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2026.09.30
ベトナムの飲食店で酒を出すには?2026年の規制緩和で変わったこと・変わらないこと|「酒類は輸入できない」問題と現地仕入れの実務
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
「ベトナムで居酒屋を出したいけれど、お酒を出すにはどんな手続きが必要?」
「日本酒は自分たちで輸入できないと聞いたけれど、本当?」
ベトナム進出の相談で、こうした質問をよくいただきます。
ところが、ネットで調べると「区の人民委員会で登録が必要」「外資は酒を輸入できない」といった情報が今もたくさん出てきます。
結論からお伝えすると、これらの多くは2025年以前の制度を前提にした説明です。
ベトナムの酒類ルールは、2025年の地方行政改革と2026年の規制緩和で大きく動きました。
一方で、「緩和された=何をしてもよい」わけではなく、未成年への提供禁止や広告規制、出どころの確かな酒を扱う義務は変わらず残っています。
また「酒が輸入できない」という話も、「外資だから一律に禁止」ではありません。
ただし、飲食店の法人がそのまま自社で商業輸入できるわけでもなく、単店で自社輸入するのは手続き・在庫の面で割に合わないことが多いため、現地の正規業者から仕入れるのが基本になります。
この記事では、店内で酒を提供する際のルールが「いま」どうなっているのか、そして輸入と仕入れの現実的な考え方を整理します。
※本記事は2026年9月時点の法令・公開情報にもとづいています。
※本記事の対象は「店内でお客様に飲んでもらう提供」です。持ち帰り販売(小売)・EC・デリバリーは別の制度になるため扱いません。
目次
結論:店で酒を出すルールは「3段階」で変わっている
店内での酒類提供に関するルールは、ここ1〜2年で次のように変わってきました。
| 時期 | 店内提供の扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 〜2025年6月 | 度数5.5度以上の酒(rượu)の店内提供は「登録」制 | 窓口は区(郡・県)の経済課 |
| 2025年7月〜2026年6月 | 登録制はそのまま | 二層制移行で区レベルが廃止。窓口はコミューン級(社・坊)人民委員会へ |
| 2026年7月〜2027年2月 | 政府決議 Resolution 66.18/2026/NQ-CP による暫定緩和。酒類の許可発給手続きが止まり、事業条件も削減 | 登録を前提とした事業条件や、関連する罰則も暫定的に適用しない扱い |
| 2027年3月〜 | 改正投資法(Law 24/2026/QH16)で、酒類事業が「条件付き事業」から外れる | 恒久的な緩和へ。酒類・ビールの害防止法などは引き続き適用 |
ポイントは3つです。
- 「区人民委員会への登録」は現行制度と合わない:区レベルの行政はすでに廃止されています。
- 2026年7月から暫定緩和、2027年3月から恒久的な緩和へという流れにある。
- それでも、未成年対策・広告規制・飲酒運転の注意喚起・出店場所の制限などの義務は残る。
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そもそも「店内提供」は許可ではなく「登録」だった
● 酒(rượu)とビール(bia)は法律上の扱いが違う
ベトナムでは、法律上「酒(rượu)」と「ビール(bia)」が別のものとして扱われます。
これまでの酒類事業の制度(政令105/2017号、政令17/2020号で改正)は、主に酒(rượu)が対象でした。
日本酒・焼酎・ワイン・ウイスキーは「酒」、ビールは「ビール」です。
ただし、未成年への提供禁止や広告の規制などは、酒とビールの両方にかかります。
● 店内提供は「許可」ではなく「登録」
政令17/2020号の改正以降、酒の事業は次のように区分されていました。
- 製造・流通・卸売・小売(持ち帰り販売):許可(giấy phép)が必要
- 度数5.5度以上の酒を店内で提供する:登録(đăng ký)が必要
- 度数5.5度未満の酒の事業:登録が必要
それ以前(政令105/2017号の当初)は店内提供にも「許可」が必要でしたが、2020年の改正で「登録」に簡素化されています。
今も「店内提供許可証が必要」と書かれた解説がありますが、これは2020年より前の制度です。
登録の条件は、法人・個人事業として適法に設立されていること、固定の営業場所を適法に使っていること、そして提供する酒が許可を持つ業者から供給されたものであること、などでした。
● 窓口は「区」から「コミューン級」へ
2025年7月、ベトナムは地方行政を再編し、従来の「区・郡・県(cấp huyện)」レベルを廃止して、省とコミューン級(社・坊)の二層制に移行しました。
これにともない、店内提供の登録窓口もコミューン級の人民委員会へ移っています(政令139/2025号)。
2026年の規制緩和で何が変わったか
