フードコネクションベトナムディレクターの親盛です。現在、ベトナムのホーチミンを拠点に、日系飲食店様の海外進出支援やマーケティング業務に携わっています。日々、多くの経営者様と打ち合わせをさせていただく中で、
「カンボジア進出に興味はあるが、何から始めればいいかわからない」
「タイやベトナムと比べて、今カンボジアに進出するメリットは何?」
といったご相談をいただきます。
実際、カンボジアは平均年齢27歳と若く、日本食需要も急拡大中。「米ドル経済」かつ「外資100%」という強力なメリットがある一方、電力事情や商習慣など、特有のリスクも存在します。
そこで本記事では、「カンボジアでの飲食店開業は、ビジネスとして勝算があるのか」 「他国と比較した際の決定的な違いとメリットは何か」 といった経営者視点の疑問に対し、 表面的なメリットだけでなく、 具体的な手続き・費用感・現場のリアルなリスクを含めて徹底解説します。
▼ もし今、こんなことで迷っているなら
- ✔タイやベトナムの競争激化を避け、先行者利益を狙いたい
- ✔現地パートナー不要の「外資100%」で自由に経営したい
- ✔為替リスクの少ない「米ドル」で資産を形成したい
記事を読み進める前に、「自社の業態がカンボジア市場に向いているか」だけでも整理したい方は、まずはお気軽にご相談ください。
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これから東南アジアでの飲食店展開を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
まずは、なぜ今「カンボジア」が飲食店オーナーにとって魅力的な市場なのか、その現状から整理していきましょう。
目次
1. カンボジア飲食市場の現状と進出する3つのメリット
「アジア最後のフロンティア」として注目を集めるカンボジアですが、首都プノンペンに関しては、すでに「発展途上」という言葉では片付けられないほどの経済成長を遂げています。
まずは、なぜ今多くの飲食店経営者がカンボジアに熱視線を送っているのか、市場の現状と、他国にはない3つの決定的なメリットを解説します。
1-1. 市場の現状:「平均年齢27歳」の消費エネルギーとプノンペン経済
カンボジアの最大の特徴は、その圧倒的な「若さ」にあります。国民の平均年齢は約27歳。少子高齢化が進む日本とは対照的に、労働人口と消費人口が今後も拡大し続ける「人口ボーナス期」の真っ只中にあります。
特に首都プノンペンでは、外資企業の進出に伴い、中間所得層や富裕層が急増しています。街には高級車が行き交い、客単価10ドル〜20ドル(約1,500円〜3,000円)、あるいはそれ以上の日本食が日常的に受け入れられています。
現在、カンボジア国内の日系飲食店数はまだ300店舗弱と言われています。タイ(約6,000店舗)やベトナム(約3,000店舗)と比較すると競合は圧倒的に少なく、先行者利益を狙える余地が十分にあります。
1-2. メリット①:ASEANで希少な「外資100%」での法人設立が可能
飲食店オーナーにとって最大の魅力といえるのが、外資規制の緩さです。
隣国のタイでは、外国人による会社設立に厳格な規制があり、現地パートナーとの合弁(外資比率49%以下など)や、複雑なライセンス取得が求められるケースが一般的です。
しかしカンボジアでは、飲食店を含むほとんどの業種で、日本人が100%オーナーとして法人を設立・所有できます。
信頼できるパートナー探しの手間が省けるだけでなく、経営の意思決定スピードや利益配分の自由度が圧倒的に高く、自社のコントロール下でビジネスを展開できる点は大きな強みです。
1-3. メリット②:「完全米ドル経済圏」による為替リスクの低さ
カンボジアは、自国通貨(リエル)がありながら、実質的には米ドルが流通する「米ドル経済」の国です。
メニューの価格設定から顧客の支払い、家賃や仕入れの決済に至るまで、ビジネスの基盤は「米ドル」で行われます。
新興国進出で懸念される「現地通貨の暴落」による資産価値の目減りを回避できるだけでなく、世界基軸通貨であるドルで利益を積み上げられることは、経営上の大きな安定材料となります。また、海外送金に関する規制も比較的緩やかで、利益をスムーズに日本へ還流できる点も投資家から高く評価されています。
