ベトナムの年間イベントと飲食店|「稼ぐ時期」と「テトの乗り切り方」を進出前に知る – ベトナム進出支援・飲食店開業・出店ならグローカルコネクション
2026.07.02
ベトナムの年間イベントと飲食店|「稼ぐ時期」と「テトの乗り切り方」を進出前に知る
フードコネクションベトナムディレクターの林です。2014年にベトナムに渡り、現在、ベトナム・ホーチミンを拠点に、飲食店様のホームページ制作・広告ディレクションや海外進出支援に携わっており、長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。
ベトナムで飲食店を開こうと考えたとき、多くの方が「どんな料理が受けるか」「どこに出すか」を最初に検討します。
ですが、現地で店を続けている方ほど口をそろえて言うのが、「1年の売上の波を読めるかどうか」が、思った以上に経営を左右する、ということです。
ベトナムには、外食需要がぐっと伸びるイベントもあれば、街中の店が一斉に休みに入る時期もあります。さらに、日本人のお客さまをメインに考える場合は、ベトナムの暦とは別に「日本の人事の動き」まで意識する必要が出てきます。
この記事では、ベトナムの年間イベントを「飲食店から見たカレンダー」として整理します。進出の検討段階で、開業のタイミングや資金計画、人員の組み方を考える材料にしていただければと思います。
目次
● ベトナムには、どんなイベントがあるのか
まず、ベトナムで一年のうちに訪れるおもな「祝日(休みになる日)」を並べてみます。
- テト(旧正月):一年で最も大切にされる行事。多くの人が帰省する
- フン王命日(旧暦3月10日/新暦4月ごろ):建国の祖をまつる法定祝日
- 南部解放記念日・メーデー(4月末〜5月初):連休になりやすい
- 建国記念日(9月2日と前後の1日):法定の連休
- 中秋節(テト・チュン・トゥー/旧暦8月15日・新暦9〜10月初):月餅を贈り合う行事
- ベトナム文化の日(11月24日):2026年に国会決議で新設された有給の休日(労働法への正式な組み込みは手続きが進行中)
- クリスマス(12月):法定祝日ではないが、都市部でにぎわう
このほかにも、仏教の行事(仏誕節やヴーランなど)や各地の祭りなど、文化・宗教にまつわる行事は数多くあります。
そのうえで、この記事で取り上げたいのは、年間の「祝日・季節イベント」が飲食店の経営にどう関わるかです。具体的には、来店や客単価が伸びる「クリスマス」、贈答と来店の両方が動く「中秋節」、そして営業や人員に大きな影響が出る「テト」が中心になります。加えて、日本人のお客さまをメインにする店では、日本側の人の動き(赴任・帰任・一時帰国)という「もう一つのカレンダー」も関わってきます。
1. まずは全体像|ベトナム飲食店の年間カレンダー
細かい話に入る前に、1年の流れをざっくりつかんでおくと、このあとの各イベントの位置づけが見えやすくなります。
ベトナムの飲食店に関わるイベント・季節要因は、影響の方向で大きく3つに分けられます。
- ① 外食需要が伸びる:来店や客単価が上がりやすい時期(クリスマス、忘年会シーズン、各種連休など)
- ② ギフト・物販が伸びる:店内飲食に加えて贈答・テイクアウトの売上も動く時期(中秋節など)
- ③ 営業が止まる・読みづらい:休業や人員の動きで、経営判断が必要になる時期(テト=旧正月)
ここに、日本人客をメインに考える店向けの「もう一つの軸」が加わります。
| 時期の目安 | 現地のイベント | 現地のお客さまの動き | 日本人のお客さまの動き |
|---|---|---|---|
| 1〜2月ごろ | テト(旧正月) | 帰省・休業・人の入れ替わり | 帰任前や一時帰国で減ることも |
| 3〜4月ごろ | (大きな行事は少なめ) | 通常 | 赴任・帰任の入れ替わりが起きやすい |
| 4月ごろ | フン王命日(旧暦3月10日) | 連休になると国内旅行が動く | 連休 |
| 4月末〜5月初 | 南部解放記念日・メーデー | 連休で国内旅行が活発 | 連休 |
| 9月初 | 建国記念日 | 法定の連休 | 連休 |
| 9〜10月初 | 中秋節 | 月餅などの贈答+来店需要 | 通常 |
| 10月末 | ハロウィン | 都市部の若者中心に定着しつつある | 通常 |
