2026年7月6日、クレジットカードの売上立替入金サービスを手がける「株式会社全東信」(大阪市)が、大阪地方裁判所より破産手続開始の決定を受けました。負債総額は約1,259億円と報じられており、2026年に入って最大規模の倒産とされています。全東信を利用していた飲食店では、クレジットカードで決済された売上金が入金されない問題が発生していました。
その後、2026年9月25日、破産管財人から、未精算となっている売上金について、カード会社が加盟店へ支払う方針が案内されました。支払いは2026年10月30日頃を予定しています。
本記事では、この発表を受けた最新状況と、全東信を利用していた飲食店が10月頃の入金に備えて確認しておくべきこと、資金繰りが厳しい場合に利用できる公的支援、今後の決済手段の選び方を整理します。
📌 【最新動向】全東信の未精算売上金、10月30日頃に支払い予定
破産管財人の案内により判明した具体的な内容は以下の通りです。
- 対象カード:ユーシーカード、JCB、三菱UFJニコス、三井住友トラストクラブ(ダイナース)、三井住友カード、イオンフィナンシャルサービスの6社、およびクレディセゾン。
- 支払対象:2026年7月1日〜31日発生した売上金分、および6月以前の発生した未精算売上金のうち、各社の所定の確認手続きを経た金額。
- 支払額・方法:確認された対象額から所定の手数料を差し引いた金額。上記6社分は破産管財人からまとめて振り込まれる予定で、クレディセゾンの取扱い分はクレディセゾンから加盟店へ直接支払われる予定。
- 今後の手続き:今回実際に支払いが行われた部分については、破産債権の届出など破産手続への参加が不要となります。
目次
1. なぜ経営破綻したのか?背景にあるリスク
報道によると、全東信は新型コロナ禍による飲食店の休業・時短要請の影響で手数料収入が大きく減少していました。さらに2024年1月には、通常の審査では加盟店契約を結べない飲食店について他人名義で契約を結んだとする組織犯罪処罰法違反の疑いで、社員の逮捕や書類送検が発生。これにより信用不安が広がり、資金調達が困難になったことが引き金とみられています。
飲食店、特に個人店や小規模チェーンでは、日々のカード売上を早期に現金化して食材の仕入れや家賃に充てているケースが少なくありません。今回の未入金により、一時的に手元の現金が底を突く「キャッシュアウト(資金ショート)」のリスクが高まりました。10月30日頃の支払い見通しが示されたものの、それまでの資金繰りには引き続き注意が必要です。
2. 飲食店が「支払いまでにやるべき3つのこと」
もし全東信の決済システムを利用している場合、店長や経営者の方はまず次の3ステップを進めてください。
● ① 全東信の端末は引き続き使用せず、保管する
破産決定から数ヶ月が経過し、すでに利用を停止している店舗がほとんどかと思いますが、今も全東信の端末は一切使用できません。仮に端末が作動することがあっても、全東信のサービスを利用することはできないため、誤操作を防ぐためにレジ周りから完全に撤去してください。
ただし、端末を返却する必要があるかどうかは現在クレジットカード会社と協議中のため、取扱いが定まるまで廃棄・返却はせずに保管してください。
なお、破産手続開始決定がなされた2026年7月6日正午以降に端末で決済された売上についても、同様に所定の確認手続きを経た金額が支払われる見込みと案内されています。すでに誤って決済してしまった店舗についても、確認手続きを経た金額が支払い対象となる見込みです。
● ② 未入金額を記録して、10月の入金額と照合できるようにする
「最後に全東信から入金があった日」を基準に、それ以降にカード決済された売上を集計してください。
集計したデータは、10月30日頃に実際に振り込まれた金額が、確認しておいた未入金額と整合しているかを照合するために必要になります。レジのジャーナル、カード利用明細などは、印刷またはデータでしっかり保管しておいてください。
● ③ 登録口座を確認し、不審な連絡に注意する
未精算売上金(7月1日〜31日に発生した分、および6月以前の発生分のうち各社が確認した分)について、10月30日頃を予定として支払いが行われる見込みです。支払いの流れは、カード会社によって以下の通り異なります。
- 主要6社分(ユーシー、JCB、三菱UFJニコス、三井住友トラスト、三井住友カード、イオン)