1-4. メリット③:親日派が多く「日本食」ブランドが強い
カンボジアは非常に親日的な国であり、日本の「食」に対する信頼性は極めて高いです。
現地において日本食は単なる食事ではなく、「健康的で、高品質で、おしゃれなステータス」として定着しています。
適切なマーケティングを行えば、高単価な価格設定も十分に可能です。すでに「本物の日本食」を求める土壌が出来上がっているため、ゼロから日本食を啓蒙する必要がない点も、進出のハードルを下げています。
このように、カンボジア市場は「外資100%」「米ドル経済」という他国にはない強力なメリットを持っています。しかし、実際に店舗をオープンさせるためには、物件契約のタイミングやカンボジア独自のライセンス取得など、日本とは異なる実務フローを理解しておく必要があります。
次は、実際に開業するまでの具体的な7つのステップを順を追って解説します。
2. 飲食店開業までの実務7ステップ
カンボジアでの飲食店開業は、タイやベトナムと比べて手続きがシンプル化されつつありますが、「物件契約が会社設立よりも先」である点や、「飲食店特有のライセンス」が必要な点など、押さえるべきポイントが明確にあります。
ここでは、最新のオンラインシステム「CamDX」の活用を含めた、最短ルートでの開業ステップを7段階で解説します。
2-1. STEP1:コンセプト決定とエリア選定
まずはターゲット(誰に売るか)を明確にし、エリアを選定します。プノンペンはエリアごとに客層がはっきりと分かれています。
- ボンケンコン1(BKK1): 「プノンペンの銀座・青山」と呼ばれる一等地。外国人駐在員や富裕層が多く、高単価(客単価30ドル〜)な和食店が集まる激戦区です。
- トゥールトンポン(ロシアンマーケット周辺): 感度の高い欧米人や若者が集まるエリア。おしゃれなカフェやバーが多く、BKK1より家賃を抑えつつ、流行に敏感な層を狙えます。
- 日系モール内(イオンモール等): 圧倒的な集客力を誇りますが、賃料や契約条件のハードルは高めです。
2-2. STEP2:物件契約と住所確保(登記の必須条件)
ここが日本と大きく異なる点です。カンボジアで会社設立(法人登記)を行うためには、申請時点で「カンボジア国内の賃貸借契約書」が必要になります。
つまり、会社を作る前に物件を決め、契約を結ぶ必要があります。 飲食店の場合、厨房設備や排気ダクトの設置可否が重要になるため、バーチャルオフィスではなく、実際に出店する店舗物件で契約を進めるのが一般的です。初期費用を抑えるために、前テナントの設備が残る「居抜き物件」を探すケースも増えています。
注意点: 契約書はクメール語と英語の併記が基本です。契約期間、デポジット(敷金)、改装工事の可否(フリーレント期間の交渉)など、後のトラブルを防ぐために契約書の内容は入念にチェックしましょう。
2-3. STEP3:法人設立(MOC:商業省)とオンライン申請「CamDX」
物件が決まったら、商業省(MOC)にて法人登記を行います。 現在は、政府のオンライン・データ・エクスチェンジ・システム「CamDX」を通じて、ワンストップで申請が可能になっています。
- 会社形態: 一般的に「私的有限会社(Private Limited Company)」を選択します。
- 資本金: 法律上の最低資本金は400万リエル(約1,000ドル)ですが、銀行口座開設やライセンス取得の信用力を考慮し、実務上は5,000ドル〜1万ドル以上で設定するケースが多いです。
- 株主構成: 日本人(外国企業)100%での出資として登録します。
2-4. STEP4:税務登録(GDT)と銀行口座開設
商業省での登記完了後、租税総局(GDT)にて税務登録を行います。この手続きと並行して、カンボジア現地の銀行で「法人口座」を開設します。
- 銀行口座: カンボジアの大手銀行(ABA Bank、ACLEDA Bankなど)や、進出している日系銀行で開設します。ここで「米ドル口座」を持てるのがカンボジア進出の大きな強みです。
- 資本金の払込: 開設した口座に資本金を送金し、銀行から「残高証明書」等の発行を受け、税務当局へ提出します。