| 11月24日 | ベトナム文化の日(2026年新設) | 有給の休日とされる | 通常 |
| 12月 | クリスマス | 外食・デート需要 | 忘年会と年末の一時帰国で二極化 |
それでは、チャンスになりやすいイベントから順に見ていきます。
2. チャンス①:クリスマス|「休まず需要を取り込みやすい」イベント
ベトナムのクリスマスには、飲食店から見て一つ特徴があります。それは、法定の祝日ではないということです。
ベトナムではクリスマスは祝日に指定されておらず、多くの企業や学校は原則として通常どおりです。日本のように一律で休みになるわけではありません(ただしインターナショナルスクールなど、独自のカレンダーで冬季休暇に入る学校もあります)。
祝日ではないため、店を開けても「祝日勤務の割増賃金」は発生しません。その分、需要を取り込みやすい時期だと言えます。ただし、所定の時間を超えて働いてもらえば時間外の割増、深夜帯にかかれば深夜の割増は通常どおり発生します。特別メニューの仕込みなど、イベント対応の費用も別途かかります。また立地によっては、12月24日の夜などに都心部で交通が混み合ったり、予約が集中したりすることもあるため、当日の運営体制も考えておきたいところです。
● 街の盛り上がりは年々高まっている
クリスマスは、宗教行事としてだけでなく、商業・娯楽のイベントとして都市部を中心に年々定着してきています。ショッピングモールやホテルではイルミネーションや装飾が施され、街全体が華やかになります。
特にホーチミンの中心部などは観光の中心地でもあり、本格的に賑わうのは日が落ちてからの夕方以降です。恋人同士はもちろん、家族や友人と外食を楽しむケースも見られます。
● ただし「日本のクリスマス」をそのまま持ち込むのは要注意
ここで一つ気をつけたいのが、食習慣の違いです。
ベトナムには「クリスマスにはこれを食べる」という固定の料理はあまりなく、普段から親しまれている鍋料理などを家族で囲むことも多いようです。日本でおなじみの「クリスマス=チキン」という発想は、必ずしも共有されていません。
一方で、欧米系のレストランやホテルでは、クリスマス限定のコースやビュッフェを用意するところが多く見られます。価格帯も通常より高めの特別メニューが中心です。
このことから言えるのは、「特別感のある限定メニュー」や「写真を撮りたくなる空間づくり」は、この時期に響きやすいということです。日本の定番をそのまま出すよりも、現地の楽しみ方に合わせてアレンジする視点が役立つ場面が多いように思われます。
● 注意点:盛り上がりは都市部中心
なお、クリスマスの盛り上がりは大都市に偏っている面があります。地方ではまだそれほど根づいておらず、ふだんと変わらない日常という地域も少なくありません。出店エリアによって、イベント施策の効き方は変わってくると考えておくとよいでしょう。
3. チャンス②:中秋節|「贈答」と「来店」の両方が動く時期
9月から10月初旬にかけて訪れる中秋節(テト・チュン・トゥー)は、クリスマスとは少し性格の違うチャンスです。
中秋節は旧暦8月15日にあたり、日本の十五夜にあたる行事です。新暦では年によって9月から10月初旬の間で変動します。
この時期には、二つの方向で需要が動きます。
● ひとつは「月餅ギフト」の需要
ベトナムでは、中秋節に月餅(バイン・チュン・トゥー)を家族や親戚、取引先へ贈り合う習慣があります。日本のお中元に近い感覚で、企業が社員や顧客に贈ることも一般的です。
そのため、各社がパッケージやデザインに最も力を入れる時期とも言われ、季節イベントの中でも見た目の作り込みが目立ちます。
一般向けの店頭販売は中秋節の1〜2か月前から本格化し、法人向けや高価格帯の商品では、さらに早い時期から受注が動くこともあります。近年は伝統的な月餅だけでなく、健康志向向けや月餅プリンなど種類も広がっており、カフェやファストフード店、さらには大手コーヒーチェーンやホテルも、それぞれの月餅ギフトを展開しています。
● もうひとつは「来店」の需要
中秋節は贈答だけのイベントではありません。街では灯籠行列や獅子舞が見られ、にぎやかに祝われます。近年は、カフェやレストランが灯籠などで店内を飾り付け、装飾を目当てに訪れる若者や家族連れを取り込む店舗も見られます。
