フードコネクションベトナムディレクターの親盛です。現在、ベトナムのホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告関連のディレクションや海外進出支援業務に携わっています。
ハノイ、ホーチミン、そしてダナン、ベトナムの主要都市で日系飲食店を経営する中で、様々な要因から「閉店」や「撤退」を検討されているオーナー様のご相談をお聞きする機会があります。
経営において、「攻めの出店」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「引き際の戦略(撤退戦略)」です。しかし、ベトナム独特の商習慣を前に、以下のような不安を抱えていませんか?
「退去時に高額な原状回復費用(スケルトン戻し)を請求されたらどうしよう」
「高値で投資した日本製の厨房機器や内装が、二束三文で買い叩かれないか」
「大家とのデポジット(保証金)返還トラブルを避けたい」
知識がないまま現地の業者や大家と個人で交渉を進めてしまうと、数百万円規模の大きな損失を被るリスクがあります。本記事では、日本国内で飲食店専門の店舗売却支援「ミセウリ」を手掛けてきた株式会社フードコネクションのノウハウを持つフードコネクションベトナムが、ベトナムにおける賢い店舗撤退・売却のノウハウを徹底解説します。
【10秒でわかる】ベトナム飲食店の閉店・撤退サマリー
- よくある落とし穴:「店舗の退去(3〜6ヶ月)」と「法人の清算(1〜2年)」は別物。会社を放置すると多額のペナルティリスクあり。
- コスト削減の鍵:スケルトン解体を避け、「居抜き売却(造作譲渡)」で手元に現金を残す。
- 売り方のコツ:一般公募ではなく、出店先を探している「FC本部・新規開業者」へ非公開で直接マッチングさせる。
- 結論:大家へ退去を伝える前に、まずは水面下で買い手を探すのが最も損をしない手順。
「まだ大家には話していないけれど、うちの店はいくらで売れる?」
「撤退のベストなタイミングは?」
と迷ったら、不利な状況になる前にまずは事前の無料査定・診断を。
それでは早速本編に進みます。
目次
- 1. 閉店の2つの意味:「店舗の退去」と「法人の清算」
- 2. 撤退のタイミング:こんな兆候が出たら閉店の検討を
- 3. スケジュールの全体像:「店舗の退去」と「法人の清算」の違い
- 4. ベトナム主要3都市のリアル:店舗撤退の現状と落とし穴
- 5. 閉店・撤退のコスト:費用の全体像と手元に残る資金
- 6. 撤退コストを劇変させる一手:「居抜き売却(造作譲渡)」とは?
- 7. 居抜き売却の買い手はどう探す?:「FC本部・新規開業者」への非公開マッチング
- 8. 居抜きがダメでも諦めない!:厨房機器・資産の最高値売却ポイント
- 9. 見落とすと危険:「法人の清算」も忘れずに
- 10. 従業員対応と退職金:円満な労務終了のために
- 11. 失敗しないため:「ベトナム店舗撤退スケジュール」
- 12. よくある質問(FAQ)
- 結論:ベトナムでの閉店・撤退を決めたら、まずは「フードコネクションベトナム」へご相談ください
1. 閉店の2つの意味:「店舗の退去」と「法人の清算」
ベトナムでの飲食店の「閉店」を検討し始めると、多くのオーナー様は「まず何から手をつけるべきか」で立ち止まります。実はこの迷いの原因は、閉店には性質の異なる2つの手続きが混在しているためです。
● ① 店舗を畳む(物件・資産の整理)
今借りている物件の賃貸借契約を解約し、内装や厨房機器といった資産を処分・売却することです。多くのオーナー様が「閉店」と聞いてまずイメージするのはこちらでしょう。
● ② 法人の清算(会社の解散・清算)
ベトナムで会社を設立して営業している場合、店舗を退去しただけでは会社そのものは法律上「存続」したままです。税務局への届出や税務調査、労働局への手続きなどを経て、正式に会社を解散・清算するまでが、法律上の「閉店」の完了となります。
この2つを混同したまま①だけで満足してしまうと、「店は無事に畳めたのに、数ヶ月後、あるいは数年後に会社の税務未処理を指摘され、追徴課税やペナルティを受けた」というケースにつながりかねません。特にベトナムでは、会社を放置していても自動的に消滅することはなく、責任だけが残り続けます。