2-5. STEP5:パテント税(事業税)とVAT登録
税務登録の際、事業規模に応じた「パテント税(Patent Tax)」を納付します。これは毎年の更新が必要な事業税のようなものです。
- 等級(クラス): 売上見込みや資本金によって「小規模」「中規模」「大規模」納税者に区分されます。
- 小規模(Small): 年間売上 約6万ドル未満
- 中規模(Medium): 年間売上 約6万〜100万ドル未満
- 大規模(Large): 年間売上 約100万ドル以上
※外資系企業は原則として「中規模」以上からのスタートとなるケースが一般的です。
- VAT(付加価値税): 飲食店はVAT(10%)の徴収と、毎月の税務申告が義務付けられます。
2-6. STEP6:内装工事と飲食店必須ライセンス(観光省・保健省)
内装工事を進めながら、飲食店営業に必要な各種ライセンスを取得します。これらは管轄省庁が異なるため、計画的に申請する必要があります。
- ツーリストライセンス(観光省): レストラン営業に必須の許可証です。客席数や店舗面積によってカテゴリーが分かれます。
- 衛生許可証(保健省): 厨房の衛生状態やスタッフの健康診断などがチェックされます。
- 消防許可証(消防署): 消火器の設置や避難経路の確保など、防火基準を満たしているかの検査を受けます。
- 看板税(区役所): 店舗の看板を掲げるために必要な税金です。クメール語の表記(アルファベットより大きく上に配置する等のルール)が必須となります。
2-7. STEP7:労働許可(ワークパーミット)とスタッフ採用
オープンに向けてスタッフを採用します。 カンボジアでは、外国人を雇用する場合、カンボジア人従業員の「10%まで」とするクォータ制(1:9ルール)があります。
- 日本人スタッフ(オーナー・店長・シェフ): 「ビジネスビザ(Eタイプ)」に加え、労働省が発行する「ワークパーミット(労働許可証)」の取得が必須です。
- 10%ルールの特例: 開業直後でカンボジア人スタッフを多く雇えない場合や、専門職の日本人シェフが必要な場合は、特別負担金(Special Contribution)を支払うことで、外国人枠の拡大(クォータの調整)を申請することも実務上は可能です。多くの日系飲食店がこの制度を活用して日本人シェフや店長を配置しています。
こうした一連の手続きや採用準備を踏まえた上で、実際に開業するにはどの程度の資金が必要になるのか、具体的な費用の目安を見ていきましょう。
3. 進出にかかる費用目安
「カンボジアは物価が安いから、低予算で出店できる」と思われがちですが、それはローカル向けの大衆店に限った話です。
日本人をターゲットにした品質、あるいは現地の富裕層を満足させる内装やサービスレベルを求めると、厨房機器や内装資材の多くを輸入に頼る必要があるため、意外にも初期投資は膨らみます。
3-1. 初期投資の総額目安(1,500万円〜3,000万円)
プノンペンの中心地(BKK1など)で、30〜40坪程度の中規模レストランを開業する場合、総額で10万ドル〜20万ドル(約1,500万円〜3,000万円)程度を見込んでおくのが安全です。
もちろん、居抜き物件の活用やローカル業者の起用でコストを圧縮することは可能ですが、電気・水道・ガスのインフラ整備状況が悪く、スケルトンからの工事だと想定外の追加費用が発生するケースも珍しくありません。
【カンボジア飲食店開業の概算費用(30〜40坪・中規模店)】
| 項目 | 目安費用(USD) | 目安費用(JPY) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 法人設立・ライセンス | $2,000 〜 $4,000 | 約30万 〜 60万円 | 商業省登記、税務登録、観光・衛生ライセンス等の代行費用含む |
| 物件取得費 | $10,000 〜 $20,000 | 約150万 〜 300万円 | デポジット(敷金)が賃料の3〜6ヶ月分求められるケースが多い |
| 内装・設備工事 | $50,000 〜 $100,000 | 約750万 〜 1,500万円 | 輸入資材を使うか、ローカル資材で代替するかで大きく変動 |
