ベトナムに駐在するためのルールと労働許可証(ワークパーミット)取得方法 – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.05.26
ベトナムに駐在するためのルールと労働許可証(ワークパーミット)取得方法
フードコネクションベトナムの林です。
「ベトナムに駐在するって、何から手続きすればいいの?」
「ビザと労働許可証、何が違うの?」
ベトナムへの進出を検討している飲食業オーナーの方から、こうした相談をよくいただきます。
ベトナムで外国人が就労するには、就労ビザ・労働許可証という2つの証明書が原則として必要です。加えて長期滞在を安定させるために一時在留許可証(TRC)を取得するのが実務上の標準です。「労働許可証を取ってからビザを申請する」という順序を知らずに現地入りして、合法的に就労できない期間が続くケースが実際に起きています。
この記事では、2025年8月施行の最新政令(219号)をベースに、日本人がベトナムで駐在・就労するための基本ルールと手続きの全体像を解説します。本記事は現地法人を設立済みまたは設立予定で、日本から人材を派遣するケースを主な対象としています。
目次
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1. まず知っておきたい「ビザ・労働許可証・TRC」の違い
ベトナムで外国人が就労する際、混同されやすい3つの証明書があります。
| 証明書 | 目的 | 発給機関 | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 就労ビザ(LD1/LD2) | ベトナムへの入国・滞在許可 | 出入国管理局 | 最長2年(実務上は1年以下が多い) |
| 労働許可証(WP) | ベトナム国内での就労許可 | 省人民委員会 | 最長2年(更新1回まで) |
| 一時在留許可証(TRC) | 長期滞在の安定的な許可 | 出入国管理局 | LD1/LD2紐づきは最長2年(一部の投資家ビザ等で最長10年の場合あり) |
● 申請の順序(重要)
① 商用ビザ(DN)またはe-VISAで入国 → ② 現地法人が労働許可証(WP)を申請・取得 → ③ 就労ビザ(LD1/LD2)を取得 → ④ 一時在留許可証(TRC)を取得(希望する場合)
就労ビザは労働許可証を取得してから申請できます。逆順では申請できないため、到着後に順序を誤ると合法的に就労できない期間が生じます。
● 入国後のビザ変更について
● 日本人のビザ免除について
日本人はベトナムへ45日以内ならビザなしで入国可能です(2023年8月〜2028年3月まで継続)。ただしこれは滞在の許可であり、就労の許可ではありません。商談・視察・会議への参加は許容されますが、調理指導・スタッフ教育・現場オペレーション支援など飲食業に特有の活動は就労と見なされる可能性があります。短期であっても就労活動を行う場合は、事前に必要な手続きを確認してください。
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2. 労働許可証が必要なケース・不要なケース
● 原則:就労にはWPが必要
外国人がベトナムで就労する場合は、原則として労働許可証(WP)が必要です。ただし一定の条件を満たす場合は免除対象となります。
● 免除対象の主な例
- 暦年(1/1〜12/31)で累計90日未満の就労(活動内容が就労と見なされる場合は別途確認が必要)
- 出資額30億ドン以上の有限責任会社の出資者
- 株式会社の取締役会会長・取締役(出資要件あり)
- ODAプロジェクトに従事する専門家・技術者
- ベトナム人と婚姻し居住している外国人
- 優先分野(金融・科学・技術・AI・デジタル変革等)に従事する専門家(所管省庁の確認が必要)
● 免除でも手続きは必要
免除対象に該当する場合でも「認定申請」または「当局への報告」のいずれかが必要です。免除認定申請の受付期間は就労予定日の60日前〜10日前です。
| 手続き | 主な対象 | 期限 |
|---|---|---|
| 免除認定申請 | 企業内異動者など多くのケース | 就業開始の60日前〜10日前 |
| 報告のみ | ベトナム人配偶者がいる外国人など | 就業開始の3日前まで |
3. 4つの職種カテゴリと申請条件
労働許可証の申請には、以下の4つの職種カテゴリのいずれかで申請します。2025年8月施行の政令219号で要件が大幅に緩和・再整理されました。
| カテゴリ | 定義 | 主な要件 |
|---|---|---|
| ① 管理者(Manager) | 企業法の規定に基づき企業を管理する者、または機関・組織の長およびその副職にある者 | 法令上、経験年数の要件は定められていません。職務権限を証明する書類(任命書・委任状等)が審査で重視されます |
| ② 経営責任者(Executive) 政令219号で明確化 |
機関・組織・企業の部門を直接管理・運営する責任者で、その分野での権限を委譲されている者 | 関連分野で3年以上の実務経験(政令219号で明文化) |
| ③ 専門家(Expert) | 関連分野の専門知識・学位を有する者 | 学士以上+2年以上の実務経験(旧:3年以上から緩和) 優先分野(AI・DX等)は1年以上でも可 |
| ④ 技術者(Technician) | 専門技術を有する者(大卒不要) | 訓練1年以上+実務2年以上(旧:3年以上から緩和) または実務3年以上(訓練なし) |
