「人件費は安い」は本当か|ベトナム最低賃金2026年7.2%上昇と社会保険の実像 – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
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「人件費は安い」は本当か|ベトナム最低賃金2026年7.2%上昇と社会保険の実像
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
「ベトナムは人件費が安いから、スタッフを多めに置いても採算が合うはず」。ベトナム進出を検討されている飲食店オーナー様から、こうした前提を伺うことがあります。
結論から言うと、賃金の単価が日本より大幅に安いのは事実です。ただし、飲食の求人に表示される給与は最低賃金を上回っており、「最低賃金×人数」でざっくり計算すると、求人相場で組んだ計画との間に大きな差が出ます。この記事の試算では、その差は約4割になりました。
2026年1月には政令293/2025/NĐ-CPで最低賃金が平均7.2%上がり、7月には社会保険の算定上限と祝日の制度も変わりました。2027年についても、平均7.8%の引き上げ案が政府に提出されています。
この記事では、ホーチミンで飲食店を開く前提で、最低賃金・社会保険・労働組合費・割増賃金まで含めた人件費を試算し、事業計画のどこを見直すべきかを整理します。なお、扱うのは「人件費」に絞っています。法人設立や許認可、物件などにかかる費用は別途見込んでください。
目次
結論:賃金の単価は安い。ただし最低賃金ベースの計画は大きくずれる
最初に、この記事の要点を4つにまとめます。
- 賃金の単価は日本より大幅に安い:最低賃金の時間額は約155円で、東京都の最低賃金1,280円(2026年10月1日発効)の約8分の1。ホールスタッフの求人相場に会社負担の社会保険を加えても、時給換算で約280円です。
- 最低賃金は「下限」にすぎない:この記事で参照したホーチミンの飲食3職種の求人の代表値は、最低賃金の約1.5〜1.9倍でした。
- 給与の上に社会保険と労働組合費が乗る:通常の飲食店なら、社会保険の算定給与に対して会社負担21.5%と労働組合費2%、計約23.5%が目安です。
- 改定の間隔が短くなっている:最低賃金は2022年7月・2024年7月にそれぞれ約6%上がった後、2026年1月に7.2%上昇。2027年1月にも7.8%の案が出ています。
大事なのは「安いかどうか」ではなく、「いくら安いのか」「単価はどのくらいのペースで上がっているのか」を数字で押さえ、複数のシナリオで計画することです。以下、順番に見ていきます。
2026年のベトナム最低賃金|政令293号の地域別一覧
ベトナムの最低賃金は、全国一律ではなく4つの地域(第1〜第4地域)ごとに決まっています。2026年1月1日から、政令293/2025/NĐ-CP(2025年11月10日公布)により、次の金額が適用されています。
| 地域 | 2025年(政令74/2024) | 2026年(政令293/2025) | 引き上げ額 | 上昇率 | 時間額 | 月額の円換算 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1地域 | 4,960,000 VND | 5,310,000 VND | +350,000 VND | 約7.1% | 25,500 VND | 約32,200円 |
| 第2地域 | 4,410,000 VND | 4,730,000 VND | +320,000 VND | 約7.3% | 22,700 VND | 約28,700円 |
| 第3地域 | 3,860,000 VND | 4,140,000 VND | +280,000 VND | 約7.3% | 20,000 VND | 約25,100円 |
| 第4地域 | 3,450,000 VND | 3,700,000 VND | +250,000 VND | 約7.2% | 17,800 VND | 約22,400円 |
※円換算は1円=約165VND(2026年9月下旬のVietcombank売買レートの中間付近)で計算。以下同じ。
● 「平均7.2%」はホーチミン中心部では約7.1%
報道される「7.2%」は4地域の平均です。ホーチミン中心部が属する第1地域の上昇率は、350,000÷4,960,000で約7.1%になります。
最低賃金の月額は「通常の労働時間を満たして働いた場合に下回ってはならない月給」です。時給で雇う場合は、時間額(第1地域なら25,500VND、約155円)が下限になります。
● ホーチミンのどこが第1地域か