| 厨房機器・什器 | $20,000 〜 $40,000 | 約30万 〜 600万円 | 日本からの輸送費や関税も考慮が必要 |
| 開業前運転資金 | $20,000 〜 | 約300万円 〜 | スタッフ採用・教育費、初期広告費など |
※1ドル=150円換算
各項目の補足・注意点
- 物件取得費(デポジット): プノンペンの人気エリアでは、賃料の高さもさることながら、契約時に「賃料の3ヶ月〜6ヶ月分」という高額なデポジット(保証金)を要求される商習慣があります。ここは日本や他国よりも重くなる傾向があるため、キャッシュフローの圧迫に注意が必要です。
- 内装工事: デザインや設計を日系企業に依頼し、施工をローカル企業に任せる「分離発注」でコストとクオリティのバランスを取る手法が一般的です。すべてを日系で固めると、日本国内での出店と同等かそれ以上の費用がかかります。
3-2. 資本金の設定:「法的には$1,000」だが「実務では不十分」な理由
カンボジアでの法人設立において、多くの解説記事で「最低資本金は400万リエル(約1,000ドル)から可能」と書かれています。
これは法律上は事実ですが、飲食店経営の実務においては「1,000ドルでの設立」は全くおすすめできません。
最低でも「5,000ドル〜1万ドル(約75万〜150万円)」、あるいは実際の初期投資額に見合った資本金設定を推奨する理由は以下の通りです。
- 銀行口座開設時の「信用」: 近年、マネーロンダリング対策の強化により、法人口座の開設審査が厳格化しています。資本金があまりに少額(1,000ドルのみ等)だと、ペーパーカンパニーを疑われ、口座開設を断られたり、機能に制限がかけられたりするリスクがあります。
- ライセンス取得への影響: 観光省や保健省へのライセンス申請時、会社の登記簿(定款)を提出します。この際、資本金があまりに低いと「事業継続能力」を疑問視され、審査がスムーズに進まない場合があります。
- 実務上の支払原資: 会社設立後、すぐに物件の契約や工事の着手金支払いが発生します。資本金を低く設定しすぎると、すぐに資金がショートし、「役員借入金」として処理する手間が増えます。最初から事業に使う資金を資本金として入れ、それを経費として使う方が会計上もクリーンです。
ポイント: カンボジアの資本金は、登記後に銀行口座へ入金し、残高証明を取得した後は、事業資金として引き出して使うことができます(タイのように塩漬けにする必要はありません)。そのため、見せ金としてケチる必要はなく、必要額をしっかり設定する方がメリットが大きいです。
資金面の土台が固まったところで、次は実際の店舗運営に目を向けてみましょう。ハード面の準備だけで安心せず、現地のマーケットで勝ち抜くために不可欠な「戦略」について解説します。
4. カンボジアで勝つためのキーワード
手続きや資金の準備が整っても、現地の商習慣や消費者の嗜好を無視したままでは、早期撤退のリスクが高まります。 カンボジア市場で勝ち残るために、経営者が必ず押さえておくべき3つのキーワードがあります。
4-1. Googleよりも「Facebookページ」と「TikTok」
日本では「食べログ」や「Googleマップ」での検索が主流ですが、カンボジアでの情報収集ツールは圧倒的に「Facebook」です。 現地の消費者は、Facebookページの写真や動画でお店の雰囲気を判断し、予約もMessengerで行うのが一般的です。
- Facebook広告の運用は必須: Google広告よりも、Facebook広告の方が圧倒的に安価で、かつ精度の高いターゲティングが可能です。
- 動画コンテンツ(TikTok)の活用: 若年層を中心にTikTokの影響力が絶大です。文字よりも「シズル感のある動画」や「店内の賑わい」を視覚的に訴求することが、集客の最大のカギを握ります。
- インフルエンサー(KOL)の活用: カンボジア人は企業の発信よりも「人(有名人・知人)の口コミ」を強く信頼する傾向があります。現地で人気のあるKOLにレビューしてもらうことは、単なる宣伝以上の「お墨付き」となります。
4-2. 現地の嗜好への「ローカライズ」