全東信破産管財人が管理するシステムを利用し、全東信に登録済みの受取口座へ送金される予定です。そのため、登録していた口座がすでに解約されていないか、現在も有効に機能しているかを至急ご確認ください。 - クレディセゾン分
クレディセゾン分も10月30日頃を予定しており、クレディセゾンから対象加盟店へ個別に直接支払われる予定です。
また、「支払いを早める」「手続きを代行する」といった不審な連絡や詐欺には絶対に応じず、公式情報を確認するようにしてください。
破産者 株式会社全東信 破産管財人室
〒530-0047 大阪市北区西天満4丁目6番19号 北ビル2号館504号室
電話番号:06-6355-8720
受付時間:10:00~12:00、13:00~15:00(土日祝日を除く)
※本年8月17日より破産管財人室が移転し、連絡先が変更されています。
▶︎ 株式会社全東信 公式ホームページはこちら
3. お金が足りなくなる前に。使える公的支援
10月30日頃の支払いまで資金繰りが厳しい場合は、早めに次の窓口へ相談してください。
(※各制度の最新の指定状況等や金利は、必ず窓口にご確認ください。)
● 政府も動き出しています(2026年7月10日発表)
経済産業省は7月10日、全東信の破産で影響を受ける事業者向けに、次の支援策を発表しました。
- 特別相談窓口の設置:日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫・商工組合中央金庫・信用保証協会に、全国378カ所の特別相談窓口を設置
- セーフティネット貸付の要件緩和:中小企業向け「セーフティネット貸付」の利用条件を緩和(通常必要な「売上高が前期・前々期比5%以上減少」といった要件を、今回に限り問わない)
- セーフティネット保証1号:適用に向けた手続きを開始(その後、7月31日に正式に指定されました。詳細は下記の「3.」を参照)
- 既存借入への配慮要請:日本政策金融公庫・商工中金・信用保証協会に対し、既存の借入についても返済猶予などの条件変更、融資手続きの迅速化、担保条件の緩和で柔軟に対応するよう要請
最寄りの相談窓口は、経済産業省が公開している一覧(都道府県ごとの日本政策金融公庫・商工中金・信用保証協会の窓口)で確認できます。
● 1. 日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)」
取引先の倒産で資金繰りが悪化した中小企業向けの融資です。通常は「直近3ヶ月の売上高が前年・前々年同期比5%以上減少」などが条件ですが、今回のような特別相談窓口が設置された事案では、この数値要件を満たさなくても、資金繰りに支障が出ている(またはそのおそれがある)ことを説明できれば対象になり得ます。
貸付限度額は中小企業事業で7億2,000万円、国民生活事業(個人事業主など)で7,200万円です。貸付利率は基準利率で、担保の有無などにより変わります。最寄りの公庫支店、または普段お付き合いのある地方銀行・信用金庫に、直近の試算表や資金繰り表、未収売上金の資料を持って相談しましょう。
● 2. 「取引企業倒産対応資金」もあわせて検討を
こちらは、取引先の倒産による影響を対象にした別の融資制度で、もともと売上減少の要件がありません。日本政策金融公庫の案内によると、融資限度額は国民生活事業(個人事業主・小規模事業者)で別枠3,000万円、中小企業事業で別枠1億5,000万円、返済期間は10年以内(据置3年以内)です。
一部報道では「ゼロ金利」とも言われていますが、公式サイトには注釈が付いています。正確な金利・条件は、必ず最寄りの公庫支店に確認してください。全東信のケースでは、こちらの制度の方が直接的に対応している可能性があるので、上記のセーフティネット貸付と合わせて相談時に聞いてみることをおすすめします。
● 3. 信用保証協会の別枠保証「セーフティネット保証1号」
大型倒産の影響を受けた事業者向けに、通常枠とは別枠で融資額100%の保証を受けられる制度です。全東信は2026年7月31日付で正式に指定事業者として告示され、制度が利用可能になっています。保証人は原則不要で、保証限度額は無担保8,000万円、普通2億円(いずれも通常の保証枠とは別枠)です。
対象になるのは、次のいずれかに当たる場合です。