つまり、贈答用の商品づくりと、写真を撮りたくなる空間づくりの両方にチャンスがあるイベントだと言えます。
● 飲食店が検討するときの注意点
また、ギフト商品は企画・試作・パッケージの発注などに時間がかかります。販売を1か月以上前から始めるなら、商品づくり自体はさらに前倒しで動く必要があります。「この時期に検討」ではなく、数か月前から準備を始める前提で考えておくとよいでしょう。
\ 飲食店の海外進出を無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
4. チャンス③:連休・ハロウィン・忘年会シーズン
クリスマスと中秋節ほど大きくはありませんが、ほかにも需要が動きやすい時期があります。
● 法定休日・連休(フン王命日、4月末〜5月初、9月初ほか)
ベトナムの法定祝日には、新暦のものと旧暦のものがあります。飲食店から見て押さえておきたいのが、連休になりやすい時期です。
- フン王命日(旧暦3月10日/新暦では4月ごろ):曜日の並びによっては週末や振替休日とつながり、数日の連休になることがあります
- 南部解放記念日・メーデー(4月末〜5月初):法定では2日間で、曜日の並びによっては週末とつながり連休になることがあります
- 建国記念日(9月2日と前後の1日):法定で2日間の休みになります
- ベトナム文化の日(11月24日):2026年に国会の決議で新たに設けられた有給の休日です。単独の休日のため、曜日の並びによっては週末とつながって連休になることもあります。この日に従業員を勤務させる場合は休日勤務としての賃金処理が必要になりますが、計算の細部は施行後の公式案内もあわせて確認するのが安全です
これらの連休は国内旅行が活発になる時期で、観光地やリゾートに近い立地では、人の流れが売上につながりやすくなります。逆にオフィス街などでは、帰省や旅行で人が出ていき、客足が落ちることもあります。立地によって、連休が追い風になるか向かい風になるかが変わる点に注意が必要です。
● ハロウィン(10月末)
ハロウィンも、欧米文化の一つとして都市部で少しずつ根づきつつあります。若い層を中心に、装飾やSNS映えを楽しむ動きが見られます。クリスマスと同じく、空間づくりやSNS発信と相性のよいイベントです。
● 「人を祝う日」も外食需要のチャンス
このほかベトナムには、バレンタイン(2月14日)や年に2回ある女性の日(国際女性デー・ベトナム女性の日)、そして誕生日や記念日など、大切な人を祝って外食する習慣が根づいています。これらは祝日ではありませんが、特別メニューや予約、割引キャンペーンなど、飲食店にとって売上を作りやすい日でもあります。
こうした「人を祝う日」を飲食店がどう活かすかについては、別の記事「ベトナムの飲食店が狙う“人を祝う日”」でくわしくまとめています。あわせてご覧ください。
● 忘年会シーズン(年末〜テト前)
年末からテト前にかけては、忘年会や納会といった集まりの需要が高まります。団体での予約に対応できる体制があると、取りこぼしを減らしやすくなります。(この時期は資金の動きにも注意が必要で、詳しくはテトの章で触れます。)
5. 最大の壁:テト(旧正月)の乗り切り方
ここまではチャンスの話でしたが、ベトナムで飲食店を営むうえで避けて通れないのが、テト(旧正月)です。
テトはベトナムで一年のうち最も大切にされる行事で、多くの人が故郷へ帰省します。飲食店にとっては、対応を間違えると大きな痛手になりかねない時期でもあります。
● まず押さえたい「休暇の仕組み」
テトの休暇には、法律で決まっている部分と、企業が決められる部分があります。ここを正しく理解しておくことが、労務トラブルを避ける第一歩になります。
一方で、政府が毎年発表する「9連休」といった日程は、主に公的機関(公務員)向けのものです。2026年の場合、政府の公文書で2月14日(土)から2月22日(日)までの9連休が示されています。テトの元日は2月17日(火)です。
民間企業は、この法定5日を「年末に何日、年始に何日」と法律の定める範囲内で組み合わせ、前後の週末とつなげて休業期間を設計します。2026年の場合は、旧暦の年末1〜3日と年始2〜4日を合わせた計5日から選ぶ形になります。つまり「店をいつ閉めて、いつ開けるか」には企業ごとの裁量がありますが、「労働法上の従業員に5日の有給休日を保障する」という部分は動かせない、と整理できます。