ターゲットを「日本人駐在員だけ」に絞る場合は別ですが、現地の富裕層や中間層を取り込むなら、彼らの嗜好に合わせた微調整(ローカライズ)が不可欠です。
- 「甘味」と「辛味」の調整: カンボジア人は、はっきりとした甘みや辛みを好む傾向があります。例えば、醤油やタレを少し甘めに調整する、あるいはテーブル調味料でカスタマイズできるようにする等の工夫が喜ばれます。
- シェア文化への対応: 「個食」よりも、大人数で料理をシェアして食べる文化が根付いています。ポーション(一皿の量)を多めに設定したり、シェアしやすいメニュー構成にしたりすることで、客単価のアップも期待できます。
4-3. 立地選びの戦略
プノンペンはエリアごとに客層が明確に異なります。「誰に来てほしいか」で出店場所を間違えると致命傷になるため、主要エリアの特性理解が必須です。
- 富裕層・駐在員なら「ボンケンコン(BKK1)」: 大使館が集まる一等地です。家賃は最高値ですが、接待需要や高単価な食事を求める層に最もリーチできます。
- ファミリー層なら「日系モール」: イオン等のモールは、天候に左右されず駐車場も完備されているため、休日の家族連れ集客に圧倒的な強みがあります。
- 若者・欧米人なら「トゥールトンポン」: お洒落なカフェや雑貨店が多いエリア。感度の高い現地の若者や欧米系長期滞在者に人気で、家賃もBKK1より抑えられます。
では、こうした戦略を体現し、現地で確固たる地位を築いている店舗は、具体的にどのような店作りをしているのでしょうか。
5. 現地の繁盛店事例
実際にカンボジア・プノンペンで成功している日系(および日本人経営)飲食店には、明確な「勝つ理由」があります。 代表的な2つの店舗事例から、そのエッセンスを紐解きます。
5-1. 高級路線の成功例:「雅楽(Garaku)」
プノンペン屈指の高級日本食レストランとして、不動の地位を築いているのが「雅楽」です。
- 特徴: 日本から直送される新鮮な魚介類を使用し、日本人シェフによる確かな技術で「日本と変わらない味」を提供。
- 勝因: 徹底した「接待需要」への特化です。洗練された完全個室を完備し、日系企業の商談や、カンボジアVIPの会食の場として、「ここを選べば間違いない」という絶対的な信頼を獲得しています。ハード(内装)とソフト(接客・品質)の両面で、ハイエンド層のニーズを完璧に満たした好例です。
- 現地の価格慣習(++について): なお、同店のような高級業態では、タイなどと同様にメニュー表示価格にサービス料とVAT(10%)が加算される「++(プラスプラス)」表記が一般的です。 客単価は上がりますが、ターゲット層が接待や富裕層であるため、価格の安さよりも「質の保証」と「サービス」が最優先されます。カンボジアで高級路線を狙う場合は、この価格設計を前提に収益モデルを組むのが定石です。
5-2. ブランディングの成功例:「Pizza 4P’s」
ベトナム発祥で、カンボジアでも爆発的な人気を誇るのが、日本人オーナーが手掛ける「Pizza 4P’s」です。
- 特徴: 自家製チーズを使ったピザが主力ですが、単なるレストランではありません。「地産地消」「サステナビリティ(環境配慮)」というストーリーを掲げ、圧倒的な空間デザインを提供しています。
- 勝因: プノンペンの感度の高い若者にとって、「今、一番おしゃれでクールな場所」というポジションを確立したこと。 「日本食」という枠組みを超え、「洗練された日系サービス」と「共感できるストーリー」があれば、現地の若年層を熱狂させることができるという証明でもあります。
コロナ禍での開業にも関わらず初月黒字を達成した同店の、具体的な「ゼロ・ウェイスト(廃棄ゼロ)」の取り組みや、広告費をかけない集客戦略については、こちらの動画で店舗の様子と共にご覧ください。
カンボジアへの進出はビジネスチャンスあり?ベトナム発の繁盛飲食店 Pizza 4P’sの挑戦
6. 【徹底比較】ベトナム進出 vs カンボジア進出
東南アジア進出を検討する際、地理的に隣接し、高い経済成長率を誇る「ベトナム」と「カンボジア」は、必ずと言っていいほど比較検討の対象になります。
しかし、この2国は市場の成熟度も法規制も全く異なります。 「どちらが良いか」ではなく、「自社の戦略に合うのはどちらか」という視点で、市場フェーズと外資規制の2点から徹底比較します。