本記事では、まず①の「店舗・資産をいかに損なく整理するか」を中心に、後半で②の「法人の清算」についても解説していきます。両方を視野に入れておくことが、後悔のない撤退につながります。
2. 撤退のタイミング:こんな兆候が出たら閉店の検討を
「まだ決断はできていないけれど、そろそろかもしれない」というオーナー様も少なくないはずです。閉店を急かすつもりはありませんが、以下のような兆候が重なっている場合は、早めに撤退の選択肢も含めて検討を始めることをおすすめします。判断が早いほど、後述する「損をしない畳み方」の選択肢も広がるためです。
- 看板メニューの売上が下がり続けている:一時的な落ち込みではなく、数ヶ月単位で回復が見られない
- 家賃・人件費の高騰で利益が圧迫されている:レタントン通りなど人気エリアでは、この数年で家賃が大きく上昇したケースも珍しくありません
- 競合の増加で客足が明らかに分散している:同業態の新規出店が相次ぎ、既存客の奪い合いが起きている
- 運転資金がすでに目減りしており、追加融資も難しい:金利の高い借入に頼らざるを得ない状態
- 経営者自身が心身ともに限界を感じている:無理な状態での続行は、撤退時の判断力にも影響します
これらに複数当てはまる場合、「もう少し粘れば」と先延ばしにするほど、後述する物件の解約通知期限や、法人清算にかかる時間的な余裕が失われていきます。次章では、実際に閉店を決めた場合、店舗と会社それぞれにどれくらいの期間がかかるのかを具体的に見ていきましょう。
3. スケジュールの全体像:「店舗の退去」と「法人の清算」の違い
閉店を決意すると、多くのオーナー様は「早く終わらせたい」という気持ちから、目の前の店舗対応にばかり意識が向きがちです。しかし、ここで全体のスケジュール感を先に押さえておかないと、思わぬところでつまずくことになります。結論からお伝えすると、「店舗の退去」と「法人の清算」では、かかる時間の桁が違います。
店舗の退去:おおよそ3〜6ヶ月 賃貸借契約書に定められた解約予告期間(一般的に3ヶ月前〜6ヶ月前)に沿って大家に通知し、造作譲渡や原状回復を経て引き渡しを終えるまでが目安です。後述する居抜き売却がうまく進めば、この期間はさらに短縮できる可能性もあります。
法人の清算:最低でも1年、長ければ数年単位 一方、会社を設立して営業している場合の「法人の清算」は、法令上の建前としては解散決議から6ヶ月以内に完了させることになっていますが、実務上はそれより大幅に長引くケースがほとんどです。理由は明確で、清算手続きの過程で必ず発生する税務調査です。これまでの申告内容すべてが精査対象となるため、当局の対応スピードや指摘事項の有無によって、清算完了までの期間が大きく変動します。最低でも1年、場合によっては2年以上かかることも珍しくありません。
つまり、「店舗はもう引き渡し終わったのに、会社はまだ清算中」という状態が、1年、2年と続くのが普通だということです。この時間差を知らずにいると、「もう店は畳んだのだから終わったはず」と気を抜いてしまい、後になって税務局からの連絡に慌てることになりかねません。
以下、両者の違いを整理します。
| 店舗の退去 | 法人の清算 | |
|---|---|---|
| 主な相手 | 大家・物件管理会社 | 税務局・労働局・計画投資局など |
| 目安期間 | 3〜6ヶ月 | 1年〜2年以上 |
| 最大の関門 | 原状回復・デポジット交渉 | 税務調査 |
| 終了のサイン | 物件の引き渡し完了 | 企業登録証明書(ERC)・投資登録証明書(IRC)の抹消 |
この記事では、次章以降でまず「店舗の退去」を賢く進める方法(居抜き売却や厨房機器の売却)を詳しく解説し、その後で「法人の清算」で見落としがちなポイントを解説していきます。両方の時間軸を頭に入れたうえで、逆算しながら準備を進めていただければと思います。
4. ベトナム主要3都市のリアル:店舗撤退の現状と落とし穴
ベトナムはエリアによって市場の特性や、大家・現地の買取業者の傾向が大きく異なります。まずは各都市でよくある撤退の課題と、日系オーナーが陥りがちな落とし穴を見ていきましょう。
