになります。以前は「投資登録証明書(IRC)を取得してから法人(ERC)を設立する」という順序が原則でしたが、2026年3月施行の新しい投資関連制度により、外国投資家が先に法人(ERC)を設立し、その法人名義で物件契約などの準備を進めたうえでIRC取得に進む、という順序も可能になりました。個人名義でまず契約し、あとから法人名義に切り替える方法(覚書=MOUを交わし、法人設立後に本契約へ切り替える運用)も引き続き取られますが、いずれのルートを取るかは事業の進め方によって最適解が変わるため、契約前に専門家と設計しておくことをおすすめします。
Q. 物件探しから内装工事、開業までどのくらいの期間を見ておくべきですか?
物件の状態や許認可の進み具合によって大きく変わりますが、物件確定から開業までは数ヶ月単位の余裕を見ておくのが一般的です。特に消防検査や各種ライセンス取得は想定より時間がかかることが多いため、契約段階でスケジュールに余裕を持たせておくことをおすすめします。
ここまでの内容を、出店前に確認すべきチェックリストとして整理します。
- エリア適合性:出店エリアが自店のターゲット顧客層と合致しているか(家賃の安さだけで選んでいないか)
- 酒類提供の距離要件:酒類提供を予定している場合、学校・医療機関からの距離要件(100m)に抵触しないか確認したか
- 複数チャネルの併用:日系エージェント・ローカルSNS・現地リサーチを併用して物件情報を集めたか
- 現地確認:時間帯・曜日を変えて複数回、現地を訪れたか(豪雨時の冠水チェックを含む)
- 動線の確認:車横付け・バイク駐車・デリバリー動線を確認したか
- 設備の確認:電気容量・排水設備(グリストラップ)が飲食店営業に対応できるか確認したか
- 競合状況:周辺の競合・親和店舗の状況を把握したか
- 用途区分:物件の法的な用途区分(住宅か商業か)を確認したか(マンションの場合は特に注意)
- 貸す権限:土地使用権者・建物所有権者が誰か、契約相手に貸す権限があるかを確認したか
- 許認可の見通し:各種登録・許認可が取得できる物件かどうか、専門家とともに事前確認したか
- 解除条項:許認可を取得できなかった場合の解除条項(違約金なしの解除・保証金返還)を契約書に盛り込んだか
- 契約条件の明記:保証金の返還・没収条件、値上げ幅、フリーレント、原状回復、中途解約条件が契約書に明記されているか
- 書面化:重要事項を口約束のままにせず、書面に落とし込んでいるか
- 消防対応:消防・防火規制に対応できる業者・専門家を関与させているか
- 大家の見極め:大家の対応姿勢と、権利関係の書面確認の両方を行ったか
物件選びは、ベトナム飲食店経営の土台そのものです。一つひとつは地味な確認作業に見えても、ここを丁寧に積み重ねることが、後々の大きなトラブルを防ぐ最大の防御策になります。まずは現地に詳しい私たちにご相談ください。
\ 飲食店の海外進出を無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
▶ ベトナムにお試し進出?!
低コスト&低リスクでベトナムで飲食店を開業&進出したい方はこちら
(毎月1万円〜できるベトナム・ホーチミンのデリバリービジネス)
あわせて読みたい記事
▶ まずは7か国を横断比較したい方へ
【2026年最新版】東南アジア飲食店進出・7か国比較ハブガイド
(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア/カンボジア/フィリピン)
上記記事では、各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを1ページで整理しています。
▶ 個別国の詳細を知りたい方はこちら
- ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
- タイでの飲食店開業・出店ガイド(観光×多店舗展開)
- シンガポールでの飲食店開業・出店ガイド(富裕層・ブランド戦略)
- インドネシアでの飲食店開業・出店ガイド(人口ボーナス市場)
- マレーシアでの飲食店開業・出店ガイド(高単価・英語圏)
- カンボジアでの飲食店開業・出店ガイド(ドル経済・外資100%)
自社の業態・資金規模・展開スピードを踏まえて、「どの国が最適か」を整理したい方は、お気軽に無料相談をご活用ください。
▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

