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2026.08.28
資本力だけでは勝てない?!(後編)ベトナム外資飲食チェーンに学ぶ、中小飲食店の勝ち筋
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
前編では、マクドナルドが12年で49店舗にとどまり、バーガーキングが4店舗まで縮小し、ロッテリアが200店舗超を持ちながら2年連続赤字に陥っている実態を見てきました。資本力だけでは、ベトナム市場を攻略できません。
では、同じ市場で確かに成功している企業には、何が共通しているのか。そして、大手ほどの資本を持たない個人店・小規模店には、どんな勝ち筋があるのか。後編では、この2点を具体的に整理します。
前編(外資チェーンが直面する苦戦の構造)をまだご覧でない方は、資本力だけでは勝てない?!(前編)ベトナム外資飲食チェーンが直面する「苦戦の構造」から先にお読みいただくと、より理解が深まります。
目次
それでも成功している企業の共通点
ここまで厳しい数字を並べましたが、成功例も確実に存在します。しかも、その勝ち方には明確な共通点があります。
● ジョリビー:現地価格に合わせ、現地ブランドを買う
フィリピン発のジョリビーは2005年にベトナムへ参入し、2025年9月末時点で224店舗。1食あたりの平均単価は約7万ドンで、マクドナルドやKFCより明確に安い価格帯に置いています。ターゲットも「小さな子どものいる若い家族」「学生」と鋭く絞り込んでいます。
さらに戦略的なのは、ベトナム発のコーヒーチェーン「ハイランズコーヒー」を傘下に収めていることです。ハイランズは2025年9か月間で109店を開業し31店を閉鎖、928店舗まで拡大。この期間にハイランズ単体で850億ドン超の利益を生み、ジョリビー・グループのコーヒー・茶部門利益の約29%を占めました。ベトナム事業はグループEBITDAの6%超に達しています。
外資が自社ブランドで正面から挑むより、現地で育ったブランドを取り込むほうが速い——これはひとつの示唆です。
● Pizza 4P’s:飲食未経験の夫婦が始め、外部資本を賢く使って伸びた
もう一つ、日本の飲食店オーナーにとって最も参考になる事例がPizza 4P’sです。
2011年、益子陽介氏と高杉早苗氏の夫妻がホーチミンに1号店を開業しました。ふたりとも飲食店の経験はゼロ。自宅の庭に作ったピザ窯から始まった話です。
開業当初、客層はほぼ100%が日本人でした。それが1〜2年で日本人と外国人が半々になり、やがてベトナム人客が7割を占めるようになります。日本人向けから始めて、時間をかけて現地客に浸透していったわけです。
2022年11月にはMekong Capitalが保有株式を全て売却し、日本政府系ファンド「クールジャパン機構」が1,000万米ドル(当時の為替で約14億円)を投じて出資先の持株会社「4P’s Holdings」の株式を取得しました。現地メディアの報道によれば、この取引後のクールジャパン機構の持株比率は23.63%、創業者の益子氏の持株比率は68.65%とされていますが、これはクールジャパン機構の公式発表そのものには明記されておらず、報道時点(2022年11月)の数字である点にご留意ください。
つまりPizza 4P’sは、「個人の資金力だけで大手に対抗した」というより、「外部資本を段階的に取り込みながら成長した」という事例に近いといえます。2022年11月時点の報道では、創業者の益子氏が過半数の株式を保有していたとされていますが、その後の増資や株式異動の有無までは公開情報から確認できず、現時点の比率として断定はできません。マクドナルドのようなグローバル本社の直接投資と比べれば規模はまったく違いますが、成長の途中で機関投資家の資金とガバナンス支援を活用している点は、中小オーナーへの示唆としても重要です。「最初から全部自己資金で」にこだわりすぎず、必要な局面で外部資本や専門家の支援を取り入れる柔軟さも、勝ち筋の一つだったということです。
現在はベトナム国内35店舗、カンボジアやインドを含めグローバルで40店舗規模。自社チーズ工房でモッツァレラを製造し、チーズ販売だけで売上の15%を占めます。
そして注目すべきは、年商約100億円に対してITチームの人件費に約1億円を投じている点です。提供時間、冷蔵庫やデリバリーバッグの温度、塩分濃度までデータ化し、店舗と従業員のパフォーマンスを可視化しています。人件費が安いベトナムでは、属人的な運営に頼ると品質がばらつきやすい。だからこそ標準化に投資しているのです。
なお、Pizza 4P’sが「なぜベトナム人客に選ばれているのか」というブランド側の視点は、なぜベトナム人は日系飲食店に殺到するのか?現地で支持を広げる4ブランドの成功パターンで、浦江亭・Sushi Tiger・鶏そばムタヒロと並べて分析しています。本記事が「なぜ大手が伸びないか」を扱うのに対し、あちらは「なぜこの4ブランドが伸びたか」を扱う内容です。
