ベトナムに帰化・永住はできるのか|日本人が国籍・永住権を取得する条件を徹底解説 – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.07.08
ベトナムに帰化・永住はできるのか|日本人が国籍・永住権を取得する条件を徹底解説
大阪と福岡くらい距離が離れていても、日本人同士なら「同じ国の人」という安心感があります。では、10年、20年とベトナムで暮らし、事業も生活も現地に根を下ろした先に、「もうこの国の一員になりたい」と感じたとき、日本人はベトナムに帰化できるのでしょうか。
結論から言うと、制度としては可能です。ベトナム人配偶者がいる場合などに要件が緩和される仕組みは2008年の国籍法制定当初から存在しており、2025年7月1日施行の改正ではその対象範囲の拡大と手続きの整備が行われました。しかし、そこには日本人であれば誰もが直面する、非常に重い代償が存在します。それは「日本国籍を失う可能性がある」という事実です。
この記事では、ベトナム側の帰化制度の実際の条件と、日本側の国籍法との関係、そして帰化以外の現実的な選択肢まで、フラットに整理してお伝えします。
目次
1. 帰化・永住カード・一時滞在カードの違い(早見表)
「ベトナムに長く住みたい」と考えたとき、選択肢は一つではありません。まずは3つの制度の違いを比較表で確認しましょう。
| 制度 | 内容 | 取得難易度 | 日本国籍への影響 |
|---|---|---|---|
| 帰化(ベトナム国籍取得) | ベトナム国民になる | 非常に高い(実質的な取得事例が乏しい) | 原則、日本国籍を喪失 |
| 永住カード(PRC) | 居住の権利自体は無期限だが、カードは10年ごとに更新が必要 | 極めて高い(代行会社も「現状ではまず難しい」と案内) | 影響なし(外国籍のまま) |
| 一時滞在カード(TRC) | 資格区分ごとに上限あり(おおむね2年・3年・5年・10年)。更新制。少額投資は対象外でビザ更新のみ | 現実的(就労許可証や投資家ビザ、配偶者ビザ等から取得可能) | 影響なし(外国籍のまま) |
多くの方が「帰化」という言葉に惹かれますが、実務的にはTRCの更新を続けるのが最も現実的な選択肢です。以下、それぞれの制度を詳しく見ていきます。
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2. ベトナム国籍法上、外国人の帰化は可能か
● 帰化の基本条件と、以前から存在する要件緩和の枠組み
ベトナム国籍法(2008年制定、24/2008/QH12)は、外国人がベトナム国籍を取得するための基本条件として、十分な行為能力、ベトナムの憲法・法律の遵守と文化・慣習の尊重、社会に溶け込むのに十分なベトナム語能力、ベトナムへの5年以上の居住、自立した生計能力を定めています。
実は、この言語・居住・生計に関する要件(法第19条1項)を免除する枠組み自体は、2025年の改正で新しくできたものではなく、2008年の法律制定当初(同条2項・3項)から存在しています。免除の対象となるのは、次のいずれかに該当する人です。
- ベトナム国民である配偶者・子・親:改正後は祖父母も対象に追加
- ベトナム国家の建設・防衛に特別な貢献をした者
- 国家にとって有益な者
つまり、ベトナム人と結婚している日本人は、以前からこの要件緩和の対象になり得る立場にありました。2025年7月1日施行の改正で新しく加わったのは、対象親族に祖父母を含めたこと、以前は政令(2020年公布)レベルでのみ規定されていた投資家・科学者・専門家向けの優遇措置を法律本体に格上げしたこと、在外公館での申請受付を可能にする等の手続き簡素化、処理期限の明確化といった実務面の整備です。「要件そのものが今回初めて大幅に緩和された」というより、「以前からあった緩和の道が、より使いやすく整理された」という理解が正確です。
● 二重国籍が認められるケースも、以前から存在
外国籍を保持したままベトナム国籍を取得できる規定(国家主席の許可が条件)についても同様で、2008年法の制定時点から、上記の要件緩和対象者に限って存在していました。2025年改正はこの規定の対象範囲や運用細則を整理したものです。条件は、その外国籍の保持が当人の元の国籍国(この場合は日本)の法令に違反しないこと、かつベトナムの国家安全保障や社会秩序を損なう目的で使用されないことです。
3. 最大の関門:日本国籍を失うという現実
● 国籍法11条1項という壁
日本の国籍法は、出生によって二重国籍となった人については、2022年4月1日施行の民法改正(成年年齢の18歳引き下げ)に伴い、現在は原則20歳に達するまでの間(18歳到達後に重国籍となった場合はその時から2年以内)、二重国籍の状態を認め、その間に国籍を選択する制度を設けています。しかし、これはあくまで「生まれつきの二重国籍」に対する経過措置です。成人が自らの意思で新たに外国籍を取得するケースは扱いが異なり、国籍法第11条1項には次のように定められています。