2025年の行政改革(二層制への移行)で、ホーチミン市は旧ビンズン省・旧バリア・ブンタウ省と統合され、住所の単位も「区」から「坊・社」へ変わりました。政令293号の地域区分も、新しい坊・社の単位で定められています。
旧1区・3区・7区・ビンタン区・フーニュアン区・トゥードゥック市にあたる中心部の坊や、旧ビンズン側のトゥアンアン・ジーアンなどは第1地域です。一方、カンゾー、コンダオ特区、旧バリア市の坊などは第2地域で、市内には一部第3地域の社もあります。
候補地が決まったら、旧区名ではなく新しい坊・社名で、政令の付録(地域一覧)と照らし合わせてください。適用される地域は、登記上の住所ではなく実際に事業を行う場所で判断されます。
● 調理経験者に「最低賃金+7%」は必要か
以前は「職業訓練を受けた労働者には最低賃金より7%以上高い給与を払う」という規定がありましたが、2022年7月施行の政令38/2022/NĐ-CPで廃止されています。ただし、それ以前から雇用契約や社内規程で7%上乗せを定めている場合は、労使で別途合意しない限り継続されます。
【試算】8人の店で比べる「最低賃金モデル」と「求人相場モデル」
ホーチミン中心部(第1地域)で、ホール4名・調理補助3名・調理リーダー1名の計8名の店を想定し、2つの計画を比べます。8名は規模感をつかむための例で、実際の計画では営業時間と時間帯ごとの必要人数から積み上げます。以下は、あくまでこの記事で置いた仮定にもとづく一例で、ホーチミンの飲食店の標準的な人件費を示すものではありません。
- A:最低賃金モデル(よくある簡易試算):8名全員を最低賃金(月5,310,000VND)で計算し、社会保険と労働組合費を加算
- B:求人相場モデル:求人データの給与(ホール7,800,000VND、調理補助8,600,000VND、調理リーダー10,000,000VND)が全額、社会保険の算定対象となる固定給・手当だと仮定。社会保険と労働組合費を加算し、テト(旧正月)賞与1か月分を月割りで計上
| 項目(月額) | A:最低賃金モデル | B:求人相場モデル |
|---|---|---|
| 給与合計 | 42,480,000 VND(約25.7万円) | 67,000,000 VND(約40.6万円) |
| 社会保険(会社負担21.5%) | 9,133,200 VND | 14,405,000 VND |
| 労働組合費(2%) | 849,600 VND | 1,340,000 VND |
| テト賞与(1か月分の月割り) | 計上なし | 5,583,333 VND |
| 月の人件費合計 | 52,462,800 VND(約31.8万円) | 88,328,333 VND(約53.5万円) |
BはAの約1.7倍で、この仮定のもとでは、Aで計画するとBの約4割を見落とす計算になります。ただし、この差の中身は1つではありません。
| 差額の内訳(月額) | 金額 |
|---|---|
| 給与水準の違い(最低賃金と求人相場) | 24,520,000 VND |
| 給与が上がった分の社会保険・労働組合費 | 5,762,200 VND |
| テト賞与の有無 | 5,583,333 VND |
差の大半は「給与水準そのもの」です。求人相場が最低賃金を上回っている以上、最低賃金を前提に人件費を置くのは危うい、というのが一番の見直しポイントです。テト賞与を入れなくても、BはAの約1.6倍(月約50.1万円)になります。
最低賃金に近い給与で採用できる店もあるはずです。ただ、その水準で必要な人数と経験者がそろうかどうかは、立地や業態、採用方法によって変わります。計画では「最低賃金で採れた場合」と「求人相場で採る場合」の両方を置いておくと、資金計画の幅が見えます。
● 求人データを読むときの注意点
Bの給与は、求人サイトJobsGOの集計(直近12か月・外れ値を除外。ホーチミンのホールスタッフ平均780万VND〈889件〉/調理補助の平均860万VND)と、Việc Làm Tốtの集計(ホーチミンの調理職の中央値約1,000万VND)をもとにしています。平均値と中央値が混在している点も含め、あくまで目安です。求人データには、次のような限界もあります。
- 「月収」と「基本給」が混在している:Việc Làm Tốtでは、調理補助の基本給500万〜700万VNDに対し、夜間手当・残業代・売上連動賞与・チップなどを含めた実収入を600万〜900万VNDとしています。
- チップやサービス料は社会保険の対象外:社会保険の算定基礎は、職務給と、毎月定期的に支払う手当などです。チップや臨時の賞与は含まれないため、Bの保険料はやや多めに出ています。