6-1. 市場フェーズとコスト構造の比較
一言で言えば、ベトナムは「激戦の成長期(レッドオーシャン)」、カンボジアは「チャンスの黎明期(ブルーオーシャン)」と言えます。
- ベトナム(特にホーチミン・ハノイ): 人口1億人に迫る巨大市場であり、内需の強さは圧倒的です。しかし、すでに多くの日系企業や外資系チェーンが進出済みで、一等地(ホーチミン1区など)の家賃は東京並みかそれ以上に高騰しています。人材採用も売り手市場で、良いスタッフの奪い合いが起きています。
- カンボジア(プノンペン): 人口規模は約1,700万人と小さいですが、競合となる日系飲食店はまだ300店舗弱しかありません。「本物の日本食」を提供するライバルが少ないため、特定のエリアやジャンルでNo.1を獲りやすい環境です。家賃や人件費も上昇傾向にはありますが、ベトナムの都心部に比べればまだ割安感があります。
【ベトナム vs カンボジア 飲食店経営比較表】
| 比較項目 | ベトナム(ホーチミン等) | カンボジア(プノンペン) |
|---|---|---|
| 市場フェーズ | 成長〜成熟期(競争激化・レッドオーシャン) | 黎明〜成長期(競合少・ブルーオーシャン) |
| ターゲット | 中間層のボリュームゾーン狙い | 富裕層・駐在員・観光客狙い |
| 家賃相場 | 非常に高い(一等地は東京並み) | 上昇中だが、まだ交渉余地あり |
| 決済通貨 | ベトナムドン(VND)※海外送金規制が厳しい | 米ドル(USD)※海外送金が容易 |
| 主なリスク | 家賃高騰、激しい離職率 | 市場規模の限界、電力インフラ |
6-2. 外資規制の壁(ベトナムは複雑、カンボジアは100%OK)
飲食店オーナーにとって最も大きな違いを感じるのが、この「外資規制(会社設立のハードル)」です。
- ベトナムの場合(ハードル:高): 外資100%での設立は可能ですが、飲食店には厳しい「外資規制」があります。 具体的には、投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)の2段階の手続きが必要で、取得までに数ヶ月〜半年かかることもザラです。また、多店舗展開をする際には「エコノミック・ニーズ・テスト(ENT)」という独自の審査が必要になるケースもあり、スピーディーな展開を阻む壁となります。
- カンボジアの場合(ハードル:低): 前述の通り、飲食店を含むほぼ全ての業種で「外資100%」での設立が可能です。 ベトナムのような複雑な二重審査や、多店舗展開時の厳しい制限もありません。現地パートナーを探す必要がなく、自分の資金だけで、自分の思う通りのスケジュールで意思決定ができる点は、カンボジア進出の圧倒的なアドバンテージです。
結論:
「規模の拡大」と「将来のキャピタルゲイン」を狙い、激戦を勝ち抜く自信があるならベトナム。
「安定した米ドル収益」と「経営の自由度」を重視し、先行者利益を得たいならカンボジア。
という選び方が、成功の定石と言えるでしょう。
7. 【失敗事例から学ぶ】カンボジア進出のリスクと対策
メリットばかりに目を奪われ、現地の「リアルな負の側面」を見落とした結果、早期撤退を余儀なくされるケースは後を絶ちません。 ここでは、実際にカンボジア進出で苦戦した企業の事例を基に、3つの代表的なリスクと具体的な回避策を解説します。
7-1. インフラの罠:高騰する「電気代」と「計画停電」
カンボジアの電気料金は、近隣のタイやベトナムと比較しても割高です。 一般的な業務用電力で1kWhあたり約0.25ドル(約37円)前後と、日本の高圧電力よりも高い水準になるケースがあります。飲食店は冷蔵庫やエアコンを24時間稼働させるため、想定していた利益が電気代に食いつぶされる事例が多発しています。
また、電力供給も万全ではありません。特に乾季(3月〜5月頃)には、水力発電の能力低下により「計画停電」が実施されることがあります。
【失敗事例】
ランチタイムのピーク時に突然停電が発生。エアコンが止まり店内は蒸し風呂状態、POSレジも動かず会計ができずに大混乱。さらに冷蔵庫の温度上昇で高級食材が廃棄処分となり、大赤字を出してしまった。