これは、本人が国籍喪失届を役所に提出したかどうかに関わらず、外国籍を取得した瞬間に自動的に適用されます。つまり、ベトナム国籍を自らの意思で取得した時点で、法律上は同時に日本国籍を失っているという扱いになるのです。届出は、この事実を戸籍に反映させるための手続きであり、戸籍法103条により、喪失の事実を知った日から1か月以内(国外にいる場合は3か月以内)に行うことが求められています。
● ベトナムの許可があっても、日本国籍は守られない
前章で触れた「国家主席の許可による外国籍保持」は、あくまでベトナム側の制度です。ベトナムが「日本国籍を保持したままでよい」と認めたとしても、それは日本の国籍法とは無関係に成立するベトナム国内の話です。日本国籍法第11条1項は、外国籍を自己の志望で取得したという事実そのものに反応する規定であるため、ベトナム側の許可の有無にかかわらず、日本国籍の自動喪失は避けられません。
「ベトナムが二重国籍を認めてくれるなら大丈夫」という理解は誤解であり、この点は帰化を検討する際に最も慎重になるべきポイントです。
● 一度失った日本国籍を取り戻すのは容易ではない
自己の意思で外国籍を取得して日本国籍を喪失した場合、その後に日本国籍を再取得する方法は、あらためて帰化許可申請を行うことになります。ただし、かつて日本国籍を有していた者(帰化後に国籍を失った者を除く)については、国籍法8条3号により住所要件・能力要件・生計要件が緩和される「簡易帰化」の対象となり、通常の帰化で必要となる「引き続き5年以上の日本居住」を待たずに、日本に生活の本拠を移した時点で申請が可能です。とはいえ、素行要件などの審査自体は残るため、無条件に日本国籍へ戻れるわけではない点には留意が必要です。
なお、この国籍法11条1項の規定については、自己決定権を侵害するのではないかとして違憲性が争われている訴訟も存在します。ただし現時点でこの規定自体は有効であり、帰化を検討する際の前提として押さえておく必要があります。
4. 現実的な代替策:永住カード(PRC)とTRC
「日本国籍を失ってまで帰化する」というハードルの高さを考えると、多くの方にとって現実的な選択肢は、帰化以外の長期滞在手段になります。
● 永住カード(PRC)は取得のハードルが非常に高い
ベトナムには外国人向けの永住権制度(PRC:Permanent Residence Card)もあります。対象となるのは、ベトナム国家への貢献により勲章・称号を授与された者、政府機関から推薦を受けた科学者・専門家、そしてベトナムに永住するベトナム国民である父・母・配偶者・子から保証(スポンサーシップ)を受けている外国人などです。いずれの区分であっても共通して、ベトナム国内での合法的な住居と、公的扶助に頼らず生活を維持できる安定した収入・資産があることの証明が必要とされ、親族枠の場合はさらに3年以上継続してベトナムに一時滞在していることが条件になります。永住の資格自体に期限はありませんが、カードは10年ごとに更新の手続きが必要です。
しかし実務上、日本人がベトナム人配偶者からの「保証」の要件を満たすと認定されるケースは非常に少なく、この条件を満たさないと判断されることがほとんどです。現地の行政書士事務所からも、PRCについては現状では取得のハードルが非常に高いという案内がなされています。帰化とPRCは審査の主体・性質が異なる別の制度のため単純に難易度を比較することはできませんが、いずれにしても日本人にとって現実的な選択肢とは言いにくいのが実情です。
● 現実的な本線はTRCの更新
一方、就労許可証や投資家ビザ、配偶者ビザ(親族枠)などを起点に取得できる一時滞在カード(TRC)は、資格区分ごとに定められた上限(おおむね2年・3年・5年・10年のいずれか)で更新を重ねていく制度です。たとえば投資家向けのDT1ビザ(出資額1,000億VND以上等)を保有していれば最長10年のTRCが、DT2(500億〜1,000億VND)なら最長5年、DT3(30億〜500億VND)なら最長3年のTRCが取得可能です。
就労許可証を起点とするTRCは労働許可証の有効期間に連動するため2年程度になることが一般的です。永住権のような無期限資格ではありませんが、更新を続けることで実質的に長期滞在を継続できます。ベトナムに長く住み続けている日本人の多くは、このTRC更新という形で生活基盤を維持しているのが実情です。
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5. 帰化することで得られるメリットも押さえておく
ここまで日本国籍を失うリスクを中心に説明してきましたが、公平を期すために、帰化することで得られる実利的なメリットにも触れておきます。
まず前提として、ベトナムでは土地は「全人民の所有に属する公財産」とされており、これはベトナム国民であっても同じで、国民も土地を「所有」するのではなく「使用権」を持つにとどまります。その意味で、帰化すれば土地そのものを所有できるようになるわけではありません。