なお、地方出身のスタッフが多い個人経営の店などでは、法定休日を超えて休業期間を長めにとる例があり、長いと2〜3週間ほど閉める店もあります。一方で、都心部や観光地、ホテル、チェーン店などは営業を続けるところも多く、休業の度合いは立地や業態によって大きく異なります。
● 注意点1:仕入れが止まる
休業判断と並んで見落とせないのが、食材の調達です。
テト期間は、仕入れ先によって休業の日程が異なります。伝統市場や小規模の卸は休業・短縮営業になりやすい一方、スーパーや輸入食材の卸などは別の日程で動くことがあります。そのため、商品によっては供給が減ったり、仕入れ価格が上がったりすることがあります。テト営業を考えるなら、メニューを絞り込む、早めに仕入れて備えるなど、調達面の段取りが欠かせません。
こうしたコスト増を見込んで、テト期間は特別料金を設定する店もあります。その場合は、適用する期間・対象商品・加算額(または加算率)を、注文の前にメニューや店内表示で明示しておく必要があります。会計時に口頭だけで割増を請求するようなやり方は、トラブルのもとになります。
● 注意点2:スタッフの帰省と、テト後の離職
テトはスタッフが一斉に帰省するため、人手の確保が課題になります。
さらに気をつけたいのが、テト明けの動きです。テト後は転職活動が増えるとされ、よりよい条件を求めて職場を変える人が出やすい時期と言われます。帰省先で家族から地元で働くよう勧められる人もいます。そのため、テト後に職場へ戻らない人が出ることがあり、なかには連絡のないまま来なくなるケースもあるようです。発生の度合いは店によって異なるので、自店の過去の復職率や退職率をもとに、どれだけ予備の人員が要るかを見ておくと安心です。
飲食業は人手への依存度が高いため、テト明けにシフトが組めなくなるリスクは、あらかじめ見込んでおきたいところです。退職理由は人それぞれなので決めつけはできませんが、賃金やシフト、休み前のコミュニケーションが、定着に影響する場面はあります。
● 注意点3:テト賞与は採用・定着に影響することがある
テトに関連して、もう一つ触れておきたいのが賞与です。
ベトナムには、テトの時期に賞与(テト賞与)を支給する根強い商習慣があります。これとは別に、契約や社内規程にもとづく「いわゆる13ヶ月目給与」を設けている企業もあります。両方を支給する企業、どちらか一方の企業、どちらもない企業があり、実態はさまざまです。
いずれも労働法で一律に義務づけられているものではありません。賞与を設ける場合は、その規程を定め、従業員代表組織があるときはその意見を聴いたうえで、職場で公表することになっています。
法的な義務ではないものの、採用や定着のうえで重要な待遇として認識されていることが多い点は、押さえておきたいところです。ただし、支給の有無や金額は業種・企業規模・基本給・業績などによって異なります。支給する場合は、額や時期を早めに具体的に伝えておくと、受け取る側の安心につながりやすいでしょう。
● 注意点4:テト営業のコストと手続き
「休む店が多いなら、開けて稼ごう」と考える場合、人件費の前提が通常とは変わる点に注意が必要です。
ベトナムの労働法では、祝日に勤務した場合、その勤務分として通常賃金の最低300%が支払われます(これは祝日自体の有給賃金を含みません)。月給制の従業員では、祝日分の通常賃金100%がもともと月給に含まれているため、これに勤務分の最低300%が加わり、実質的に合計400%相当になります。深夜や時間外が重なれば、さらに上乗せされます。
同意を得ない時間外労働や、割増賃金を支払わない運用は、行政処分の対象になり得ます。なお2026年のテト休日については、内務省の年次の休暇案内のなかで、企業が選んだ休暇日程を少なくとも30日前までに従業員へ通知するよう示されています。
● 「営業すれば目立てる」だけで判断しない
休む店が多い時期に営業すれば、競合店が少ない分、存在感を出せる面はあります。ですが、それだけで判断するのは危険です。
仕入れの難しさ、高い人件費、スタッフ不足、そして「その立地にテト期間どれだけ人が残っているか」によって、営業の損益は大きく変わります。競合が少なくても、近隣に人が残っていなければ、固定費を回収できません。オフィス街・住宅地・観光地のどれに近いかで残留人口は大きく違うため、日別の需要と原価・人件費を試算したうえで、営業可否を判断するのが安全です。