● 飲食業の料理人・料理長の場合
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4. 申請の流れと必要書類
● 申請できる期間(重要)
政令219号から、申請の受付期間が明確化されました。就労予定日の60日前〜10日前の間のみ受付。早すぎても遅すぎても申請できないため、就労開始日から逆算してスケジュール管理が必要です。また着任前から申請を開始するのが実務上の標準です。
● 必要書類一覧
| 書類 | 有効期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 申請書(様式第03号) | ― | 雇用主が作成 |
| 健康診断書 | 発行から12か月以内 | ベトナム指定医療機関が確実。日本発行の場合は相互承認協定の有無を確認の上、翻訳・認証が必要 |
| 犯罪経歴証明書 | 発行から6か月以内 | 外国またはベトナム発行のいずれかが必要。日本分は本人申請のみ・取得に2〜3週間 |
| パスポートコピー(認証済み) | ― | 労働許可証の有効期間はパスポートの残存期間を超えることができません |
| 学歴証明書 | ― | 専門家・技術者枠の場合。翻訳・領事認証が必要 |
| 職歴証明書(在職証明) | ― | 翻訳・領事認証が必要。会社発行が必要(自筆は不可) |
| 顔写真2枚 | ― | 4×6cm、白背景、正面、無帽、眼鏡なし |
| 就労形態証明書 | ― | 任命書(社内異動)または労働契約書(現地採用)等 |
5. 期間・費用の目安と実務のリアル
● 全体スケジュールの目安
| フェーズ | 法令上の期間 | 実務上の期間 |
|---|---|---|
| 書類準備(日本側) | ― | 1〜2か月(犯罪経歴証明書・認証含む) |
| 採用広告の掲載(労働契約の場合) | 5営業日以上前まで | 同左 |
| WP申請〜発給 | 受理後10営業日以内 | 1か月程度かかるケースも(移行期混乱) |
| 就労ビザ申請 | ― | 最短1日〜数日 |
| TRC申請〜取得 | ― | 2〜4週間(パスポート預けが発生) |
| 合計 | ― | 着任まで3〜4か月を目安に |
● 労働許可証の有効期間と更新
- 有効期間:最長2年(パスポートの残存期間による制限あり)
- 更新は1回のみ、最長2年(実質最長4年)
- 4年経過後は新規申請が必要。ただし同一雇用主・同一職位・同一分野での継続の場合、既存WPの写しを経験証明として活用できる書類軽減の余地があります
- 更新申請ウィンドウ:有効期限の10日前〜45日前(このウィンドウ外は受付不可)
6. 2025年の重要改正ポイント
2025年はベトナムの就労関連制度が大きく変わった年です。3つの改正を押さえておく必要があります。
● ① 政令219号(2025年8月7日施行):労働許可証制度の全面改正
| 項目 | 旧制度 | 新制度(政令219号) |
|---|---|---|
| 申請手続き | 3ステップ | 労働契約型は2ステップに統合。社内異動等は1ステップ |
| 発給権限 | MOLISA・省労働局 | 省人民委員会に一元化 |
| 職種カテゴリ | 管理者・専門家・技術者の3区分(定義が不明確) | 管理者・経営責任者(明確化)・専門家・技術者の4区分 |
| 専門家の経験年数 | 学士+3年以上 | 学士+2年以上(優先分野は1年以上) |
| 技術者の経験年数 | 訓練1年+3年以上 | 訓練1年+2年以上、または訓練なし3年以上 |
| 短期免除 | 30日未満かつ年間3回まで | 暦年累計90日未満 |
| 複数省での勤務 | 省ごとに申請が必要 | 本社所在地の省人民委員会に一本化(勤務地への事前通知が必要) |
● ② 改正社会保険法(2025年7月1日施行):外国人の加入義務が拡大
12か月以上の有期労働契約を結ぶ外国人は、原則として社会保険への強制加入が必要になりました。外国人に適用される強制保険の種別は以下の通りです(根拠法はそれぞれ異なります)。
- 社会保険:2025年7月施行の改正社会保険法(41/2024/QH15)により対象拡大
- 健康保険:健康保険法に基づき義務化(12か月以上の有期労働契約が対象)
- 失業保険:外国人は対象外
● ③ VNeID(電子身分証)の外国人への適用開始(2025年7月〜)
VNeIDとはベトナム公安省が運営する電子身分証明システムです。2025年7月からTRCまたはPRCを保有しオンライン行政手続きを行う外国人に登録が必要になりました。
・個人VNeID(レベル2):TRC保有者が対象。入管窓口への本人出頭で登録(代理申請不可)
・法人e-ID:企業がオンラインで行政手続きをするために必要。法定代表者の個人VNeIDと紐づけて申請
外資系企業の法定代表者は法人e-IDの取得が事実上必須です。税務申告・各種行政手続きのオンライン化が進んでおり、対応しないと手続きが滞るリスクがあります(現時点で罰則は明確化されていませんが実務上の影響が大きい)。個人VNeID登録には、実務上、本人名義のベトナム登録携帯番号が求められるケースが多いため、会社名義SIMの場合は事前に当局に確認してください。
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7. 帯同家族・税務・社会保険の注意点
