ベトナム飲食店開業、ビザ・在留資格はどう違う?“投資家”と“駐在員”、あなたに必要な手続きを整理 – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.07.21
ベトナム飲食店開業、ビザ・在留資格はどう違う?“投資家”と“駐在員”、あなたに必要な手続きを整理
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
ベトナムで飲食店を開業しようとするとき、物件やメニュー、資金計画には時間をかけて検討する一方で、「自分自身がどの在留資格でベトナムに滞在するか」については、後回しにされがちです。実際にご相談をいただく中でも、「進出するんだから、就労ビザのようなものを取ればいいんでしょう?」というざっくりとした理解のまま準備が進み、出資額や役職を決めた後になって「自分はどの手続きに当てはまるのか」と迷われるケースを、現地でよく見かけます。
実はここには大きな分岐点があります。ベトナムでは、自分の会社に出資して事業主(オーナー)として経営する人と、日本の会社から派遣されて現地法人で働く駐在員(就労者)とでは、必要な手続きも、根拠となる制度も、そもそもの枠組みがまったく異なります。この違いを知らずに動くと、「投資家だから労働許可証は要らないはず」といった思い込みで手続きを飛ばしてしまい、後から是正に時間を取られることもあります。
今回は、飲食店オーナー(投資家)と、現地に赴任する駐在員(就労者)という2つの代表的なケースに分けて、それぞれの在留資格の取得条件と注意点を整理します。なお、実際には出資者が同時に法人の代表者・経営者として働く場合など、両者の要素を併せ持つケースも少なくありません。その場合も、入管法上の資格(DT/LDのどちらに該当するか)と、労働法上の労働許可証の要否は、それぞれ別に判定する必要があります。本記事では、まず全体像をつかんでいただくために2つの立場に分けて整理しますが、ご自身のケースが両方にまたがる場合は、出資額・役職・実際の業務内容の3点セットで個別に確認することをおすすめします。
なお、本記事は在留資格(ビザ・TRC・労働許可証)に絞って解説するもので、食品安全許可・消防(PCCC)適合・酒類販売許可といった飲食店営業そのものに必要な許認可、および個人所得税・社会保険といった税務・労務は対象外です。これらは法人設立・出店準備の別記事であわせてご確認ください。ただし、ビザ・在留資格の在留期間は、これら営業許可の取得スケジュールとも連動します。店舗の内装・許認可取得に想定より時間がかかると、その間の在留資格の期限管理にも影響するため、両方を合わせたスケジュールで検討することをおすすめします。
目次
1. 【まず結論】投資家と駐在員、何がどう違うのか
細かい手続きに入る前に、両者の違いを一覧で押さえておきましょう。
| 比較項目 | 投資家(オーナー) | 駐在員(就労者) |
|---|---|---|
| 立場 | 自社に出資する事業主・経営者 | 日本の会社から派遣される従業員 |
| 主なビザ | 投資家ビザ(DT1〜DT4) | 就労ビザ(LD1:労働許可証免除者向け/LD2:労働許可証取得者向け) |
| 労働許可証 | 出資額・役職により要否が分かれる(後述) | 原則必須(免除に該当しない限り) |
| 申請窓口 | ビザ・在留カード(TRC)=出入国管理局(公安省系統) | 労働許可証=省人民委員会・労働当局(公共行政サービスセンター経由)/ビザ・TRC=出入国管理局 |
| 長期在留カード(TRC) | DT1〜DT3で取得可(DT4は不可) | 取得可(希望する場合) |
| 在留カードの有効期間目安 | 出資額に応じて最長10年〜3年 | 労働許可証・就労ビザの有効期間に連動(実務上は最長2年) |
| 家族の帯同 | DT1〜DT3は配偶者・子の帯同ビザ(TT、最長12か月)・TT在留カード(最長3年、本人の在留期間による制限あり)が可能 | 別途、家族用の帯同ビザ(TT)の取得が必要 |
| 手続きの起点 | 会社設立・出資(投資登録証明書=IRC、企業登録証明書=ERCの取得) | 現地法人による労働許可証の申請 |