\ 飲食店の海外進出を無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
6. 日本人客がメインの店の「もう一つのカレンダー」
ここまではベトナムの暦に沿った話でしたが、日本人のお客さまをメインに考える店の場合、ベトナムの祝祭日とは別の「日本側の動き」も売上に影響します。
ただし、ここから先は店の客層によって大きく変わる話なので、「一般論」というより「自店で確認すべき視点」として読んでいただければと思います。
● 赴任・帰任の入れ替わり
日本企業の駐在員は、本社の人事サイクルに沿って入れ替わります。日本企業の年度は4月始まりであることから、春先にかけて駐在員の入れ替わりが起きやすい傾向があります。
ただし、これはあくまで傾向です。海外赴任はビザや労働許可、家族の帯同、後任の選定などが絡むため、4月だけでなく10月や随時など、企業によって運用はさまざまです。自店の主要なお客さまがどの企業に勤めているかによって、実際の赴任・帰任の時期は変わってきます。気になる場合は、常連のお客さまへの聞き取りに加え、予約の履歴や法人宴会の実績、周辺企業への営業ヒアリングなどを組み合わせて把握していくのが確実です。
人が入れ替わる時期には、二つの意味があります。
一つは、歓送迎会の需要です。送別会や歓迎会といった集まりが生まれやすくなります。
もう一つは、客層のリセットです。常連だった駐在員が帰任すれば、その関係はいったん途切れます。日本人客中心の店ほど、お客さまが入れ替わっていく前提で、新しく来た方に知ってもらう導線を持っておくことが意味を持ちます。
● 一時帰国と、出張・観光での流入
夏季や年末などは、駐在員やその家族が日本へ一時帰国する時期にあたります。この間は在住の日本人客が一時的に減ることがあり、売上の落ち込む端境期になりやすい面があります。
一方で、ゴールデンウィークやお盆、年末年始には、日本からの出張者や観光客が増える業態もあります。つまり「日本人客が一律に減る」のではなく、在住者の流出と、訪れる人の流入を分けて見る必要があります。
いずれにせよ、自店のPOSデータや予約の履歴を振り返り、「日本人のお客さまが実際にいつ増減しているか」を確認するのが、一般論よりも確かな判断材料になります。
7. イベントを活かすための実務的なポイント
ここまで見てきたイベントを、実際の経営に落とし込むうえで、いくつか押さえておきたい点を整理します。
● 「客の国籍」ではなく「客の行動」で見る
同じイベントでも、響き方は店によって違います。このとき、「ローカル客か日本人客か」という国籍の区分だけでは、売上の動きをうまく読めません。
たとえばテトなら、同じ立地でも、帰省して出ていく人、旅行で訪れる人、近隣に残る住民で動きはまったく違います。オフィス街・住宅地・観光地・空港周辺などで、テトの影響は大きく変わります。
自店の商圏に「どんな行動をする人が、どれだけ残るか・集まるか」という視点で見ると、力を入れるイベントの優先順位がはっきりしてきます。
● 売上だけでなく「資金の流れ」も年間で見る
イベントの販促計画と同じくらい大切なのが、お金の出入りのカレンダーです。
特にテト前は、賞与の支給、祝日勤務の割増賃金、前倒しの仕入れなど、お金が出ていくタイミングが重なります。売上の波だけでなく、こうした資金流出の集中も見込んでおかないと、資金繰りが苦しくなることがあります。仕入れ・採用・賃金・キャッシュフローを、年間カレンダーの上で一緒に眺めておくと安心です。
● 年間の販促を、先回りで計画しておく
クリスマスの限定メニューも、中秋節のギフトも、当日になってから動いたのでは間に合いません。
中秋節の月餅が1か月以上前から店頭に並ぶように、イベント商戦は準備期間を含めて考える必要があります。年間カレンダーを手元に置き、「いつ、何を、どのくらい前から仕込むか」を先回りで決めておくと、チャンスを取りこぼしにくくなります。
● 需要の波への備えとして
ここまで見てきたように、ベトナムの飲食店には、テトの長期休業や日本人客の一時帰国といった「端境期」が必ず訪れます。
8. よくある質問(Q&A)
● Q. テトの間は、店を閉めるべきですか?