● 【ハノイ(北部)】保守的・強気な大家とのデポジット交渉
ハノイの不動産オーナーは比較的保守的で、契約遵守に厳しい傾向があります。退去時のデポジット(保証金)返還トラブルや、「何がなんでも完全にスケルトン状態に戻せ」という厳格な原状回復の要求で揉めるケースが少なくありません。現地の法律や商習慣に疎い外国人と見なされると、不当な解体費用を上乗せされるリスクもあります。
● 【ホーチミン(南部)】ローカル業者による厨房機器の激しい買い叩き
飲食店の出退店スピードが東南アジア屈指の速さである商業都市・ホーチミン。それゆえに現地のリサイクル業者(スクラップ業者)も無数に存在します。しかし、彼らは日本製の高性能な厨房機器(ホシザキ、パナソニック、マルゼンなど)の本当の価値を理解していません。「ただのステンレスの塊」として重量単位、あるいは二束三文のパッケージ価格で格安で買い叩かれてしまうケースが後を絶ちません。
● 【ダナン(中部)】観光エリア特有の「次の借り手」の見つけにくさ
観光需要やリゾート需要に左右されやすいダナンでは、ハノイやホーチミンに比べて「居抜きの買い手」を自力で見つけるのが非常に困難です。買い手が見つからないまま賃貸契約の満了が近づくと、結局は高い解体費用を現地業者に払って撤退するしかなくなってしまいます。
このように、都市によって「大家との交渉が壁になるのか」「買取業者の相場が壁になるのか」「そもそも買い手が見つからないことが壁になるのか」と、つまずくポイントが異なります。次章では、こうした都市ごとの課題を乗り越えるために、どの都市であっても共通して有効な「損をしない畳み方」の考え方を解説していきます。
5. 閉店・撤退のコスト:費用の全体像と手元に残る資金
「閉店すればお金がかからなくなる」と思われがちですが、実際には閉店そのものにもまとまった費用がかかります。ここを見誤ると、資金繰りが厳しい状態で撤退を決めたにもかかわらず、想定外の出費でさらに苦しむことになりかねません。まずは費用の全体像を項目ごとに整理しておきましょう。
① 退去までの家賃 営業を停止しても、賃貸借契約書に定められた解約予告期間(一般的に3〜6ヶ月)分の家賃は支払い義務が残ります。「もう営業していないから払わなくていい」ということにはならない点に注意が必要です。
② 保証金(デポジット)の償却 入居時に預けた保証金は退去時に返還されるのが原則ですが、契約書に償却の取り決めがある場合、家賃の1〜2ヶ月分程度が償却費として差し引かれるのが一般的です。滞納や原状回復の不備があれば、さらに減額・返還拒否のリスクも高まります。
③ 原状回復費 契約でスケルトン戻し(内装・設備をすべて撤去し、入居前の状態に戻すこと)が義務付けられている場合、坪単価で数万円〜10万円程度の工事費がかかることもあります。路面店か裏路地の物件か、何階に位置するかによっても金額は変動します。
④ リース物件の中途解約違約金 厨房機器や空調をリース契約で導入している場合、契約途中での解約には違約金が発生することがあります。残りのリース期間や違約金の有無は、契約書を早めに確認しておく必要があります。
⑤ 従業員への退職手当 勤続1年以上の従業員には、勤務期間1年につき半月分の賃金相当の退職手当を支払う義務があります。加えて、契約形態に応じた解雇予告期間(無期限契約なら45日前、有期契約なら30日前が目安)を守らずに解雇すると、別途補償が必要になるケースもあります。人数が多い店舗ほど、この項目は無視できない金額になります。
これらを踏まえると、閉店にかかる収支の考え方は、シンプルに整理すると次のようになります。
こう並べてみると、「保証金がそのまま戻ってくる」という前提がいかに楽観的か、実感いただけるのではないでしょうか。特に原状回復費とリース違約金は、条件次第で大きく変動する項目です。
だからこそ、次章で解説する「居抜き売却」が重要な意味を持ちます。原状回復費を実質ゼロにでき、保証金も満額に近い形で返還されやすくなるこの方法は、上記の計算式そのものを大きくプラスに転じさせる、数少ない現実的な選択肢です。
6. 撤退コストを劇変させる一手:「居抜き売却(造作譲渡)」とは?