- 全東信に対して50万円以上の売掛金債権(または前渡金の返還請求権)を持っている
- 50万円未満でも、全東信との取引依存度が20%以上ある
申請は、お店の所在地の市区町村の窓口で「認定」を受けるところから始まります。売掛金の残高や入金状況が分かる資料、決算書などが必要になるので、事前に窓口へ確認してください。なお、認定を受けても、信用保証協会の承諾や金融機関からの融資が保証されるわけではありません。
● 4. 経営セーフティ共済(加入者向け)
加入している場合、解約手当金の範囲内で「一時貸付金」を利用できます。ただし全東信を今回の「取引先」として扱えるかは個別判断が必要なので、早めに中小機構の共済相談室に確認してください。
● 5. 税務・法務の専門家に相談する
今回の支払い対象外となる売上や、最終的に回収できない金額が発生した場合には、税務上の貸倒損失等の処理が問題になる可能性があります。具体的な処理時期や金額については、顧問税理士に確認してください。
法務面では、顧問弁護士がいない飲食店向けに、食団連が飲食業界に詳しい弁護士のネットワーク(一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会)と連携し、無料の相談窓口を用意しています。食団連の会員である必要はなく、全国の飲食店から相談を受け付けています。
相談費用は無料(食団連が負担)
他人名義などで契約していた場合は別のリスクが生じることもあるため、早めに相談することをおすすめします(事業者の債権回収は法テラスの対象外になりやすいので注意)。
● 食団連(日本飲食団体連合会)への被害状況アンケートについて
食団連は、被害の実態を把握し、今後の支援活動の後押しにするため、被害状況アンケート(所要約5分)を実施しています。全東信を利用していた飲食店であれば、食団連の会員でなくても回答できます。
なお、食団連は今回の対応について「損失の補填や補償を求めるものではなく、飲食店が公的な制度を活用して資金繰りを確保できるよう、そのお手伝いに努める」という立場を明確にしています。
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4. これからの決済、どうする?
「今すぐ代わりの決済手段を確保したい」というお店が増えています。ただ、慌てて選び直す前に、まず一つ考えてほしいことがあります。
カード決済を今すぐ再開する必要が本当にあるか、少し立ち止まって考えてみてください。業態によっては、当面は現金のみで営業しながら、落ち着いて次の契約先を選ぶという選択肢も十分にあります。
再開する場合の選択肢の一例です(特定サービスの安全性を保証するものではありません。契約前に必ず最新情報をご確認ください)。
| タイプ | 主なサービス例 | 特徴・メリット |
|---|---|---|
| モバイル決済 | Square(スクエア)/Airペイ(エアペイ)/STORES 決済 | オンライン申し込みから数日で導入可能。まずは現金以外の決済手段を急ぎで確保したい場合に最適。 |
| QRコード決済 | PayPay/楽天ペイ/d払い など | すでに導入済みの場合は、カード決済が使えない間の強力な代替手段になります。 |
| 大手決済代行 | GMOペイメントゲートウェイ/SBペイメントサービス/三井住友カードの「stera」/JCBの「JMS」など | 大手・上場企業グループなどが提供する決済サービス。サービスによっては審査や端末配送に時間がかかる場合がありますが、長期的な契約先として検討する場合の選択肢になります。 |
選ぶときに確認したいポイントは次の通りです。
- 運営母体の規模と情報開示状況:運営会社の財務状況や事業内容、加盟店数、サービス提供実績などを確認しましょう。
- 不自然な好条件の理由確認:「他社より入金が不自然に早い」「手数料が破格に安い」といった条件は、なぜそれが可能なのかを確認してから契約するのが安全です。
- 正規名義での契約:加盟店契約は必ず自店の正規名義で。他人名義や実態と異なる契約は、有事の際に保護を受けられなくなるリスクがあります。
- 複数手段の確保:1社に依存せず、複数の決済手段を持っておくと、今後同じような事態が起きても営業を止めずに済みます。
5. よくある質問
● Q1. 全東信以外の決済会社も同じように危ないの?