一律の正解はありません。帰省で人が出ていく立地なら休む判断もありますし、旅行客や近隣の残留客が見込める立地なら営業する選択もあります。ただし営業する場合は、従業員のテト法定休日(5日)の扱い、祝日勤務の同意と割増賃金、仕入れの確保が前提になります。立地ごとの需要とコストを試算して判断するのがよいでしょう。
● Q. クリスマスはベトナムでも祝日ですか?
いいえ。クリスマスは法定の祝日ではなく、企業も学校も原則として通常どおりです(インターナショナルスクールなど、独自のカレンダーで休みになる学校もあります)。祝日ではないため店を開けても祝日の割増賃金は発生せず、需要を取り込みやすい点が飲食店にとってのメリットになります。ただし当日の混雑や予約集中への対応は考えておきたいところです。
● Q. 開業のタイミングは、いつがよいですか?
一概には言えません。テト直後は、既存スタッフの復職状況が読みにくいうえ、転職市場が動いて採用競争も同時に起きやすい時期です。人員が読みにくい時期にオープンが重なると運営が苦しくなりやすいため、許認可・内装・消防・仕入先の休業なども含めて、総合的に判断するのがよいでしょう。
● Q. 日本人客がメインの店でも、ベトナムのイベントを気にする必要はありますか?
はい。スタッフはベトナム人であることが多く、テトの休業や人員の動きは、客層に関わらず経営に影響します。そのうえで、日本人客の店は赴任・帰任や一時帰国という別の波も重なるため、両方のカレンダーを見ておくことをおすすめします。
9. まとめ|年間の波を、計画に落とし込む
ベトナムの飲食店経営は、「どんな店をつくるか」と同じくらい、「1年の波をどう乗りこなすか」が問われます。
最後に、押さえておきたいポイントを整理します。
- クリスマスは祝日ではないため、祝日勤務の割増は発生せず需要を取り込みやすい。ただし時間外・深夜やイベント対応の費用は別途見込む。現地の楽しみ方に合わせる工夫も役立つ
- 中秋節は贈答(月餅ギフト)と来店の両方が動く。商品づくりは数か月前からの準備が前提
- テトは最大の山場。法定5日の有給休暇・仕入れの確保・離職対策・割増賃金と労務手続きを見込んでおく
- 日本人客の店は「もう一つのカレンダー」(赴任・帰任・一時帰国)も重なる。一般論より自店データの確認を
- 客の国籍より客の行動で見て、売上と資金の流れを年間カレンダーで一緒に眺める
こうした波は、知っていれば計画に織り込めますが、知らないまま進出すると、思わぬところでつまずく原因になりかねません。
「自分の店の場合、どのイベントに力を入れ、テトをどう乗り切ればいいのか」——具体的に整理したい段階になりましたら、まずは現地に詳しい私たちにご相談ください。現地での実務を踏まえて、一緒に計画を考えていきます。
\ 飲食店の海外進出を無料で相談する /
どうぞお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。
▶ ベトナムにお試し進出?!
低コスト&低リスクでベトナムで飲食店を開業&進出したい方はこちら
(毎月1万円〜できるベトナム・ホーチミンのデリバリービジネス)
あわせて読みたい記事
▶ まずは7か国を横断比較したい方へ
【2026年最新版】東南アジア飲食店進出・7か国比較ハブガイド
(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア/カンボジア/フィリピン)
上記記事では、各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを1ページで整理しています。
▶ 個別国の詳細を知りたい方はこちら
- ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
- タイでの飲食店開業・出店ガイド(観光×多店舗展開)
- シンガポールでの飲食店開業・出店ガイド(富裕層・ブランド戦略)
- インドネシアでの飲食店開業・出店ガイド(人口ボーナス市場)
- マレーシアでの飲食店開業・出店ガイド(高単価・英語圏)
- カンボジアでの飲食店開業・出店ガイド(ドル経済・外資100%)
自社の業態・資金規模・展開スピードを踏まえて、「どの国が最適か」を整理したい方は、お気軽に無料相談をご活用ください。
▽この記事の監修者
フードコネクションベトナム 林 吉祥
映像制作・フロントエンドエンジニア・WEBデザイナーを経て、2014年よりベトナムへ。
現地法人の立ち上げから携わり、4名の組織を40名まで育てたマネージャー。
長年のホーチミン生活で培ったリアルな視点から、現地の気づきを発信していきます。