ベトナムのどのエリアであっても、最も撤退コストを抑え、むしろ手元に現金を残せる方法が「居抜き売却(造作譲渡)」です。居抜き売却とは、内装や空調、厨房機器、ダクトやグリストラップといった店舗インフラをそのままの状態で次のテナント(後継者)に譲渡する手法です。
自力で解体して退去する場合と、居抜きで売却できた場合では、収支に以下のような決定的な差が生まれます。
| 項目 | 自力で解体・撤退する場合 | 居抜き売却する場合 |
|---|---|---|
| 原状回復費用 | 数十万〜数百万円の赤字 | 次のテナントが引き継ぐため0円 |
| 厨房機器・内装 | スクラップ同然で格安処分 | 資産価値として現金化(黒字) |
| デポジット(保証金) | 難癖をつけられ没収・減額のリスク | 次のテナントが決まるため満額返還されやすい |
| トータル収支 | 大赤字での撤退 | 手元に原資(現金)を残して撤退 |
前章で示した「閉店で手元に残る資金=保証金の返還額-(家賃+償却費+原状回復費+リース違約金+退職手当)」という計算式に当てはめると、居抜き売却は原状回復費をほぼゼロにし、保証金の返還額も最大化できるため、この式全体を大きくプラス方向に動かせる、数少ない現実的な選択肢だとお分かりいただけるはずです。
このように、次にその場所で飲食店を始めたいオーナー(日系・ローカル問わず)を見つけることができれば、撤退は「コスト」ではなく「資産の回収」に変わるのです。では、その「次のオーナー」はどうやって見つければよいのでしょうか。
7. 居抜き売却の買い手はどう探す?:「FC本部・新規開業者」への非公開マッチング
一般的な店舗仲介業者やリサイクル業者は、「買い手候補を一般公募する」か「機器をバラバラにして買い取る」ことしかできません。そのため、買い手が見つかるまでに時間がかかり、結局家賃の支払い期限が来てタイムアウトになってしまうケースが多々あります。
つまり本当に必要なのは、公募を待つのではなく、「すでに出店先を探している買い手」に直接アプローチできるルートです。この点で、フードコネクションベトナムは他とは異なるアプローチを取っています。日本国内で店舗売却支援を手掛けてきた本社(株式会社フードコネクション)のノウハウと、現地パートナーであるグローカルコネクションが持つ飲食店ネットワークを掛け合わせ、「ベトナム国内外の有力なFC(フランチャイズ)本部」や「これから飲食店を開きたい投資家・オーナー」とつながれる体制を構築しています。
● ①出店スピードと資金力がある
有力なFC本部やその加盟希望者は、常に「一等地」や「飲食店の設備が整った物件」を探しています。条件さえ合えば、個人の開業希望者よりも圧倒的に早いスピードで決済し、店舗を引き取ってくれます。
● ②居抜き物件を喉から手が出るほど欲している
ベトナム進出、飲食店開業者において、出店初期費用を抑えることは投資回収期間を短縮するための鉄則です。ハノイ・ホーチミンの一等地やダナンの観光エリアで、すでにダクトや電気容量が確保されている物件は、彼らにとって宝の山です。
● ③大家への信頼度が高く、承諾を得やすい
ベトナムの大家は「次のテナントが家賃を滞納しないか」を非常に気にします。フードコネクションベトナムが仲介する有力なFCブランドや法人であれば大家も安心して契約を切り替えられるため、デポジットの返還や契約譲渡の交渉が非常にスムーズに進みます。
オーナー様が「お店を閉めたい」と考えた瞬間、弊社のネットワークを通じて、裏側で「そのエリア、その規模の物件でFC出店したい本部・加盟希望者」へのマッチングが非公開で即座に開始されます。
8. 居抜きがダメでも諦めない!:厨房機器・資産の最高値売却ポイント