● 決議で「法律の規定」まで一時的に外せる仕組み
2026年5月、ベトナム政府は行政手続きや事業条件を大幅に削減する決議(Resolution 66.18/2026/NQ-CP)を出しました。
適用期間は2026年7月1日〜2027年2月28日です。
「政府の決議で、国会が作った法律の規定を外せるのか」と思われるかもしれません。
この決議は、法律の規定が障害になっている場合に政府が特別に対処できるとした国会決議(206/2025/QH15)を根拠にしています。
そのため、期間限定で法律や政令の規定を適用しないことができる仕組みになっています。
● 酒類で緩和された3つのこと
酒類について、決議は大きく3つの面で緩和しています。
- 手続きの停止:流通・卸売・小売の許可、製造許可など、12の行政手続きを「実施しない」
- 事業条件の削減:酒類事業の条件13項目を削減
- 罰則の扱い:これらに関連する条件違反への行政罰を適用しない
つまり、「許可を出す手続き」だけが止まったのではありません。
登録を前提にした条件そのものや、それに関わる罰則も含めて、暫定的に外すという構造です。
現地の法律情報サイトでも「酒類事業は許可なしで行える状態になった」と解説されています。
そのため、この期間中は、5.5度以上の酒の店内提供についても、従来の登録を前提とした条件や、無登録を理由とする処罰は、原則として適用されないと理解するのが自然です。
● 2027年3月からは「条件付き事業」ではなくなる
さらに2026年8月、国会は改正投資法(Law 24/2026/QH16)を可決しました。
2027年3月1日から、「酒類事業」は条件付き事業のリストから外れます。
7月からの暫定緩和が終わるタイミングで、恒久的な緩和に切り替わる流れです。
すでに発給された許可は希望すれば期限まで使えること、審査中の申請は処理を止めて返却されることも定められています。
ただし、外れるのは投資法上の「条件付き事業」としての規制です。
食品安全・輸入・税関・表示・広告・消防など、別の法令にもとづく規制や行政の検査まで、なくなるわけではありません。
規制緩和でも消えない義務
酒類・ビールの害を防ぐための法律(酒類・ビールの害防止法、2019年)は、この緩和とは別に残っています。
飲食店が押さえておきたい義務は次のとおりです。
● 未成年への対策
- 18歳未満の人への酒・ビールの提供・販売・販促は禁止。18歳未満の人が飲むことも禁止
- 店内に「18歳未満には酒・ビールを販売しない」旨を掲示する義務がある
- 年齢が疑わしい場合は、身分証の提示を求めることができる
- 18歳未満のスタッフを、酒・ビールの販売に直接携わらせることも禁止
アルバイトの採用時にも、年齢の確認が必要になるということです。
● 飲酒運転の注意喚起
店内で酒を提供する店には、お客様に飲酒後に運転しないよう注意を促し、タクシーなどの交通手段の利用を手助けすることが求められています。
バイク社会のベトナムでは、配車アプリでの手配を手伝うなど、スタッフの接客マニュアルに入れておくとよいでしょう。
● 出店場所の制限
物件を契約する前に、周辺の該当施設を確認してください。
登録の話より、実務上はこちらの方が影響が大きいかもしれません。
● 広告・販促の規制
度数15度以上の酒は広告が禁止、15度以上の酒を対象にした販促やプレゼントも禁止です。
「15度以上」なので、15.0%ちょうどの日本酒も禁止側に入ります。
14.5%なら15度以上の禁止には当たりませんが、15度未満の酒にも媒体や表示のルールがあります。
「日本酒1杯無料」のようなSNSキャンペーンは、事前に度数を確認しましょう。
● 出どころの確かな酒を扱う
暫定緩和で、従来の「許可を持つ業者から仕入れること」という登録条件は外れています。
しかし、密輸品・偽造品・品質が保証されない酒・出どころが不明な酒を扱うことは、法律で引き続き禁止です。
輸入酒にはスタンプ(tem)が必要で、2026年7月からは電子スタンプの新しい規則(Circular 93/2026/TT-BTC)も施行されています。
仕入れの際は、電子インボイスを受け取って保管するだけでなく、輸入酒スタンプ、ベトナム語表示、仕入れ先と商品の出どころも合わせて確認することが、店を守ることにつながります。
インボイスがあるだけで正規品だと言い切れるわけではないからです。
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「酒類は輸入できない」問題の実際
● 「外資だから一律に禁止」ではない
これまでの制度で酒を商業目的で輸入できたのは、主に流通許可を持つ事業者でした。
流通許可は要件が重かったため、「普通の飲食店には輸入できない」という話が広まったと考えられます。
外資企業が流通に参入すること自体が禁じられていたわけではありません。
● ただし、飲食店の法人がそのまま輸入できるわけではない
外資系の法人が自社で輸入する場合は、次の点を分けて確認する必要があります。
- 投資登録・企業登録上の事業範囲に輸入が含まれているか