今回は全東信個社の経営破綻によるものです。決済サービスを選ぶ際には、運営会社の財務状況や事業基盤、加盟店への入金条件、契約内容などを確認しておくことが重要です。
● Q2. 未入金分は全額戻ってくる?手続は必要?
10月30日頃を予定として、各カード会社の確認を経た金額から「所定の手数料」を差し引いた額が支払われる見込みです(手数料なしの満額返金という意味ではありません)。また、今回の支払い対象となる売上については、実際に支払いが行われた部分について、破産債権の届出など破産手続への参加が不要となります。今回、支払いが行われた売上については、破産債権の届出など破産手続への参加が不要となるため、「破産手続開始等の通知」は発送されません。
● Q3. 他人名義や実態と違う内容で契約していたら?
公的支援の対象外になったり、法的な保護を受けられなくなったりするリスクがあります。事業者の債権回収は法テラスの対象外になりやすいので、商工会議所の法律相談か弁護士に早めに相談してください。
● Q4. 新しい決済会社、どのくらいで使えるようになる?
サービスによります。モバイル決済系なら数日程度で使い始められる場合がありますが、据え置き型の端末は審査や配送の関係で数週間〜1ヶ月ほどかかることもあります。焦らず、まずは現金対応でしのぎながら検討しても問題ありません。
● Q5. 食団連(日本飲食団体連合会)への被害報告は必要ですか?
食団連は被害状況アンケート(所要約5分)を実施しています。会員でなくても、全東信を利用していた飲食店であれば回答できます。義務ではありませんが、業界全体の被害の実態を伝えることが、今後の支援活動の後押しになります。
6. まとめ
9月25日の破産管財人の発表により、全東信の未精算売上金について、所定の確認手続きを経た金額を加盟店へ支払う方針が示されました。
支払いは2026年10月30日頃を予定しています。ただし、正式な支払日は決定後に改めて案内される予定です。
現在、全東信を利用していた飲食店が確認しておきたいことは、次の3つです。
- ① 全東信の端末は使用せず、取扱いが決まるまで保管する
- ② 未精算売上金を集計し、10月20日までにWEB明細を保存する
- ③ 全東信に登録している受取口座が現在も利用できる状態か確認する
また、今回の支払い対象となる売上については、実際に支払いが行われた部分について、破産債権の届出など破産手続への参加が不要となります。
一方で、各カード会社による確認の基準や、所定の手数料の料率、支払い対象外となる売上の有無など、詳細が明らかになっていない事項もあります。
今後の支払日や手続きについては、全東信の公式ホームページおよび破産管財人からの案内を確認してください。
\ 今後の決済導入について相談する /
参考・出典
- 食団連【緊急・注意喚起】株式会社全東信の破産手続開始について(第1報・第2報・第3報・第4報・第5報)
- 破産者株式会社全東信破産管財人室「クレジット売上金の未精算分に関する今後の取扱いについて」
- 株式会社全東信「破産手続に関するよくあるご質問(Q&A)」
- 経済産業省「全東信の破産手続開始により影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援を実施します」(2026年7月10日)
- 事件番号:大阪地方裁判所 令和8年(フ)第3500号(破産手続開始決定:2026年7月6日正午)





