ここまでご紹介したFC本部・新規開業希望者とのマッチングは強力な選択肢ですが、100%のケースで実現するとは限りません。物件の契約内容や大家の意向により、どうしても居抜きでの丸ごと譲渡が難しい場合もあります。その場合でも、厨房機器や店舗備品をバラで売却(資産処分)することで、少しでも多くの現金を回収することが可能です。その際、以下の点に注意することで買取額を劇的にアップさせられます。
● ① 日系ブランドの価値を正しく評価できるルートで売る
ベトナムのローカル飲食店の間でも、日本製の厨房機器(ホシザキの製氷機や冷蔵庫、マルゼンのフライヤーなど)は「壊れにくく高性能」として絶大な信頼と人気を誇っています。フードコネクションベトナムは、これら日系ブランドの価値を正確に査定し、それを必要としているベトナム全土の飲食店オーナーへ直接届ける業者とつながっているため、ローカル業者の数倍の高値で売却サポートすることが可能です。
● ② バラ売りではなく「一括査定・一括買取」を利用する
製氷機はA業者、エアコンはB業者、調理器具はC業者……と個別に交渉すると、業者ごとに運搬費や人件費が差し引かれ、手元に残るお金が減ってしまいます。フードコネクションベトナムのパートナー企業は、店舗内の資産を丸ごと一括で査定・搬出するため、無駄なコストを極限までカットし、その分を買取価格に上乗せしてオーナー様に還元します。
● ③ メンテナンス履歴や取扱説明書を揃えておく
ベトナムでは、定期的にメンテナンスされていた機器や、状態の良いインポート製品は中古市場で非常に高く評価されます。清掃状態を良くしておくだけでも、査定額にポジティブな影響を与えます。
ここまでが「店舗・資産をいかに損なく整理するか」というパートの締めくくりです。物件と資産の整理にめどが立ったら、次はもう一つの重要なタスク、「法人としての正式な手仕舞い」に取りかかる必要があります。次章から、多くのオーナー様が見落としがちな、しかし放置すると後々大きなリスクになりうるこのポイントを解説していきます。
9. 見落とすと危険:「法人の清算」も忘れずに
物件の引き渡しが終わり、厨房機器も無事に売却できると、「これで閉店は完了」と一区切りついた気持ちになるかもしれません。しかし、ベトナムで法人を設立して営業していた場合、店舗を退去しただけでは、会社そのものは法律上「存続」したままです。この章では、多くのオーナー様が見落としがちな「法人の清算」について解説します。
● 造作譲渡は「物件の整理」であって「法人の消滅」ではない
居抜き売却や厨房機器の売却は、あくまで店舗という「物件・資産」レベルの整理にすぎません。会社を設立して事業を行っていた場合、その法人格自体は、正式な解散・清算の手続きを経て初めて消滅します。造作譲渡だけを済ませて法人を放置してしまうと、税務上の申告義務や納税義務だけが残り続け、後になって延滞税やペナルティが発生するリスクがあります。
● 法人清算の基本的な流れ
- 解散の意思決定:社員総会・株主総会等での解散決議。二人以上社員有限責任会社では出席社員の75%以上、株式会社では出席株主の65%以上の賛成が必要です。
- 関係機関・関係者への通知:解散決議後、原則7営業日以内に計画投資局・税務局・債権者・従業員へ通知。
- 債権債務の整理:取引先との債権・債務、財務諸表の整理。
- 税務調査:清算手続き最大の関門。過去の申告内容すべてが精査対象になります。
- 清算結了・登記抹消:税務債務の清算確認後、ERC・IRCの返却・抹消をもって法人が消滅します。
このほかにも、インボイス(電子請求書)の抹消や銀行口座の閉鎖など、細かな行政手続きが複数残っています。あわせて、食品安全証明書・消防許可などのサブライセンスの返納、社印の返却、外国人スタッフがいる場合は労働許可証・レジデンスカードの返却も必要です。項目数が多く抜け漏れが起きやすいため、専門家に一括で確認してもらうのが安全です。