見ての通り、投資家と駐在員では、根拠となる制度も申請の起点もまったく別物です。次章から、それぞれを詳しく見ていきます。
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2. 投資家(オーナー)に必要なビザ・在留資格
自らベトナムに出資して飲食店を経営するオーナーの方が対象となるのが「投資家ビザ(DT: Đầu tư)」です。
● 出資額によって4段階に分かれる
投資家ビザは、出資額に応じてDT1からDT4までの4区分に分かれています。区分によって、ビザ自体の有効期間や、その後に取得できる在留カード(TRC)の有無・期間が変わります。
| 区分 | 出資額の目安 | ビザの有効期間 | 在留カード(TRC)の取得 |
|---|---|---|---|
| DT1 | 1,000億VND以上、または政府の定める優遇分野・地域への投資 | 最長5年 | 取得可(最長10年) |
| DT2 | 500億VND以上1,000億VND未満、または奨励分野への投資 | 最長5年 | 取得可(最長5年) |
| DT3 | 30億VND以上500億VND未満 | 最長3年 | 取得可(最長3年) |
| DT4 | 30億VND未満 | 最長1年 | 取得不可(都度ビザ手続き) |
※VND(ベトナムドン)表示。1億VND=約50〜60万円換算(レートにより変動)。30億VNDはおおよそ1,500万円前後が目安です。
なお、一時在留カード(TRC)の有効期間は、パスポートの残存有効期間より少なくとも30日は短くなければならないというルールがあります。日本のパスポートは最長10年のため、たとえばDT1で「最長10年」のTRCが制度上認められていても、パスポートを更新した直後であっても実際には10年ぎりぎりのTRCは発給されにくく、パスポートの残存期間に応じて短くなるのが実務上の前提です。
また、DT1・DT2の非金額要件(政府の定める優遇・奨励分野への投資)は、通常の飲食店単体の出店では該当しないのが一般的です。飲食店1店舗の出資規模を検討する際は、優遇分野への該当を前提とせず、実際の出資額によるDT3・DT4の判定を中心に考えるとよいでしょう。
飲食店1店舗程度の出資規模では、DT3〜DT4に該当するケースが多いのが実情です。ここで重要な分岐点になるのが「30億VND」という金額です。この金額を境に、在留カード(TRC)が取得できるかどうかが変わります。30億VND未満(DT4)の場合、在留カードの対象外で、ビザ自体の有効期間も最長12か月にとどまるため、継続して滞在するには、期限が来るたびに新たなビザの発給・延長等の手続きを行う必要があります。長期の店舗運営を見据えるなら、出資額の設計段階でこの基準を意識しておくことをおすすめします。
● 労働許可証は「投資家だから不要」とは限らない
ここが最も誤解されやすいポイントです。「自分の会社に出資する投資家(オーナー)は労働許可証が要らない」というイメージを持たれている方は多いのですが、正確には一定の出資額と役職の条件を満たした場合にのみ、労働許可証の取得が免除されるという制度です。
2025年8月に施行された政令219号(外国人労働者の管理に関する新政令)では、以下のような立場の人について、労働許可証の取得が免除されると明記されています。
- 有限責任会社(LLC):所有者、または出資額が30億VND以上の出資メンバー
- 株式会社(JSC):取締役会長、または取締役会構成員で、出資額が30億VND以上の者
つまり、出資額が30億VND未満の小規模な投資家(多くのDT4該当者)は、「自分の会社を経営している」立場であっても、原則として労働許可証の取得対象になり得るということです。「投資家だから」「経営者だから」と思い込んで労働許可証の要否確認を省略してしまうと、後から是正が必要になるケースがあるため、出資額と自分の役職を確定した段階で、免除条件に該当するかどうかを個別に確認しておくことが重要です。
