
フードコネクションベトナムディレクターの親盛です。現在、ベトナムのホーチミンを拠点に、日系飲食店様の海外進出支援やマーケティング業務に携わっています。
日々、多くの経営者様と打ち合わせをさせていただく中で、最近特に増えているのが、
「成長著しいベトナムも魅力的だが、2.8億人の人口を持つインドネシアも無視できない」
「ハラル対応や資本金要件が厳しいと聞くが、実際のところ飲食店開業は現実的なのか?」
といったご相談です。
確かにインドネシアは、東南アジア最大の人口と若い労働力を持つ、世界でも有数の巨大消費市場です。一方で、ハラル規制・投資要件・酒類規制など、日本の飲食店にとっての参入障壁は非常に高く、実際に制度理解の不足や投資計画の甘さから、1年以内に撤退を余儀なくされるケースも少なくありません。
インドネシア進出は、
「なんとなく海外でやってみたい」では成立しない市場です。
そこで本記事では、
「インドネシアで飲食店を開業する方法」をテーマに、
制度・費用・ハラル対応・失敗しやすいポイントまで含めて、経営判断に使える情報を整理します。
▼ もし今、こんなことで迷っているなら
- ✔インドネシアで飲食店開業が本当に現実的か知りたい
- ✔ハラル対応をどこまでやるべきか判断がつかない
- ✔ベトナムと比べて、どちらが自社に合うのか整理したい
記事を読み進める前に、「検討すべき国はどこか」だけでも整理したい方は、まずはお気軽にご相談ください。
※当社はベトナム進出は直接支援し、それ以外の国については信頼できる現地支援企業をご紹介する形で対応しています。
目次
1. なぜ今、インドネシア進出なのか?市場の魅力
インドネシアは、ASEAN全体のGDPの約4割を占める巨大経済圏です。
単なる「人口が多い国」ではなく、日系飲食店にとって追い風となる3つの大きな魅力があります。
圧倒的な市場規模
人口は約2.8億人(世界第4位)。ジャカルタを中心に、購買力の高い中間層・富裕層が急増しており、外食にお金を使う層が拡大しています。日本の人口が減少する中で、この「胃袋の数」は圧倒的な魅力です。
親日度の高さと日本食ブランド
日本食は「健康的」「おしゃれ」「高品質」という確固たるブランドイメージが定着しています。現地資本の日本食店が増えている今でも、“本物の日本ブランド”への評価は高いのが実情です。
デリバリー前提の消費文化
GrabFood、GoFoodといったデリバリーが生活インフラとして浸透しています。実店舗+デリバリーを前提にした業態設計が可能な点は、日本よりも進んでいるとも言えます。
このように市場としてのポテンシャルは絶大ですが、インドネシアには独特の法規制や商習慣が存在します。次に、実際に開業するまでの具体的なステップを確認していきます。
2. インドネシア飲食店進出のステップ
外資企業として進出する場合、一般的にPT PMA(外資株式会社)の設立が必要です。法改正による緩和と、依然として残るハードルを正しく理解する必要があります。
① 法人設立(PT PMA)
外国企業がインドネシアで飲食店を開業する場合、PT PMA(外資株式会社)の設立が一般的です。
2025年10月の法改正により、外資法人の最低払込資本金が25億ルピア(約2,300万円)に大幅に引き下げられました(以前は100億ルピア)。これにより、中小規模の飲食店の参入障壁が大きく下がっています。
⚠ 重要な注意点:投資総額100億ルピアの計画は必須
ここで誤解してはいけないのが、「小規模な投資で事業を続けられるわけではない」という点です。 「払込資本金」の要件は下がりましたが、「土地・建物を除く投資総額が100億ルピア(約9,400万円)を超えること」という事業規模の条件は維持されています。
つまり、
・スタート時: 約2,300万円の資本金で設立可能
・事業計画: 将来的に、約1億円規模の投資を行う計画(コミットメント)が必要
という「2階建て」の構造になっています。
💡 飲食業における実務ポイント(ここが重要)
この「1億円の投資計画」についても、同改正で実務的な緩和が行われています。 従来は1店舗ごとに巨額の投資が必要でしたが、現在は投資額の算定単位が「県・市単位(Kabupaten/Kota)」に変更されました。
これにより、同一エリア内(例:ジャカルタ南部など)で複数店舗を展開する場合は、全店舗の合計で100億ルピアの投資計画を満たればよくなりました。 1店舗あたりの投資を適正規模に抑えつつ、ドミナント展開(多店舗展開)で総額基準をクリアする戦略が取りやすくなっています。
② 事業許可(OSS)
インドネシアでは「OSS(Online Single Submission)」というオンラインシステムで事業基本番号(NIB)を取得します。飲食業は「観光事業(TDUP)」のカテゴリーに含まれます。
③ 物件選定・内装
ジャカルタならモール内(Grand Indonesia, Senayan Cityなど)や、路面店ならSenopati, PIKといった人気エリアが候補になります。
④ 各種許認可・認証
- 衛生許可(Higiene Sanitasi): 保健局からの認可。