● 清算にかかる期間は「思ったより長い」と心得る
3章でお伝えした通り、法令上の建前では解散決議から6ヶ月以内とされていますが、実務上は税務調査の進み方次第で、最低でも1年、場合によっては2年以上かかることも珍しくありません。「店舗は畳んだのに、会社はまだ清算中」という状態がしばらく続くことを、あらかじめ理解しておくことが重要です。
● 「面倒だから」と放置するとどうなるか
清算に時間がかかると分かると、「代表者だけ帰国して、あとは現地任せにしよう」と考えたくなるかもしれません。しかし、法人を未清算のまま放置すると、税務債務が残った状態が記録上ずっと残り続けます。将来ベトナムで再び会社を設立しようとした際に支障が出たり、代表者個人の出国・入国に影響が及んだりするケースも報告されています。「閉店したつもり」で終わらせず、最後まで正式な手続きを踏み切ることが、将来の自分自身を守ることにつながります。
なお、買い手が見つかる場合は、法人自体を解散せずに出資持分(株式)を譲渡するという選択肢もあります。この場合、従業員との労働契約もそのまま引き継がれるため、清算特有の労務対応が不要になるというメリットがありますが、譲渡先を見つけること自体が難しく、過去の税務債務リスクの評価も課題になります。どちらが自社にとって現実的か、早い段階で専門家と相談しておくことをおすすめします。
法人清算を選ぶ場合、特に慎重な対応が求められるのが従業員との関係です。次章で詳しく見ていきましょう。
10. 従業員対応と退職金:円満な労務終了のために
法人の清算を進める過程で避けて通れないのが、従業員との労働契約の終了です。ベトナムでは労働者保護の色合いが強く、対応を誤ると清算手続き自体が滞る原因にもなりかねません。ここでは実務上おさえておくべきポイントを整理します。
● 解雇通知のタイミング
2019年労働法により、会社清算の場合は清算決定書に記載された清算日をもって労働契約が自動的に終了する扱いになりますが、実務上は契約形態に応じた予告期間を守って通知するのが一般的です。
- 無期限契約:45日前までに通知
- 有期契約(12〜36ヶ月):30日前までに通知
- 有期契約(12ヶ月未満):3日前までに通知
短期スタッフやアルバイトスタッフを多く雇用している飲食店では、この12ヶ月未満契約の区分を見落としがちなので注意が必要です。清算決定の発行日から7営業日以内に、対象となる労働者へ通知を行う必要がある点もあわせて押さえておきましょう。
● 退職手当の計算方法
勤続1年以上の労働者には、勤務期間1年につき半月分の賃金相当の退職手当を支払う義務があります。あわせて、未消化の有給休暇についても買い取る義務がある点に注意が必要です。従業員数の多い店舗ほど、この金額は大きくなります。5章で触れた「閉店で手元に残る資金」の計算式にも直結する項目のため、清算を決断する前の段階で、対象となる従業員数と勤続年数、残有給日数をもとに、概算を出しておくことを強くおすすめします。
● 社会保険手帳の閉鎖手続き
労働契約の解約日から30営業日以内に、社会保険手帳の閉鎖手続きも行う必要があります。この手続きが滞ると、労働局側での確認が完了せず、結果として法人清算全体のスケジュールを後ろ倒しにしてしまうことにもなりかねません。
● 丁寧な対応が、清算のスピードを左右する
ベトナムの労働法では、債務の弁済において労働者への支払いが優先される項目として位置づけられています。退職金の支払いや手続きを後回しにしたり、説明を省略したりすると、従業員側とのトラブルに発展し、それが労働局への通報や紛争につながるケースもあります。結果として、税務調査とは別のところで清算全体が長引く原因になりかねません。従業員には早い段階で丁寧に説明し、合意を得たうえで進めることが、遠回りに見えて実は一番の近道です。