- 集計は随時更新される:JobsGOの調理補助は、2026年9月末時点でページ上部が890万VND、FAQ欄が860万VNDと表示が分かれています(本試算は低いほうの860万VNDを使用)。
- 求人に出てくる店に偏る:常に募集している店ほど繰り返し集計される一方、知人紹介や店頭の張り紙で採用する店、スタッフが定着して求人を出さない店は集計に表れにくくなります。
- 掲載額=採用時の給与とは限らない:「最大月収」を強調した表示や、面接での条件調整もあります。
- 日本語人材・管理職は別水準:JobsGOのホールスタッフのデータでは、日本語を条件とする求人は平均990万VNDと全体平均より約25%高い傾向です(日系店・高級店など、店の種類の違いも含んだ数字です)。店長クラスは月2,500万〜4,000万VND程度が目安とされています。
実際の計画では、求人票を「固定給」「社会保険の対象になる手当」「対象外の手当・チップ」「賞与」に分けて組み立てるのが正確です。
● それでも日本よりは大幅に安い
ホールスタッフ(月780万VND)を、月26日・1日8時間勤務と仮定して時給に直すと約37,500VND、約227円です。社会保険と労働組合費を加えても約280円、テト賞与の月割りまで含めても300円前後です。
比べている東京都の1,280円は、会社負担の社会保険を含まない「最低賃金」です。ベトナム側は相場給与に会社負担まで乗せ、日本側は最低額で比べているので、実際の差はこれより大きいと考えられます。条件をそろえて最低賃金同士で比べると、ベトナム第1地域の約155円に対して東京都は1,280円で、約8分の1です。
一方で、ここで示せるのは「賃金の単価が安い」ことまでです。教育期間や離職による戦力の入れ替わりで、日本と同じ人数では回らない場面もありえますし、メニュー価格(客単価)も日本とは違います。出店判断では、時給の単価ではなく、売上に対する人件費率や、食材費と合わせたFLコスト比率で見込むことをおすすめします。
● 試算に含めていないコスト
この試算は月給ベースの概算です。実際の運営では、次の費用も別途見込む必要があります。
- 残業・深夜の割増賃金:時間外労働は通常日150%以上、週休日200%以上、祝日300%以上。22時〜翌6時の深夜勤務は30%以上、深夜の時間外はさらに20%が加算されます(労働法第98条)。時間外労働は原則月40時間までで、本人の同意が必要です。夜遅くまで営業する業態ほど、影響は大きくなります。
- 年次有給休暇:年12日以上。退職時に未消化分があれば、賃金で精算します。
- 採用・教育・離職のコスト:求人費用や、新人が戦力になるまでの期間の人件費
- まかない・制服・各種手当、給与計算や保険手続きの外注費
- 日本人スタッフの費用:労働許可証の取得、住居、渡航費など
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社会保険の実像|「約23.5%」は法定の計算式ではなく目安
ベトナム人スタッフを雇用契約で雇う場合、社会保険・医療保険・失業保険への加入が義務づけられています。2026年の料率は次のとおりで、前年から据え置かれています。
| 制度 | 会社負担 | 従業員負担 |
|---|---|---|
| 年金・遺族給付 | 14% | 8% |
| 疾病・出産 | 3% | ― |
| 労災・職業病 | 0.5% | ― |
| 失業保険 | 1% | 1% |
| 医療保険 | 3% | 1.5% |
| 社会保険等の小計 | 21.5% | 10.5% |
| 労働組合費 | 2% | ― |
| 合計 | 約23.5% | 10.5% |
※従業員負担の10.5%は給与から天引きされるため、会社の追加負担にはなりません。
注意したいのは、23.5%を掛ける先は「社会保険の算定給与」であり、支払う総額すべてではないことです。算定給与は、職務給と、毎月定期的に支払う手当などで構成されます。臨時の賞与やチップなどは含まれません。また、算定給与には上限があり、失業保険は別の上限で計算します。計画段階で「固定給と定期的な手当の合計×約23.5%」と置くのは、あくまで概算の目安と考えてください。
● 労働組合がなくても、原則2%は払う
見落とされがちなのが労働組合費です。2024年労働組合法と、2026年5月16日施行の政令105/2026/NĐ-CPにより、会社は社会保険の算定給与総額の2%を労働組合費として納めます。社内に労働組合がない場合も対象で、その場合は地域の上部組合へ納付します。
社内に労働組合をつくった場合は、納めた額の多く(2026年の労働総同盟の指針では75%)が社内の組合に配分され、スタッフの福利厚生などの組合活動に使われます。会社の費用であることに変わりはありませんが、使い道が自社スタッフに還元される形です。