✅ 対策:
- 物件契約前に、必ず電気単価を確認する(オーナーやビルによって単価設定が異なる場合がある)。
- 大型店舗や高級店の場合は、「自家発電機(ジェネレーター)」の設置を初期投資に組み込む。または、自家発電機完備のモールやビルに入居する。
7-2. 人材の壁:スキル不足と教育コスト
「平均年齢が若く、人件費が安い」ことは魅力ですが、それは裏を返せば「経験不足で、教育コストがかかる」ことを意味します。 飲食業におけるプロフェッショナルな接客や衛生管理の概念は、まだ一般的には浸透していません。また、国民性の違いから「遅刻が多い」「家族の用事で突然数日間休む」「給料が少しでも高い店へすぐに転職する」といったトラブルも日常茶飯事です。
【失敗事例】
日本と同じ感覚で「背中を見て覚えろ」と指導したが、スタッフが定着せず次々と退職。常に新人教育に追われ、サービスの質が安定しないまま、悪評が広まり客足が遠のいた。
✅ 対策:
- 「言わなくてもわかる」は通用しない前提で、写真付きの細かいマニュアルを作成する。
- 日本式の厳しさだけでなく、現地の文化を尊重したマネジメント(人前で叱らない、家族を大切にする等)を行う。
- 信頼できる「右腕(現地マネージャー)」の育成に時間をかけ、彼らを通じてスタッフを管理する。
7-3. 物流のリスク:国境緊張による食材供給の寸断
カンボジアは多くの食材や物資を, 隣国のタイやベトナムからの陸路輸入に依存しています。そのため, 地政学的なリスクや国境付近のトラブルが, 飲食店の仕入れを直撃します。 実際, 2025年にはタイとの国境付近での緊張の高まりにより, 物流が一時的に停滞し, 店頭欠品が発生する事態も起きています。
【失敗事例】
特定の食材(調味料や加工品)をタイからの輸入に100%依存していたため、国境トラブルで物流がストップした際にメニューの半分が提供不可に。代替品を現地で探したが品質が合わず、長期休業を余儀なくされた。
✅ 対策:
- 輸入食材だけに頼らず、現地で調達可能な食材(ローカル野菜や川魚など)を活用したメニュー開発を行う。
- 仕入れルートを1カ国・1業者に依存せず、ベトナムルートや空輸便など、複数の供給網(サプライチェーン)を確保しておく。
- ある程度の在庫(ストック)を持てる倉庫スペースを確保する。
こうした現場レベルの対策に加え、進出検討時によくある制度や実務への疑問を、最後にQ&A形式で解消しておきましょう。
8. カンボジアの繁盛店といえば!?
YouTubeチャンネル「個人店のミカタLAB」ではタイの繁盛店を紹介しております。どのようにしてタイで開業し人気飲食店になったのかをまとめております。ぜひご覧ください。
9. 【よくある質問】カンボジア進出Q&A
Q:タイやベトナムのように、現地の共同経営者(パートナー)を入れる必要はありますか?
A. いいえ、法的には不要です。 タイなどでは、外国人が会社を作る際に現地の名義人(ノミニー)を借りる手法が一般的ですが、カンボジアでは法律で「外資100%」が認められています。 無理にパートナーを入れたり、不要な名義借りを行ったりすることで、逆に乗っ取りや金銭トラブルのリスクが高まるケースもあります。正規の手続きで、ご自身(または日本法人)が100%株主として登記することを強く推奨します。
Q:英語はどの程度通じますか?
A. プノンペンの若年層やビジネスマンには、かなり通じます。 タイやベトナムと比較しても、カンボジア人の英語通用度は高い傾向にあります。特に飲食店のスタッフ層となる20代の若者は、簡単な英語であれば問題なくコミュニケーションが取れることが多いです。 ただし、ローカル市場の仕入れ先や年配の方はクメール語しか通じないことも多いため、現場には「英語とクメール語ができるマネージャー」を置くのが定石です。
Q. 稼いだ米ドル利益は、日本へ送金できますか?
A. はい、可能です。 ベトナムのような厳しい海外送金規制はありません。適切な納税(利益に対する源泉徴収税など)を行っていれば、事業で得た利益を米ドル建てで日本へ送金することができます。 この「資金移動の自由度」の高さこそ、カンボジア進出の大きなメリットの一つです。