このように、「店舗の退去」「法人の清算」、そして「従業員の労務対応」は、それぞれ全く異なる時間軸で動いています。これらをタイムオーバーにならずに並行して進めるためには、どう動けばよいのでしょうか。続いて、失敗しないための全体の撤退スケジュールを見ていきましょう。
11. 失敗しないため:「ベトナム店舗撤退スケジュール」
ベトナムでの撤退交渉は、時間との戦いです。大家への退去通知期間(通常、契約書に3ヶ月前〜6ヶ月前と記載されています)を過ぎてしまうと、違約金が発生したりデポジットが全額没収されたりするリスクがあります。加えてここまで見てきた通り、「店舗の退去」と「法人の清算」は進むスピードがまったく異なるため、両者を同じタイムラインで考えてしまうと、どちらかの対応が後手に回りかねません。ここでは2つの時間軸を並べて整理し、いつ・何に着手すべきかを一覧にしました。
● 店舗の退去(3〜6ヶ月)と法人の清算(1〜2年)は並行して進める
法人の清算は店舗を退去してから始めるものではなく、むしろ店舗の退去準備と同時にスタートしておくべき手続きです。特に税務調査は着手から結果が出るまで時間が読めないため、早めに動き出すほど余裕が生まれます。
| タイミング | 店舗の退去 | 法人の清算・労務 |
|---|---|---|
| 退去3ヶ月前〜(清算準備の開始) | 賃貸契約書を再確認し、通知期限や原状回復義務の範囲をチェック。フードコネクションベトナムへ事前相談し、大家に知られる前に非公開で後継のFC本部や買い手を探す | 解散の意思決定(社員総会・株主総会での決議)。決議後7営業日以内に計画投資局・税務局・従業員へ通知。従業員への解雇通知(無期限契約は45日前、有期契約は30日前が目安) |
| 退去2ヶ月前 | 後継テナント(FC加盟希望者など)とのマッチング・現地案内、または厨房機器の査定 | 取引先との債権・債務の整理、財務諸表の整理。税務局への閉鎖通知に向けた準備 |
| 退去1ヶ月前 | 後継テナント候補を伴って大家と交渉(または退去通知)。「次の入居者がいるので、解体せずこのまま引き渡したい」と交渉し、原状回復費を0円に、デポジットの満額返還を目指す | 税務調査への対応(この期間はケースにより長期化することも)。退職手当の支払い、社会保険手帳の閉鎖手続き(労働契約解約日から30営業日以内) |
| 退去日 | 造作譲渡料の受け取り、または厨房機器の搬出と買取代金の受け取り。大家からデポジットを回収して物件面は完了 | 税務調査が継続している場合、引き続き対応。並行して社印の返却、食品安全証明書・消防許可などのサブライセンス返納、(外国人スタッフがいれば)労働許可証・レジデンスカードの返却を進める |
| 退去後(数ヶ月〜1年超) | ─(物件面は完了済み) | 税務債務の清算確認後、ERC・IRCの返却・抹消申請。受理されれば正式に清算結了 |
表を見てわかる通り、物件の引き渡しが終わっても、法人の清算はその後も続いているのが実態です。「退去日」でゴールだと思い込まず、税務調査や登記抹消まで見届けて初めて、ベトナムでの閉店は完了します。
なお、居抜き売却によって物件面の対応がスムーズに進むほど、経営者自身の時間と気力を法人清算・税務調査対応に集中させることができます。その意味でも、6〜8章で解説した「損をしない畳み方」は、単に手元にお金を残すだけでなく、その後に控える長丁場の清算手続きを乗り切るための体力を温存する、という副次的な効果もあります。
12. よくある質問(FAQ)
ここでは、ベトナムで飲食店の閉店・撤退を検討されているオーナー様から、特に多く寄せられる疑問とその回答をまとめました。ご自身の状況に照らし合わせて参考にしてください。