なお、解散・破産時の免除や、経営が大きく悪化した場合の減額・納付猶予の制度も設けられています。通常どおり営業している店では、2%を前提に計画してください。
● 「基本給を低く届け出る」運用のリスク
保険料を抑えるために、基本給を最低賃金ぎりぎりに設定し、残りを手当で払う運用を見かけることがあります。ベトナム商工会議所(VCCI)の記事でも、こうした企業が少なくないと指摘されています。
しかし、毎月定期的に支払う手当は、名目が手当でも算定給与に含まれます。実態と合わない届け出は追徴や罰金の対象になりえますし、スタッフが自分の保険記録を見て不信感を持つことも考えられます。
● 「手取り(NET)」で約束すると負担が増える
ベトナムの求人や採用面接では、給与を「GROSS(額面)」ではなく「NET(手取り)」で提示・交渉する場面も珍しくありません。
NETで約束すると、従業員負担分の社会保険10.5%(と、給与水準によっては個人所得税)も実質的に会社が負担します。手取り780万VNDを約束すると額面は約872万VNDになり、会社負担を含めた人件費は、額面780万VNDで約束した場合より1割以上高くなります。どちらで合意したかは、雇用契約書に明記しておきましょう。
● アルバイトも加入対象になりうる
2025年7月1日施行の2024年社会保険法で、パートタイムのスタッフも強制加入の対象に含まれました。雇用契約(名称を問わず、賃金と指揮監督の実態があるもの)の期間が1か月以上で、月の算定給与が基準額(2026年7月以降は2,530,000VND)以上であれば対象です。
一方で、月の給与が基準額に満たない場合や、無給で14日以上働かなかった月などは対象外です。「アルバイトは保険不要」とも「全員加入」とも決めつけず、スタッフごとに契約と給与を確認してください。
● 日本人スタッフを置く場合
日本人の店長や料理人は、12か月以上の雇用契約であれば、原則としてベトナムの社会保険に加入します(企業内転勤などの例外あり)。料率は会社20.5%・本人9.5%で、失業保険はありません。給与水準が高いため、次章の「算定上限」の影響を受けやすい層です。
2026年後半〜2027年に効く3つの変化
● ① 11月24日「ベトナム文化の日」が有給の祝日に
国会決議28/2026/QH16により、2026年7月1日から、毎年11月24日が「ベトナム文化の日」として有給の祝日に加わりました。年間の有給祝日は11日から12日に増えています。2026年の11月24日は火曜日です。
祝日にスタッフが働いた場合、月給に含まれる祝日分とは別に、その日の賃金の300%以上を支払います(労働法第98条)。先ほどの8名の店(給与合計月6,700万VND)で、仮に1日の賃金を月給÷26日とし、全員が出勤したとすると、割増分は約770万VND(約4.7万円)です。実際の日額は、会社の労働日制や労働時間に応じて計算してください。
実際には、祝日の出勤人数を絞ったり、祝日の売上増で吸収したりする余地もあります。そのうえで、割増の単価を把握しておくことが大切です。
テトの5日間を含む年12日の祝日のうち何日営業するのか、年間の営業計画と人件費計画をセットで決めておきましょう。
● ② 社会保険の算定上限が月5,060万VNDへ
政令161/2026/NĐ-CPにより、2026年7月1日から基準給与が2,340,000VNDから2,530,000VNDに上がりました。社会保険の算定上限は基準給与の20倍のため、上限も月4,680万VNDから5,060万VND(約30.7万円)に上がっています。一般のスタッフには影響しませんが、店長や日本人スタッフなど給与の高い人は、会社負担の保険料が増えます。
● ③ 2027年は平均7.8%の引き上げ案
2026年7月16日、国家賃金評議会は、2027年1月1日から最低賃金を平均7.8%引き上げる案を全会一致で決め、政府に提出しました。
| 地域 | 2026年(現行) | 2027年(評議会案) |
|---|---|---|
| 第1地域 | 5,310,000 VND | 5,700,000 VND |
| 第2地域 | 4,730,000 VND | 5,080,000 VND |
| 第3地域 | 4,140,000 VND | 4,450,000 VND |
| 第4地域 | 3,700,000 VND | 4,040,000 VND |
これはまだ評議会の勧告で、最終的には政府が政令で決めます。協議では企業側が「5%前後・2027年7月から」を主張した経緯もあり、記事公開時点では確定していません。また、政令案では地域区分の見直しも検討されているため、郊外や新興エリアへの出店を考えている方は、最新の政令を必ず確認してください。