● シェイクシャックの「慎重すぎる」目標が意味するもの
2026年、米国の人気バーガーチェーン「シェイクシャック」がベトナムに参入します。フランチャイジーは、スターバックスをベトナムに持ち込んだ香港のマキシムズ・グループです。
注目したいのは、その出店目標です。2035年までに15店舗。マクドナルドが2014年に掲げた「10年で100店舗」と比べると、あまりに控えめに見えます。
しかしこれは、先行組の12年分の失敗を織り込んだ、極めて合理的な数字だと私は考えています。ベトナムでは「まず1店舗で勝ち筋を確認し、そこから慎重に広げる」しかない。世界的チェーンですら、そう判断しているということです。
● 成功企業に共通する4つの要素
- 現地の価格帯に合わせている:ジョリビーの7万ドン、すき家の牛丼45,000ドン〜など、ローカル外食と戦える単価に設計している
- 現地パートナーまたは現地人材を軸にしている:丸亀製麺・CoCo壱番屋・吉野家は地場ロータスグループ、ぼてぢゅう・牛繁はTakahiro Foodグループが運営。鳥貴族や松屋、中華蕎麦とみ田は、日本の店舗で勤務経験のあるベトナム人材を積極登用しています
- オペレーションを標準化している:再現性がなければ、2号店以降で必ず品質が落ちます
- 小さく始めて、確認してから広げている:Pizza 4P’sもシェイクシャックも、この順番を守っています
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大手と個人店、それぞれの強み・弱み——そこに私たちがどう関われるか
ここまでの内容は、一見すると「大手ですら苦戦する厳しい市場」という話に見えるかもしれません。ですが、現地で12年見てきた立場から言えば、話はもう少し立体的です。大手にしかない強みがある一方で、個人店・小規模店にしかない強みも確かにあります。まずは両者を正面から比較します。
● 大手チェーンと個人店・小規模店の比較
| 項目 | 大手チェーン | 個人店・小規模店 |
|---|---|---|
| 資金力 | 潤沢(数千万〜数億円規模) | 限られる |
| 意思決定スピード | 本国承認が必要で遅い | オーナー判断で即断即決 |
| 出店規模・立地 | 大型路面店・好立地を狙いやすい | 小型区画・郊外中心、身の丈に合わせられる |
| 価格設定の柔軟性 | ブランド統一価格に縛られやすい | 現地価格へ即座に合わせられる |
| 現地適応のスピード | 本国仕様の優先度が高い | メニュー・オペレーションを機動的に調整できる |
| 知名度・信用力 | 高い(初日から集客できる) | ゼロから積み上げる必要がある |
| 人材採用・労務 | 専任チームがある | オーナーが兼務し、ノウハウが乏しい |
| 許認可・法務対応 | 専門部署がある | 手続きに不慣れで時間を取られやすい |
| 物件交渉力 | 複数拠点分の実績で強気に出られる | 交渉材料が少ない |
この表を見ると、個人店の強みは「小回り」に集中し、弱みは「専門知識・実務体力が要る領域」に集中していることがわかります。実際、ここまで見てきた店舗数・撤退・成功事例の内容とも一致します。マクドナルドやバーガーキングが苦しんだのは資金力ではなく現地適応のスピードでしたし、Pizza 4P’sが伸びたのも、まさにこの小回りを活かした結果でした。
つまり、個人店の強み(小さく試す・即断即決・現地適応)は、そのまま活かせばいい。一方で弱み(資金・人材採用・許認可・物件交渉)のほうは、ノウハウを持つ相手と組むことで補えます。
実際、KFCやジョリビーは今も現地パートナーとの合弁・共同出資という形を維持しています。KFCベトナムは1997年の参入当初から合弁会社として設立され、その形態を今日まで続けています。ジョリビーが展開するハイランズコーヒーも、現地創業者が株式の一部を保有したまま、ジョリビー側が60%を出資する形です。2015年の規制緩和で単独進出が自由になった後も、大手はあえて現地の知見を持つ相手と組む道を選んでいるわけです。中小の個人店が、物件探しや人材採用で経験のある相手と組むことにも、同じ理屈が当てはまります。
● 個人店の弱みのうち、私たちがサポートできる部分
- 資金の壁:弊社が保有する自社物件や、デリバリー・ゴーストレストラン用スペースを活用すれば、通常より大幅に少ない資金で出店を始められます。「意外と必要になる資金」についても、資金計画そのものをご相談いただけます
- 人材採用の壁:スタッフの採用・雇用は弊社が代行します(採用したスタッフの賃金はお客様負担)。レシピ提供によるお試し出店も可能です
- 許認可の壁:法人設立や、店舗形態に応じた各種許認可申請、バックオフィス業務まで一括でサポートします(必要な許認可の種類・要否は店舗形態や規模によって異なるため、個別にご案内します)