なお、2025年8月の政令219号では、免除対象となる個人の枠が全体的に拡大されており、管理者・業務執行責任者・専門家・技術労働者にあたる人が、暦年(1月1日〜12月31日)の合計就労日数90日未満であれば労働許可証が不要になるなど、実務上の柔軟性も増しています。この場合も、労働許可証非該当確認書の申請は原則不要ですが、就労開始予定日の3営業日前までの当局への通知は必要です。「免除=一切の手続き不要」ではない点に注意してください。また、飲食店を継続的に経営・運営する場合はこの短期就労の枠には該当しないため、投資家(オーナー)にとっては出資額を基準とした判定が中心になります。
● 家族の帯同について
DT1〜DT3の投資家ビザ・在留カードを保有している場合、配偶者や18歳未満の子どもについて、家族帯同ビザ(TTビザ)を申請することができます。TTビザ自体の有効期間は最長12か月で、長期滞在する場合はTTの一時在留カード(最長3年)へ切替えます。ただし、これは制度上の上限であり、実際の期間は本人(投資家)の在留カードの残存期間やパスポートの有効期間によって短くなる場合があります。DT4(出資額30億VND未満)の場合は、この家族帯同の枠組みが使えない点にも注意が必要です。家族での移住・帯同を予定している場合は、出資額の設計時にこの点も加味しておくとよいでしょう。
● 取得までの大まかな流れ
- ①:現地法人の設立準備(投資登録証明書=IRC、企業登録証明書=ERCの取得)
- ②:出資額の確定・出資完了(銀行口座への資本金振込等の証明書類を準備)
- ③:出資額に応じたDT区分での投資家ビザの取得。海外にいる場合はベトナムの企業・組織を通じて出入国管理局の事前承認を得たうえで、在外公館(ベトナム大使館・総領事館)または入国時に受給する方法があります
- ④:DT1〜DT3に該当する場合は、渡航後に在留カード(TRC)への切替えを申請
書類に不備がなければ、ビザ自体の審査は数営業日程度で完了するのが一般的ですが、法人設立の準備期間(IRC・ERC取得)を含めると、開業準備全体としては数か月単位のスケジュールを見ておく必要があります。なお、2026年3月1日施行の新投資法(法律143/2025/QH15)では、外国投資家の市場参入条件を満たす場合、IRC(投資登録証明書)の発給・変更手続きより前に、事業実施のための会社(ERC=企業登録証明書)を設立できる制度が導入されました。これにより出資の証明や事業所住所の確定を早めに進めやすくなる一方、IRCが必要な事業については、IRC取得前に投資プロジェクト自体を実施できるわけではない点には注意が必要です。
3. 駐在員(就労者)に必要な手続き【概要】
一方、日本の飲食店が現地法人を設立・展開し、日本から人材を派遣して現地で働いてもらう場合は、投資家ビザではなく、就労を前提とした別の制度が適用されます。なお、ひとくちに「駐在員」といっても、ベトナムの労働法上は、現地法人との雇用契約に基づく就労、企業内転勤、業務委託契約の履行など、扱いが分かれる場合があります。「日本本社から派遣される」という位置づけだけで労働許可証の要件が決まるわけではないため、実際の契約形態に応じて確認が必要です。
大まかな流れは、現地法人が労働許可証(WP)を申請・取得 → 労働許可証取得者は就労ビザ(LD2)、労働許可証の免除に該当する場合はLD1を取得 → 希望する場合は一時在留許可証(TRC)を取得、という順番です。労働許可証を取得してからでなければ就労ビザ(LD2)は申請できないため、順序を誤ると、合法的に就労できない期間が生じてしまう点には注意が必要です。
この駐在員(就労者)としての手続きの詳細(労働許可証の要件・取得までの期間・費用感、家族帯同のタイミング、TRCの実務上の位置づけなど)は、すでに別記事で詳しく解説しています。日本から人材を派遣するケースについては、そちらをあわせてご確認ください。
▶ ベトナムに駐在するためのルールと労働許可証(ワークパーミット)取得方法
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4. 実務上の注意点・落とし穴
● 「自ら現地に住んで運営する」オーナーほど、見落としやすい