- 外資企業の商業活動を定めた政令09/2018号上の輸入権・流通権の扱い
- 酒類そのものに関する専門の規制(これまでは流通許可が必要だった部分)
飲食サービスだけを目的に設立した法人が、そのまま自社輸入できるとは限りません。
そして、2026年7月から酒類の専門規制が暫定的に緩和されたことと、飲食店の法人自身が輸入者になれるかは、別の問題です。
公開資料からは、この移行期に飲食店の法人が自由に輸入できるとまでは確認できません。
自社輸入を考える場合は、税関・商工当局・専門家への個別確認が必須です。
● 単店での自社輸入が割に合わない理由
仮に制度上可能になっても、多くの場合「単店では割に合わない」のが実態です。
なお、酒・ビールにかかる特別消費税(20度以上の酒は2026年65%→2031年90%、20度未満は35%→60%へ段階的に引き上げ)は、現地で仕入れる酒の価格にも含まれます。
税率そのものは自社輸入だけの不利ではありません。
単店にとっての負担は、次のような「手間とロット」です。
- 通関と税の申告:関税・特別消費税・VATの計算と申告を自社で行う
- スタンプ・表示・食品安全:銘柄ごとにベトナム語ラベルや食品安全の手続きが必要
- ロットと在庫:まとまった量でないと割高。在庫が資金を寝かせ、日本酒は温度管理も必要
| 比較項目 | 自社輸入(単店) | 現地の正規業者から仕入れ |
|---|---|---|
| 法人の要件 | 事業範囲・輸入権・酒類規制の個別確認が必要 | 不要 |
| 通関・税の申告 | 自社で行う | 業者が対応済み |
| スタンプ・表示 | 銘柄ごとに自社で対応 | 対応済みの商品を購入 |
| ロット・在庫 | まとまった量が必要 | 必要な分だけ発注しやすい |
| 品揃え | 好きな銘柄を選べる | 業者の取扱銘柄の範囲内 |
| 向いているケース | 多店舗・卸売まで視野に入れる場合 | 単店・小規模スタート |
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現地仕入れを基本にした実務と、小さく始める進め方
● 仕入れ先選びのポイント
ホーチミンやハノイには、日本酒・焼酎・ウイスキーを扱う輸入・卸業者が複数あります。
- 電子インボイスを発行してくれるか:出ない取引は避ける
- スタンプ・表示・出どころが適正か:輸入酒スタンプ、ベトナム語表示、商品の輸入経路
- 取扱銘柄と安定供給:出したい銘柄があるか
- 最小発注量と配送、保管状態:単店の量で回せるか、温度管理は適切か
特別消費税は2027年から毎年上がる予定なので、メニュー価格を見直すタイミングを年1回など決めておくと安心です。
どうしても扱いたい銘柄は、自社で輸入するより、その銘柄を扱ってくれる輸入業者に相談するのが現実的です。
● 開業前チェックリスト
- 物件の敷地から半径100m以内に、医療施設・保育園・幼稚園・小中高校がないか確認する
- 店舗所在地のコミューン級人民委員会で、現場の運用を確認する
- 仕入れ先を2〜3社に絞り、価格表・取扱銘柄・インボイス発行を確認する
- 「18歳未満への販売禁止」の掲示、年齢確認、飲酒運転の声かけ、販促の度数チェックをマニュアル化する
酒類は開業準備の一部です。
実際には、食品安全や消防(PCCC)の対応のほうが大きな山になることも多いので、全体のスケジュールの中で進めましょう。
● 小さく始めて、見極めてから広げる
フードコネクションベトナムでは、ベトナム進出を「小さく始めて、見極めてから広げる」進め方で支援しています。
- 検討段階(出店前):現地視察プランで、繁盛店の酒類メニューや価格帯、物件相場を実際に見て把握できます。1万円から始められます。
- 実行段階(出店を決めたら):スタッフの採用を弊社が代行する運営代行、弊社保有の物件やデリバリー/ゴーストレストラン用スペースを活用した店舗出店、法人設立・飲食店ライセンス申請・バックオフィスまでの申請サポートを組み合わせて進められます。
● まとめ
- 店内での酒の提供は、2020年以降「許可」ではなく「登録」。2025年7月から窓口はコミューン級
- 2026年7月〜2027年2月は、決議により登録を前提とした条件・罰則も含めて暫定的に緩和。2027年3月から酒類事業は条件付き事業から外れる
- 未成年対策(掲示を含む)・飲酒運転の注意喚起・医療施設や小中高校などから100m以内の新規出店制限・15度以上の広告禁止・出どころの確かな酒を扱う義務は残る
- 「外資は一律に輸入禁止」ではないが、飲食店の法人がそのまま輸入できるわけでもない。単店では手間とロットの面で割に合わず、現地の正規業者からの仕入れが基本
ベトナムの酒類ルールは、いままさに大きく変わっている最中です。
古い情報のまま準備を進めないよう、最新の運用を確認しながら計画を立てていきましょう。
お酒の出し方や仕入れ先選び、進出の進め方でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