改定のペースを振り返ると、2020年から2年間の据え置き(新型コロナの影響)の後、2022年7月に約6%、2024年7月に6%、2026年1月に7.2%と、間隔が短くなってきました。2027年案どおりなら、2年続けての引き上げです。ただし、コロナ後の回復期と未確定の案を含む数回分の動きなので、今後も同じペースが続くとは限りません。
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事業計画で見直すべき5つのチェックポイント
● 1. 出店予定地の「地域区分」を坊・社名で確認する
同じホーチミン市内でも、第1地域と第2地域では最低賃金に月58万VNDの差があります。候補地が決まったら、新しい坊・社名で政令の地域一覧と照合しましょう。
● 2. 給与は「求人相場」から組み立て、保険料を上乗せする
最低賃金ではなく候補エリアの求人相場をもとに、固定給と定期的な手当を設定し、社会保険と労働組合費(約23.5%)を上乗せします。額面(GROSS)と手取り(NET)のどちらで提示するのかも、採用前に決めておきましょう。
● 3. 賞与と割増賃金はシナリオで持つ
テト賞与は法律上の義務ではなく、会社が賞与規程を定めて、業績や勤務評価に応じて支給するものです(労働法第104条)。ただし慣行として定着しているため、「なし」「0.5〜1か月」「1〜2か月(業績連動)」のように複数のシナリオで計画しておくと安全です。祝日・深夜・残業の割増も、営業時間とシフトに合わせて見込みます。
● 4. 昇給は「基本」と「上振れ」の2本で見込む
最低賃金が上がっても、法律上給与を上げる義務があるのは、最低賃金を下回ることになるスタッフだけです。また、最低賃金の上昇率が、それより高い給与のスタッフにそのまま波及するとも限りません。ただし、新規採用の相場が上がれば、既存スタッフを据え置いたままでは経験者から離職するリスクが高まります。
たとえば、年5%(3年で約1.16倍)の基本ケースと、年8%(3年で約1.26倍)の上振れケースを並べておけば、開業3年目の人件費の幅が見えます(数字は計画用の仮定です)。
● 5. 円建てでも試算し、為替の影響を確認する
日本の本社から資金を送る場合、為替の動きがそのまま円建ての人件費に表れます。1円あたりのVNDが1割減る(円安)と円建ての人件費は約11%増え、1割増える(円高)と約9%減ります。VND建てと円建ての両方で計画をつくっておきましょう。
● 小さく始めて、実際の人件費を確かめる
「何人で回るのか」「いくらで人が集まるのか」は、机上の試算だけでは確かめきれません。
フードコネクションベトナムでは、出店前の検討段階として、現地の繁盛店・給与相場・物件などを確認できる「1万円から始められる現地視察プラン」をご用意しています。出店を決めた後は、スタッフの採用・雇用を弊社が代行する運営代行も選べます(採用したスタッフの賃金はお客様のご負担です)。
まとめ:「安い」を前提にせず、「いくら安いか・どう上がるか」で計画する
ベトナムの賃金の単価は、日本と比べて今も大幅に安いのは事実です。ただし、最低賃金を基準にした計画は、求人相場で組んだ計画を大きく下回ります。
- 2026年1月、政令293/2025/NĐ-CPで最低賃金は平均7.2%上昇。第1地域は月5,310,000VND(約3.2万円)
- この記事で参照した飲食3職種の求人代表値は、最低賃金の約1.5〜1.9倍。この記事の試算では、最低賃金モデルは求人相場モデルの約4割を見落とした
- 会社負担は社会保険21.5%+労働組合費2%で、算定給与の約23.5%が目安。労働組合がなくても原則2%は必要
- 2026年7月から、11月24日が有給祝日に加わり(年12日)、社会保険の算定上限も月5,060万VNDへ
- 最低賃金の改定はここ数年間隔が短くなり、2027年は平均7.8%の案(未確定)。昇給と賞与はシナリオで持つ
人件費は、家賃と並んで飲食店の損益を左右する大きな費用です(固定給の部分は固定費、シフトや残業の部分は変動費の性格を持ちます)。「安いから大丈夫」ではなく、「いくら安いのか」「単価がどのくらいのペースで上がっているのか」を数字で確かめ、複数のシナリオで計画したうえで、出店を判断してください。
自社の業態や人員計画に合わせて、人件費や資金計画を試算したい方は、お気軽にご相談ください。
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▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
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