- 酒類販売許可: アルコールを提供する場合は必須ですが、イスラム圏であるため取得難易度は高めです。エリアや物件によっては取得できない場合もあります。
- ハラル認証(BPJPH): インドネシア政府は、2026年10月までに食品・飲料へのハラル認証取得を完全義務化する方針を掲げています。現在は移行期間ですが、未取得のままでは将来的に営業継続が困難になる可能性があるため、「いつ取得するか」の戦略策定が急務です。
では、これらのステップを踏まえた場合、実際にどの程度の資金が必要になるのでしょうか。
3. 進出にかかる費用目安
インドネシア(主にジャカルタ)で飲食店を開業する場合、法人設立の要件や物件取得費を含めると、初期投資は決して安くありません。以下は、標準的な規模での開業を想定した概算費用です。(1ルピア=0.0095円)
| 項目 | 目安費用 |
|---|---|
| 法人設立・ライセンス | 約50万〜150万円 |
| 最低払込資本金 | 約2300万円〜 |
| 投資総額計画 | 約9,400万円〜 |
| 店舗家賃(月額) | 約30万〜100万円 |
| 内装・設備工事 | 約1,000万〜3,000万円 |
| ビザ(KITAS) | 約20万〜30万円/人 |
コスト構造を理解したうえで次に重要になるのが、「どうやって現地で売上を作るか」という戦略設計です。インドネシア特有の成功ポイントを見ていきましょう。
4. インドネシアで勝つための3つの鍵
① ハラル対応を“戦略”として設計する
国民の約9割がイスラム教徒です。豚肉やアルコールを使わない「ハラルフレンドリー」なメニュー開発、あるいは完全なハラル認証の取得が、ターゲット層(顧客の分母)を最大化する鍵となります。
② SNS・KOL前提の集客設計
インドネシア人はInstagramやTikTokの利用時間が非常に長く、「写真映え(Instagenic)」はお店選びの決定打になります。インフルエンサー(KOL)を活用し、視覚的に訴求できるかどうかが売上に直結します。
③ 渋滞を前提にした商圏設計
ジャカルタの渋滞は世界的に見ても深刻です。移動時間が読めないため、「遠くても行く店」になるには相当なブランド力が必要です。商圏を狭く設定するか、デリバリー圏内にターゲットを絞る立地戦略が重要です。
ここまで見てきた3つのポイントは、インドネシアで飲食店を成功させるための「前提条件」と言えます。次に、これらを十分に理解・設計できなかった場合に、実際どのような失敗が起こりやすいのかを確認していきましょう。
5. 【失敗事例から学ぶ】インドネシア進出のリスクと対策
※以下は代表的な失敗パターン例です。実例は今後差し替え予定。
- 資本金要件を誤解し、OSSで事業許可が下りない
- ハラル非対応のまま出店し、客層が極端に限定される
- 酒類ライセンスが取得できず、業態が成立しない
- 立地選定を誤り、渋滞でリピートが生まれない
これらの失敗事例は、「インドネシアが危険な市場」というより、自社の体力や戦略に合わないタイミングで挑戦してしまった結果と言えます。
次に、日本の飲食企業が比較検討しやすい ベトナム進出とインドネシア進出を、経営判断の軸で整理して比較してみましょう。
6. 【比較】ベトナム進出 vs インドネシア進出
東南アジア進出において、よく比較対象となるベトナムとインドネシア。
隣国同士ですがその市場特性は全く異なります。経営判断の軸となる5つの項目で整理しました。
| 比較項目 | ベトナム進出 | インドネシア進出 |
|---|---|---|
| 市場規模 | 約1億人。成長率は高い。 | 約2.8億人。圧倒的な人口ボーナス。 |
| 参入障壁 | 規制が比較的緩く、少額開始も可能。 | 最低2,300万円弱の資本金が必要。(※最低投資総額は引き続き100億ルピア(約9,400万円)超の計画が必要) |
| 食文化の親和性 | 日本食との親和性が極めて高い。 | 宗教的制限(ハラル)の考慮が必須。 |
| 人件費 | インドネシアより低水準。 | ジャカルタ等の最低賃金は上昇傾向。 |
| お酒の提供 | 規制が緩く、利益の源泉。 | 規制が厳しく、ライセンスも高額。 |
この比較から見えてくるのは、両国の「勝ち方」の決定的な違いです。
ベトナムは、外資100%でも比較的少額からスタートでき、食文化や飲酒習慣も日本に近いため、「まずは海外1号店を成功させて、実績を作りたい」という企業にとって再現性が高い市場です。
一方、インドネシアは、資本金要件やハラル対応といった高いハードルが存在します。しかし、それを乗り越えた先には、2.8億人という圧倒的なマーケットが広がっており、「競合が容易に入ってこられない環境で、大きくシェアを取りに行く」ことが可能です。
つまり、「どちらが良い国か」ではなく、「今の自社のフェーズと体力に合っているのはどちらか」という視点が不可欠です。次に、実際の相談現場で特によく聞かれる疑問をQ&A形式で整理します。
7. 【よくある質問】インドネシア進出でよく聞かれる疑問
Q1. 初めての海外進出ですが、インドネシアでも大丈夫ですか?