ただし、外国籍のままだと国籍を問わず一律に課される制限があります。外国人が住宅を所有できるのは商業住宅開発プロジェクトの一部に限られ、コンドミニアム(区分所有)は建物全体の30%まで、戸建て・ヴィラ等は1区画あたり250戸までといった上限が設けられており、プロジェクト対象外の既存の戸建てや土地付き住宅は実務上取得が困難です。また外国人が住宅を所有できる期間には上限があり、期限到来時には更新の手続きが必要です。帰化すればベトナム国民と同じ扱いになるため、こうした「外国人向けの追加制限」からは外れます。とはいえ、都市計画や用途地域、登記手続きなど、国民にも共通する制限は当然残るため、「帰化すれば不動産取得が自由自在になる」という理解は過大です。
飲食業との関係で言えば、外資企業(外国投資家が定款資本の一定割合以上を持つ会社)による多店舗展開では、店舗ごとの投資登録証明書(IRC)に加え、業態によっては小売ライセンスや経済需要審査(ENT)など複数の許認可が絡み、内資企業(ベトナム国籍者のみで構成される会社)と比べて手続きの負担が重くなる傾向があります。帰化して自身がベトナム国籍者となり、内資企業として新たに会社を設立すれば、こうした外資特有の手続きの一部を回避できます。ただし、既存の外資企業をそのまま保有している場合、代表者個人が帰化しただけで会社が自動的に内資扱いになるわけではなく、出資構成や持分の見直しが別途必要になる点には注意が必要です。
6. 進出目的なら帰化は必須ではないという結論
とはいえ、この記事を読んでいる方の多くは、まず「飲食店をベトナムに進出させたい」という事業目的をお持ちのはずです。
事業を行うために国籍を変える必要はありません。法人設立、投資家ビザの取得、労働許可証の取得といった在留資格の枠組みだけで、経営者としてベトナムに長期滞在し、事業を運営することは十分に可能です。不動産についても、外資規制の範囲内でコンドミニアムの所有やデベロッパー開発物件の活用、あるいは法人による賃貸借契約という形で対応している日本人オーナーが大半です。実務上は所有権よりも賃貸借契約・用途適合・消防や食品安全の許認可の方が優先度の高い論点になります。帰化や永住カードは、あくまで「その先」の選択肢として、事業が軌道に乗り、多店舗展開や不動産取得のメリットが具体的に見えてきた段階でじっくり検討すべきテーマだと言えます。
なお、実際の店舗展開にあたっては、国籍の問題以上に、投資登録証明書(IRC)・企業登録証明書(ERC)の取得、食品安全・消防・環境などの許認可、酒類販売や看板設置のルール、外国人スタッフの労働許可証といった実務面の対応が重要になります。この点は別記事で詳しく解説します。
7. よくある質問(Q&A)
Q. ベトナム人と結婚すれば自動的にベトナム国籍がもらえますか?
A. 自動的には付与されません。結婚は帰化申請時の要件緩和(言語・居住・生計要件の免除)の対象にはなりますが、帰化には別途申請と国家主席レベルまで含む審査プロセスが必要です。
Q. 帰化しないと、ベトナムで不動産を所有したり長く働いたりできませんか?
A. 働くことは可能です。TRCや各種ビザを更新しながら、外国籍のままベトナムで働き、事業を運営している日本人は数多くいます。不動産についても、ベトナム国民自体が土地そのものを所有できず「使用権」を持つにとどまる点は国籍を問わず共通です。ただし外国人にはコンドミニアムの所有割合(30%まで)や住宅所有期間の上限、路面の一戸建て物件が原則購入できないといった追加の制限があります。
Q. 一度ベトナム国籍を取得しても、やっぱり日本国籍に戻したい場合はどうすればいいですか?
A. あらためて帰化許可申請を行う必要がありますが、かつて日本国籍を持っていた方は「簡易帰化」(国籍法8条3号)の対象となり、通常必要な5年以上の居住実績を待たずに申請できます。ただし素行要件などの審査は残るため、自動的な復活ではない点に留意してください。
8. まとめ:帰化を検討する前に押さえておきたい5つのポイント
- 要件緩和の歴史:ベトナムの帰化制度における要件緩和・二重国籍容認の枠組みは2008年の国籍法制定時から存在しており、2025年改正はその対象拡大と手続き整備が中心
- 日本国籍の喪失:国籍法11条1項により、自己の意思で外国籍を取得した日本人は例外なく自動的に日本国籍を喪失する(出生時の二重国籍のような選択制度はこのケースには適用されない)
- 二重国籍の誤解:ベトナム側が二重国籍を許可しても、日本側の扱いは変わらない
- 現実的な選択肢:永住カード(PRC)は取得のハードルが非常に高く、現実的な長期滞在手段は投資家区分等に応じたTRCの更新(最長10年まで選択肢がある)
- 進出目的での判断:飲食店の進出・経営という目的であれば帰化は必須ではないが、外国人個人としての住宅所有制限が外れたり、新規に内資企業を設立しやすくなったりする面はあるため(既存の外資法人がそのまま内資化するわけではない点に注意)、事業の発展段階に応じて検討する価値がある
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