Q. ベトナムでの閉店・清算にかかる期間はどれくらいですか?
店舗の退去だけであれば3〜6ヶ月程度が目安ですが、法人を設立して営業している場合、会社としての清算には別途、最低でも1年、場合によっては2年以上かかることがあります。特に清算過程で行われる税務調査は所要期間が読みにくく、これが全体のスケジュールを左右する最大の要因です。詳しくは3章・9章をご覧ください。
Q. 居抜き売却と法人清算、どちらを先に進めるべきですか?
どちらか一方を終えてからもう一方に着手する、という考え方は避けたほうが安全です。法人清算は着手から完了までの時間が長く読みにくいため、居抜き売却の交渉と並行して、できるだけ早い段階から解散決議や税務局への通知を進めておくことをおすすめします。11章の統合スケジュールも参考にしてください。
Q. 名義貸しで開業した店舗でも、居抜き売却はできますか?
契約上の当事者がベトナム人名義人になっているため、通常の居抜き売却の流れがそのまま使えない可能性があります。売却交渉や資産の帰属について、まず名義人との合意状況を確認したうえで進める必要があります。詳しくは1章の注意書きをご覧ください。
Q. 造作譲渡(居抜き売却)さえ終われば、閉店の手続きはすべて完了ですか?
いいえ。造作譲渡はあくまで物件・資産レベルの整理です。法人を設立して営業していた場合、会社自体は解散・清算の手続きを経るまで法律上存続したままです。これを放置すると、税務上の義務だけが残り、後から延滞税やペナルティが発生するリスクがあります。詳しくは9章をご覧ください。
Q. 従業員がいる場合、閉店・清算にあたって何を準備すればよいですか?
契約形態に応じた解雇予告(無期限契約は45日前、有期契約は30日前が目安)と、勤続1年につき半月分の賃金相当の退職手当の支払いが必要です。あわせて、労働契約解約日から30営業日以内の社会保険手帳の閉鎖手続きも忘れずに行う必要があります。詳しくは10章をご覧ください。
Q. 居抜き売却や法人清算を専門家に依頼すると、費用はどれくらいかかりますか?
店舗の規模、資産の状況、法人の形態や清算の複雑さによって大きく変動するため、一概にお答えすることは難しいのが実情です。フードコネクションベトナムでは、まず無料の査定・診断を通じて、御社の状況に応じた概算費用をお伝えしていますので、まずはお気軽にご相談ください。
結論:ベトナムでの閉店・撤退を決めたら、まずは「フードコネクションベトナム」へご相談ください
店舗を閉めるという決断は、ハノイ、ホーチミン、ダナン、どの都市であっても経営者にとって精神的・体力的に非常に大きな労力を伴うものです。しかも、本記事で見てきた通り、ベトナムでの閉店には「店舗・資産の整理」と「法人の清算」という2つの手続きがあり、後者は決して短くない時間を要します。だからこそ、最後にかかるコストは最小限に抑え、あなたがこれまで投資してきた汗と涙の結晶(店舗資産)を、次のステップへの大切な原資に変えるべきです。
「まだ大家には一言も言っていないけれど、うちの店はいくらで売れる?」
「ハノイの店舗だけど、居抜きで引き取ってくれるFC本部はいる?」
「ホーチミンで厨房機器を一括で高く買い取ってほしい」
「法人の清算も含めて、何から手をつければいいか整理したい」
どのような段階、どのようなお悩みでも構いません。日本での確かな実績と、ベトナム全土の市場・FCネットワークを知り尽くした「フードコネクションベトナム」が、あなたの店舗の価値を正しく査定し、次のランナーへとバトンを繋ぐ最適な撤退をフルサポートします。
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この記事の監修者

フードコネクションベトナム / グローカルコネクション
親盛 龍斗 (Ryuto Oyamori)
沖縄県出身。飲食店のWEB/販促/ブランディングに関するディレクターを経験後、2025年7月よりベトナムに赴任。自らもインフルエンサーとして情報発信をしながら、日本の飲食店のベトナム進出支援を中心に海外進出を検討する飲食店を支援している。





