● 帯同家族のビザ(TTビザ)
配偶者・18歳未満の子どもをベトナムに帯同する場合は、TTビザ(家族帯同ビザ)が必要です。
- 帯同ビザでの就労は認められていません。配偶者がベトナムで就労する場合は別途WPの取得が必要です
- 実務上、駐在員本人のTRC取得後に家族のTTビザ申請を行うケースが多いですが、本人のLDビザ段階で手続きを検討するケースもあります
- 申請から発給まで約2週間かかり、その間は家族のパスポートが手元にありません。本人のTRC申請と時期が重ならないよう計画が必要です
● 個人所得税(PIT)
ベトナムで就労した場合、ベトナム源泉所得に対して納税義務が生じ得ます。居住者と非居住者で課税のしくみが異なります。
| 区分 | 判定基準 | 税率 |
|---|---|---|
| 居住者 | ①暦年183日以上滞在、②初入国から12か月以内に183日以上滞在、③課税年度内に183日以上の賃貸契約 | 5〜35%の累進課税(全世界所得) |
| 非居住者 | 上記以外 | 一律20%(ベトナム源泉所得のみ) |
①暦年または会計年度を通じて183日以下の滞在
②報酬がベトナム居住者である雇用者から支払われないこと
③報酬がベトナム国内の恒久的施設(PE)または固定施設によって負担されないこと
飲食店の開業支援では現地法人や店舗が費用を負担するケースが多く、②③を満たさない可能性があります。現地の会計事務所への確認が必須です。
● 違反した場合の罰則
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無許可就労(本人) | 1,500〜2,500万VND(約9〜15万円)の罰金+国外追放 |
| 無許可就労(雇用企業) | 雇用人数に応じて3,000万〜7,500万VND(法人は個人事業主向け罰金の2倍になり得る) |
| 書類不備・報告漏れ | 軽微な行政違反として罰則対象 |
| 退職・帰国時の返却義務違反 | 退職・帰国によりWPが失効した場合、失効から15日以内に会社が発給機関(省人民委員会または委任機関)へ返却・取消手続きをする義務があります |
8. よくある質問(Q&A)
Q. 料理長を派遣したいが、大学を出ていない。労働許可証は取れないの?
A. 大卒は必須ではありません。技術者枠であれば「専門訓練1年以上+実務2年以上」または「実務3年以上」で申請できます。ただし証明書類の準備と予定職務との関連性の証明が重要です。カテゴリ選択を誤ると否認リスクがあるため、専門家に相談の上で申請することを推奨します。
Q. 申請から就労開始まで何か月かかる?
A. 書類準備から着任まで最低でも3〜4か月を見込んでください。犯罪経歴証明書(本人申請で2〜3週間)・領事認証の工程を早めに開始することが重要です。
Q. 社内異動で派遣するので社会保険は免除と聞いたが?
A. 社内異動者は原則として社会保険免除の対象ですが、①親会社からの直接派遣(孫会社等への出向は原則として対象外)②ベトナム就労直前まで12か月以上継続して親会社に在籍③親会社とベトナム法人の直接資本関係④労働契約を締結しないこと、の条件をすべて満たす必要があります。また労働許可証に「社内異動」と明記が必要です。政令219号施行直後のため実務は未確定な部分もあり、必ず専門家に確認してください。
Q. ビザなしで入国して、現地で就労ビザに切り替えられる?
A. 多くのケースで一度出国する必要があります。ただし同一の雇用主を通じた商用ビザ(DN)での入国者がWP取得後に国内で就労ビザを発給してもらえる例外もあります。入国ビザの種別ごとに扱いが異なるため、事前に専門家に確認することを強く推奨します。
Q. 転職したら労働許可証はどうなる?
A. 会社・職位の変更が生じた場合は再申請が必要です。ただし取得済みのWPを経験証明として代用できるため、初回より手続きが軽減される場合があります。
Q. 複数の都市に店舗を出す場合、都市ごとに申請が必要?
A. 政令219号から、同一企業内で複数省・都市での勤務が可能になりました。申請は本社所在地の省人民委員会に一本化されます。ただし勤務地・期間・就労内容を含む事前通知が勤務地の省人民委員会に対して必要です。
9. まとめ
● 押さえておきたい7つのポイント
- WP取得→就労ビザ→TRCの順。ビザ免除入国は「就労の許可」ではなく「滞在の許可」。飲食業の現場活動は就労性を問われる可能性あり
- 着任3〜4か月前から書類準備を開始する。書類認証の工程が長い
- 大卒は必須ではないが、WPは「誰でも取れる」わけではない。カテゴリ選択と証明書類の準備が重要
- 2025年7月から社会保険加入義務が拡大。12か月以上の契約は原則加入必須。日本との協定は未締結で二重払いリスクあり
- 政令219号(2025年8月)で手続きが簡素化。ただし移行期の混乱で遅延の報告あり。余裕あるスケジューリングを
- 法定代表者は法人e-ID(VNeID紐づけ)の取得が事実上必須。TRC取得後に入管窓口で個人VNeIDを申請
- 家族の帯同はTRC取得後が多い。帯同ビザでの就労は不可。申請中は家族のパスポートも手元にない
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▽この記事の共同監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