- 市場を見極める壁:本格出店の前に、1万円から始められる現地視察プランで、繁盛店・相場・物件・生活環境を実際に見てから判断いただけます
進め方は「小さく始めて、見極めてから広げる」。検討段階(視察)で市場を体感し、実行段階では運営代行・出店・申請の実務を私たちが引き受ける——この二段構えなら、個人店ならではのスピード感を殺さずに、弱みだった部分だけを補強できます。
では実際に1店舗を出すのに、いくら用意すればよいのか。物件取得費・内装費・法人設立費・運転資金まで含めた総額の目安は、自己資金はいくら必要か|ベトナム飲食進出の「総額」の現実で具体的な金額とともに整理しています。
● 日本食に対するベトナム人の需要も、確実に育っている
かつて日本食店の客層は日本人駐在員や出張者がほとんどでしたが、近年はベトナム人客の比率が高まっているという声が現地経営者から多く聞かれます。都市部では日本食の認知度が上がり、外食時の選択肢として日本食を選ぶベトナム人消費者が増えています。
背景には食生活の変化もあります。2014年から2024年の10年間で、1人当たりのコメ消費量が減る一方、肉や卵の消費量は着実に増えました。主食中心から、多様な食材を取り入れる方向へ変わってきているのです。
2025年版ミシュランガイド・ベトナムには181店舗が掲載され、前年から10%増加しました。「より良い食体験にお金を払う」層が、確実に厚くなっています。
● ただし、注意すべき点もあります
- 物件は賃借が中心:案件によっては土地・投資関連の個別手続きが必要になることもあり、実務上は既存物件の賃借を選ぶケースが中心です。契約条件によっては、再開発やオーナー都合による中途解約のリスクも生じ得ます
- パートナーの選択肢は限られる:日系ブランドのFC運営は、ロータスフードとTakahiro Foodの2社に集中しているのが実情です。有力パートナー頼みの計画は、そもそも組めない可能性があります
- 消費者は慎重になっている:2026年に外食費を減らす予定と答えた人は34.5%で、前年の31.1%から増えました。価格に見合う価値がなければ、すぐに離れます
- コスト圧力は続いている:2025年は45.3%の事業者が原材料費・人件費などを理由に値上げを余儀なくされました
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まとめ:ベトナムは「小さく入って、見極めてから広げる」市場
外資チェーン12年分のデータから見えたことを、勝ちパターンと負けパターンに整理します。
| 論点 | 負けパターン | 勝ちパターン |
|---|---|---|
| 立地 | 中心部の一等地・大型路面店 | 中心部以外、モール内小区画、デリバリー併用 |
| 価格 | 本国と同じ価格帯を持ち込む | ローカル外食と戦える単価に再設計 |
| 展開速度 | 「◯年で100店舗」を先に決める | 1店舗の再現性を確認してから増やす |
| 人材 | 日本から送り込んだ人員に依存 | 現地人材の育成と権限移譲 |
| 運営 | 属人的なオペレーション | データとITによる標準化 |
| 顧客 | 最初から現地客の獲得を狙う | 在住日本人から入り、段階的に現地客へ |
押さえていただきたいポイントは6つです。
- 2015年の規制緩和以降、飲食業は100%外資で法人設立ができる。ただし、これは市場アクセスの制限が撤廃されたという意味で、食品安全・消防等の営業許可は別途必要
- 市場は成長している(民間調査会社の推計値)。2025年の業界売上は726.5兆ドン(前年比+5.5%)、ベトナムは2026年7月に高中所得国入りした
- しかし資本力の大小だけでは勝敗が決まらない。マクドナルドは12年で49店舗、バーガーキングは4店舗、ロッテリアは200店舗超で2年連続赤字
- 勝因の一つは現地価格・現地パートナー・標準化・段階的拡大。Pizza 4P’sは外部資本も活用しつつ8店から27店、35店へ拡大、シェイクシャックですら10年で15店舗計画
- 個人店の強みは「小回り」、弱みは「専門知識・実務体力」に集中している。大手が構造上取りにくい「小さく試す」は、個人店の有力な武器になり得る
- 弱みは、ノウハウを持つ相手と組めば軽減できる。資金・人材採用・許認可・市場見極めの4つの壁は、外部サポートで負担を減らせる領域だが、当局の審査や採算性そのものまで保証されるわけではない
個人店には個人店なりの戦い方があり、大手にはない機動力を活かせる場面があります。ただし、それだけで成功を保証するものではなく、現地の物件相場、エリアごとの客層、実際に動いている繁盛店の中身を踏まえた個別の見極めが欠かせません。ベトナム進出をご検討の際は、まずは現地に詳しい私たちにご相談ください。
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