小規模な出店の場合、オーナー自身がホーチミンに住み込んで店舗を運営するケースも珍しくありません。この場合、経営者としての実態があっても、出資額が30億VND未満であれば労働許可証の要否確認が必要になる、という前章の内容がそのまま該当します。「自分は雇われているわけではないから関係ない」と考えず、出資額と自分の役職(会社の所有者か、取締役会のメンバーか等)の両方から確認しておくと安心です。
● 商用ビザ・e-Visaのままでの長期滞在はリスクがある
法人設立の準備期間中など、当面は商用ビザ(DN)やe-Visaの延長・切替えだけで滞在を続けてしまうケースも見られます。しかし、DNビザやe-Visaはあくまで入国・短期滞在のための資格であり、それ自体で就労や継続的な経営活動を行う根拠にはなりません。前章の通り、国内でこれらのビザから就労ビザ・TRCへ切り替えることは以前から原則できないため、実態として継続的に事業運営に関わる場合は、法人設立・出資が確定した段階で、日本にいるうちに投資家ビザ(または就労ビザ)を取得しておくことが重要です。
● 肩書きだけでなく、実際の業務内容で判断されるリスクがある
投資家ビザは、あくまで入管法上の在留資格です。労働許可証の要否や、実質的に「外国人労働者」に当たるかどうかは、名目上の役職だけでなく、実際にどのような業務を行っているかで判断される可能性があります。特に小規模な飲食店では、オーナー自身が店長業務・調理・接客・発注・勤怠管理まで日常的にこなしているケースも珍しくありません。この場合、「出資判断だけを行う株主」というより、実態としては就労者に近い活動をしていることになります。「投資家ビザを持っているから安心」と考えず、出資額に加えて、自分が実際にどこまで現場業務に関わるのかも踏まえて確認しておくと安心です。なお、法人登記上の法定代表者や社長という肩書きだけでは、労働許可証の免除要件(出資額・役職)を満たしたことにはなりません。
● 出資額を抑えすぎると、在留の安定性を欠くことがある
初期投資を抑えたい気持ちは自然なことですが、出資額が30億VND未満(DT4)にとどまると、在留カードが取得できず、毎年のビザ更新が必要になるうえ、家族帯同の枠組みも使えません。長期的にベトナムに腰を据えて店舗を運営していく計画であれば、出資額の設計段階で、DT3以上(30億VND以上)を視野に入れるかどうかを検討する価値があります。
● 「ビザ」と「労働許可証」は、そもそも申請窓口が異なる
意外と見落とされがちなのが、ビザ・在留カード(TRC)と、労働許可証とでは、申請する窓口自体が異なるという点です。ビザ・在留カードは公安省系統の出入国管理局が管轄する一方、労働許可証は労働行政系統の手続きで、企業所在地の省人民委員会(または委任を受けた地方の公共行政サービスセンター)を通じて申請します。両者は根拠となる法律も別で、担当窓口も別ということを押さえておくと、手続きの全体像が整理しやすくなります。
また、2025年のベトナム地方行政改革により、区・郡(cấp huyện)が廃止され、省とコミューン(社・坊)の二層制へ移行し、事業登録などの一部手続きの窓口がコミューン級の人民委員会に変わったケースもあります。行政再編によって、上記の「ビザ系統」「労働許可証系統」という大枠自体が変わるわけではありませんが、実際の受付窓口・提出先・オンライン申請の経路は、再編や運用変更の影響を受ける可能性があるため、申請時点での最新情報を確認することをおすすめします。
5. まとめ:まず自分がどちらの立場かを整理する
ベトナムでの飲食店開業にあたっては、まず「自分は出資者(投資家)として現地に住むのか」「日本の会社から人材として派遣されるのか」を整理することが、ビザ・在留資格を検討する出発点になります。
- 投資家(オーナー)として滞在する場合:出資額に応じたDT1〜DT4のビザ区分を確認し、特に30億VND(約1,500万円前後)という金額が「在留カードが取れるかどうか」「労働許可証が免除されるかどうか」「家族を帯同できるかどうか」の3点に関わる分岐点になることを押さえておきましょう。
- 駐在員(就労者)として派遣される場合:労働許可証→就労ビザ→在留カードという順序を守ることが重要です。詳細は関連記事をご確認ください。
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