A. 難易度は高めです。 資金力があり、ハラル対応などのローカライズに柔軟に対応できる体制があれば可能ですが、一般的には参入障壁が低いベトナムなどの方が、初手としてのリスクは抑えられます。
Q2. ハラル認証は必ず取得しなければなりませんか?
A. 必須ではありませんが、取得しないと市場が限定されます。 「豚肉・アルコールあり」の業態で、日本人や華僑層のみをターゲットにする戦略も可能です。しかし、人口の9割を占めるムスリム層を取り込み、多店舗展開を目指すなら、ハラル対応(または認証取得)は避けて通れません。
Q3. 外資100%での出店は可能ですか?
A. 可能です。インドネシアでは法改正により、飲食店における外資100%出資(PT PMA)が認められています。タイのように現地のパートナーを探す必要がない点はメリットですが、その分、高い資本金要件(投資総額約1億円〜)をクリアする必要があります。
Q4. お酒を出す居酒屋は流行りますか?
A. ニーズはありますが、ハードルは高いです。 酒税が高く、販売許可の取得も難しいため、価格設定が高額になりがちです。富裕層や駐在員向けには需要がありますが、マス層向けの展開は難しいのが現状です。
8. 【結論】それでもインドネシア進出が向いているのは、こんな経営者・業態
- 多店舗・FC展開を前提としている
- ハラル市場を中長期で獲りに行きたい
- 資金力と撤退リスクを許容できる
こうした企業にとって、インドネシアは間違いなく「次の10年を支える柱」になり得る市場です。成功した時のリターンも桁違いでしょう。
逆に、ベトナムを検討すべきケース
- 「まずは海外1号店を成功させたい」
- 「小さく始めて勝ちパターンを作りたい」
という場合は、ベトナムの方が現実的かつ、投資対効果の高い選択肢になるケースが多いでしょう。
最後に
インドネシア進出において重要なのは、以下の3点を冷静に見極めることです。
1. 自社の業態はハラルと両立できるのか
2. 投資総額は本当に許容できるのか
3. 最初に選ぶ国はインドネシアで正しいのか
これらは、制度情報だけでは判断できない部分も多々あります。
当社では、ベトナム進出については直接支援、インドネシア・タイ・シンガポールについては、信頼できる現地支援企業のご紹介を含めた判断整理という形でサポートしています。 「進出ありき」ではなく、“進出しない判断”も含めて整理したい方は、まずは一度ご相談ください。
9. 他国の進出も比較したい方へ
海外飲食店進出は, 国ごとに「初期投資」「規制」「勝ちやすい業態」が大きく異なります。インドネシアは有力な選択肢の一つですが, ベトナム以外の国も含めて整理することで, 判断のブレを防ぐことができます。
▶ まずは5か国を横断比較したい方へ
【2026年最新版】東南アジア飲食店進出・5か国比較ハブガイド
(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア)
上記記事では、 各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを 1ページで整理しています。
▶ 個別国の詳細を知りたい方はこちら
・ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
・タイでの飲食店開業・出店ガイド(観光×多店舗展開)
・マレーシアでの飲食店開業・出店ガイド(高単価・英語圏)
・シンガポールでの飲食店開業・出店ガイド(富裕層・ブランド戦略)
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