Q. 治安は悪くないですか?
A:プノンペン中心部は比較的安定していますが、軽犯罪には注意が必要です。 BKK1などの外国人居住区は、警備員も多く比較的安全です。しかし、スマホのひったくりや置き引きなどの軽犯罪は日常的に発生しています。 「夜間の独り歩きを避ける」「移動はトゥクトゥク配車アプリを使う」といった基本的な防犯意識を持てば、生活やビジネスに支障をきたすことは少ないでしょう。
Q. 外国人でも店舗(土地・建物)を購入できますか?
A. 土地の購入はできません。 法人の資本は外資100%で所有できますが、カンボジア憲法により「土地の所有」はカンボジア国籍保持者に限定されています。 したがって、飲食店を出店する場合は「賃貸借契約」が基本となります。なお、コンドミニアムやオフィスビルの「2階以上」の区分所有権(ストラタタイトル)であれば、外国人でも購入が可能です。
Q. カンボジアで飲食店を開業するまで、最短でどれくらいかかりますか?
A. 物件決定からオープンまで、順調に進んで「3ヶ月〜4ヶ月」が目安です。
カンボジアでの行政手続きは日本と比べて予測しづらい部分がありますが、一般的なスケジュール感は以下の通りです。
・法人設立・銀行口座開設(約1ヶ月): これが完了しないと、正式な賃貸契約や資本金の送金がスムーズに進みません。
・内装工事・採用活動(約2〜3ヶ月): 許認可の申請と並行して進めます。
【スピードアップの秘訣】 前のテナントの設備をそのまま使う「居抜き物件(Takeover)」を活用すれば、内装工事期間を大幅に短縮でき、最短2ヶ月強でのプレオープンも不可能ではありません。ただし、各種営業ライセンスの取得には時間がかかることが多いため、余裕を持ったスケジュールを組むことを強くおすすめします。
ここまで、カンボジア進出に関してよくある疑問や不安を整理してきました。
これらを踏まえたうえで、最後に「それでもカンボジア進出が向いているのは、どんな経営者・業態なのか」を整理します。
10. 【結論】それでもカンボジア進出が向いている経営者・業態
- ✅ ブルーオーシャンで「先行者利益」を独占したい
「ベトナムやタイでは競合が多すぎて、埋もれてしまう」と感じている場合、カンボジアは最適です。日系店がまだ少ない今なら、特定のジャンル(例:専門料理、高級業態)で「地域No.1」のポジション(第一想起)を比較的容易に獲得できます。 - ✅ 現地パートナー不要の「外資100%」で自由に経営したい
「過去に他国でパートナーと揉めた」「意思決定のスピードを落としたくない」という場合、外資規制が極めて緩いカンボジアは、ストレスなく経営手腕を発揮できる環境です。
逆に、ベトナムを検討すべきケース
一方で、以下のような戦略を描いている場合は、市場規模の大きいベトナムの方が現実的かつ、投資対効果が高くなる可能性があります。
- 「最初から多店舗展開でスケールメリットを追求したい」
- 「安定したインフラ・物流環境を最優先したい」
- 「人材採用の母数と質を重視したい」
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10. 他国の進出も比較したい方へ
カンボジア進出は「ドル経済・外資100%」という強力な武器がありますが、目的によっては他国の方が適している場合もあります。 ASEAN各国はそれぞれ市場フェーズや規制が全く異なるため、広い視野で比較検討することが成功への近道です。
▶ まずは6か国を横断比較したい方へ
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(ベトナム/タイ/シンガポール/マレーシア/インドネシア/カンボジア)
上記記事では、 各国の進出条件・難易度・向いている企業タイプを 1ページで整理しています。
▶ 個別国の詳細を知りたい方はこちら
・ベトナムでの飲食店開業・出店ガイド(低資本・自由度重視)
・タイでの飲食店開業・出店ガイド(観光×多店舗展開)
・シンガポールでの飲食店開業・出店ガイド(富裕層・ブランド戦略)
・インドネシアでの飲食店開業・出店ガイド(人口ボーナス市場)
・マレーシアでの飲食店開業・出店(高単価・英語圏)
複数国を横断的に比較することで、 「自社にとって最も勝率の高い国」が見えてきます。
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